極限の集中状態「ゾーン」に私は入った…ゴールデン街で居場所を失った私が新宿のバッセンで手にした「ニューチャンピオン」の座

2024年9月下旬。新宿バッティングセンターにおける 安竹涼平 vs 私 のストラックアウト対決は佳境を迎えていた。
1位の私は250p。2位の安竹涼平は246p。3位以下は100ptにも満たなかった。事実上、私と安竹涼平の一騎討ちだった。新宿バッティングセンターを利用する全ての客が、2人の戦いに目が離せないでいた(気がした)。
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Woooooo!!!! なんでそんなに上手に投げられるの?
さて。筋肉痛で壊れかけた体をケアしながら、4日に1度のペースでストラックアウトをやることに決めた私だったが、安竹涼平に負けるのではないかという、トップレベルの選手のみが経験する巨大な重圧に押されてしまい、そのペースを自ら乱してしまった。前回のストラックアウトから2日しか経ってない9/27、新宿5丁目の「猫目」という文壇バーで知人と飲んだ帰りに、深夜に新宿バッティングセンターに寄ってストラックアウトをするという愚行を犯してしまったのだ。
歌舞伎町のど真ん中にある新宿バッティングセンターは、深夜になっても客足が絶えず、ホストやキャバ嬢の集団や、トー横キッズのような若者、それからインバウンド観光客で溢れていた。
そうした人たちが溢れる中で私がストラックアウトをやっていると、「Woooooo!!!!」と、後ろに並んでいた恐らくはアメリカ人の3人組の若い男女が騒ぎ立ててきた。そしてその3人と順番を代わるために私がケージから出ると、その中のひとりの男が私にスマホの画面を見せてきた。スマホの画面に映っていたのはGoogle翻訳のページで、
「なんでそんなに上手に投げられるの?」
と、訳された日本語が表示されていた。
「I’m champion!! I’m Strikeout champion!!」
私は壁に張り出されているストラックアウトランキングの暫定1位のところに自分の名前が書かれているのを指差しながら、そのアメリカ人の若い男の純粋な質問に対して、叫ぶように声を張り上げてしまった。そんな大きな声を出してしまった裏にはやはりプレッシャーがあった。もうストラックアウトに5万円近く注ぎ込んでいるし、Instagramではプロモートとはいえ大口を叩いてしまっているし、これで安竹涼平に抜かれてしまったらどうしよう…、と不安で不安で仕方がなかった。
新宿バッティングセンターで思い出す人妻との時間
私はプレッシャーでおかしくなっていたと思う。精神が過敏になり、周囲に人がいるだけでストラックアウトに集中できない状態になっていた。ストラックアウト王争いの最終局面でこの状態はまずいと思った。どうすればいいだろうかと思い悩んでいると、1つの閃きが私の頭のなかに舞い降りてきたのだ。
── 開店時間の10時に来てストラックアウトをやればよいのでは?
なるほど「眠らない街・歌舞伎町」とはよく言ったものだ。その言葉を裏付けるように、歌舞伎町のど真ん中に位置する新宿バッティングセンターは、深夜3時を過ぎても大盛況だった。しかしいくら眠らない街が朝まで賑わっていようが、1日のうちに人間がどこかで眠らなければならないという事実は変わりようがない。朝まで遊んでいるホストやキャバ嬢、インバウンド観光客の多くは、朝から昼間にかけて寝はじめるに違いなかった。そして私には、そうした予想を裏付ける経験があったことを思い出した。
某マッチングアプリで多摩市在住の人妻と歌舞伎町で会ったときのことだ。