新NISA2年目の意外な「落とし穴」…経済アナリストが語る「活用やめた人」「ほぼ退場を余儀なくされた人」残念事例

2024年に始まった新NISA(少額投資非課税制度)から1年、拡充された税優遇措置の恩恵を得られた人も少なくないだろう。口座開設数はスタートから半年あまりで前年同期に比べ3倍近くに急増し、投資額も膨れ上がる。だが、投資は良い時もあれば悪い時もあるのが常だ。経済アナリストの佐藤健太氏は「2年目は思わぬ『落とし穴』にハマる可能性があり、要注意だ。浮かれて調子に乗っていると手痛い失敗を経験するかもしれない」と警鐘を鳴らす。
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かつてないほど資産運用への関心が高まった2024年
2024年1月にスタートした新NISAは、積立・分散投資に適した「つみたて投資枠」(年間の非課税投資額120万円)と株式・投資信託などを対象にする「成長投資枠」(同240万円)の併用が可能だ。株式や投資信託などに投資すれば通常は売却益や配当に対して約20%の税金がかかるが、NISAの範囲内で投資すれば非課税になる。年間投資枠と最大利用可能額(1800万円)が拡充され、使い勝手が向上した新NISAのメリットは大きい。
物価上昇によって、お金の実質的な価値が目減りしていくことをにらめば投資収益を期待し、「自己防衛策」に走る人が多いのは当然だ。政府も家計金融資産の半分以上を占める現預金が投資に向かい、企業価値向上の恩恵が家計に還元されることで投資や消費に繋がる「成長と分配の好循環」実現を掲げ、資産運用立国を目指す。
日本証券業協会のまとめによれば、大手証券とネット証券の10社の口座数は2024年9月末時点で1576万件に上る。つみたて投資枠と成長投資枠を合わせた株式などの買付額は年初来累計(1~9月)で10兆2378億円に達し、前年比3.9倍に膨らむ。さすがに足元の口座開設数や買付額は鈍化してきたものの、
NISAマネーの株・投信への流入は市場に追い風となる。日証協によれば、NISA買付額のうち国内株と投資信託の割合は「40:57」。成長投資枠の株式買付額を見ると、国内株と外国株の割合は「93:7」で、株式買付額上位10銘柄は国内株で占められている。2024年はかつてないほど資産運用への関心が高まり、その恩恵を得られた人も多かったはずだ。
3月21日の東京株式市場では日経平均株価が4万815円66銭と終値として史上最高値を更新し、7月11日には初めて4万2000円台をつけた。11月11日には米ニューヨーク株式市場のダウ平均株価も終値として初めて4万4000ドル台をつけ、最高値を更新した。
日本を襲った「ブラックマンデー」と「石破ショック」
新NISAを通じた家計から市場への流れは日本株の買い手としても有力なポジションを築き、想定以上のインパクトをもたらせた。筆者も新NISAによる運用益を得られた1人だ。
ただ、2年目を迎える2025年も同じようにいくとは限らないことは付言しておきたい。その理由は、まず新NISA口座の開設数が今後は伸び悩む可能性があることだ。これまでのように急増していくことは考え難く、日本株投資のペースも落ち着いていくとみられる。言うまでもなく、「経済は生き物」だ。株価は上がる時もあれば、下がる時もある。2024年を振り返れば、1~4月まで日経平均株価は上昇傾向にあり、その後の一服を経て7月まで堅調に推移した。為替レートも4月には1ドル=160円台をつけ、34年ぶりに高値を更新した。
だが、8月には株価が大暴落し、1987年の「ブラックマンデー」を超える過去最大の下げ幅を記録。さらに9月にも大きな下落を経験した。8月の暴落は、日本銀行による追加利上げ後の円高急伸と米国景気の後退懸念によるものだが、9月は「石破ショック」が原因とされる。自民党総裁選で、安倍晋三政権時代からの金融緩和継続と経済活性化を唱えた高市早苗元経済安全保障相ではなく、「経済音痴」とみられた石破茂元幹事長(現・首相)が予想外に勝利したため負のサプライズと受け止められたのだ。12月12日には日経平均株価が4万円台を回復したが、その勢いは疑心暗鬼を内包しているように映る。
2025年からの変動リスクをどこまで許容するのか
2025年に気をつけなければならないのは、1月のドナルド・トランプ大統領再登板や3月頃に迎えるだろう来年度予算案をめぐる国会攻防だ。トランプ氏は他国に高い関税を課すと選挙期間中に繰り返し、中国だけではなく日本にも負の影響が生じることが懸念されている。国内においては、先の衆院選で自民党と公明党の与党が過半数割れの惨敗を喫し、日本維新の会や国民民主党など野党からの賛成が得られなければ予算を成立させることができない状況にある。いずれも為替や株価に直結するだろう問題だ。