トランプ関税ショックで…元TBSアナ・宇内梨沙のリアル投資体験記──米株「一本足打法」でつまずいた話

 「長期投資のつもりだから、あまりポートフォリオを見ないようにしているんですけど……久しぶりに見たら、改めて分散投資の大切さを実感しました。」

 先日、Xでそう呟いていたのが、25年3月にTBSを退社し、フリーアナウンサーとして新たな道を歩みはじめた宇内梨沙さん。これまで経済番組『Bizスクエア』や、投資初心者向けのYouTube番組『投資のキホン』などを担当する中で、経済と投資の世界に触れてきた。当初は遠く感じていた投資の世界だったが、実際に投資を体験していくうちに「ニュースの見え方も、お金との向き合い方も変わっていった」という。今回、そんな宇内さんが、“ビギナー投資家”ならではの等身大の気持ちをつづってくれた。

目次

「投資はキケンなもの」と決めつけていた私

 みんかぶマガジン読者の皆様、はじめまして。

 この度、ご縁をいただき筆を執らせていただくことになりました宇内梨沙と申します。私は、今年の3月に10年間アナウンサーとして勤めたTBSテレビを退社し、現在はフリーランスとして新たな一歩を踏み出しています。

 TBSアナウンサー時代には、BS-TBSの『Bizスクエア』という経済番組で4年間キャスターを務め、『投資のキホン』というYouTube配信番組にも2年以上携わっていました。そんな私が投資を始めるきっかけになったのも、まさにこれらの番組を担当するようになったからでした。

 それまでは経済ニュースに疎く、専門用語も多いことから、正直なところ苦手意識さえありました。

 しかし、担当するからにはそんなことは言っていられません。経済を学ぶ上で「自分が投資家になるのが一番早い」と考え、当時のNISA制度を活用して投資家デビューを果たしました。

 もともとは「投資はキケンなもの」と感じ、始める前から自分には向いていないと決めつけ、距離を取っていた側です。

 ですが、投資を続けていく中で実感したのは、「知ることの大切さ」でした。

トランプ関税ショックで含み益減少…それはまだ序章に過ぎなかった

 投資を学べば学ぶほど、数字の裏にある社会の動きや企業の戦略が見えるようになり、経済ニュースも以前よりずっと身近なものに感じるようになりました。

 情報を得て、自分なりに理解し、納得して投資判断をする。

 投資を始めたことで、お金のことだけでなく、ニュースの見え方も変わり、一方的に受け取るだけだった情報に、意識的に向き合えるようになりました。

 そんな私が、みんかぶマガジン様から執筆のご依頼をいただいたのは、記憶にも新しい、トランプ関税による日本株大暴落の直前という、なんとも劇的なタイミングでした。

 その時点で米国株は大きく下落し、SNSでは「新NISA」というワードがネガティブな理由でトレンド入りするほどの混乱ぶり。

 幸いなことに私自身は旧NISA時代から積み立てていたこともあり、元本割れには至りませんでしたが、含み益は大きく減少しました。そして、それはまだ序章にすぎませんでした。

順調だった推移が一気に暗転。気持ちもマイナスに

 その後、トランプ関税の詳細が明らかになると、日本株も大きく影響を受けて暴落。順調だった私のポートフォリオにもマイナスが目立ち、気持ちも沈みました。

 近年まれに見る世界経済の混乱期。

 有識者のコメントや専門的な情報を求める方が多いかと思いますが、そんな中だからこそ、私のようなビギナー投資家の等身大の経験が、どなたかの共感につながれば嬉しいです。

 私が投資を始めたのは2022年。当時のNISA制度を利用し、インデックス投資をスタートしました。周囲の意見も参考に、実績のある米国株に集中して投資。その成果は、今も大きな含み益となって残っています。

 投資を始めるにあたって、私が意識したのは変動リスクを抑えることでした。ドルコスト平均法を採用し、今でも毎日コツコツと積み立てを続けています。

 一括投資と積み立て投資、どちらが良いかは個人の投資スタンスやリスクの許容度によって異なるところですが、私の場合は、「なるべくリスクを低く抑えたい」という思いがあったため、今のスタイルが合っていると感じています。

あくまで「長期投資」がマイルール。将来の資産形成を目指す

 私の投資の目的は、短期的な利益を追い求めるのではなく、あくまで将来の資産形成です。そのため、長期投資を大前提としています。

 また、生活費を切り詰めることなく、余剰資金で投資をするというルールも自分の中で決めています。もし生活費を削って投資をしていたら、元本割れしたとき、私の性格上うろたえてしまうと思ったからです。

「10年後、20年後に花開けば」と思って始めた投資でしたが、積み立てを始めてわずか1年で利益が膨らみ、「これは将来が楽しみだ」と思っていた矢先に、今回のトランプ関税という壁が立ちはだかりました。昨年8月にも日本株が大きく下落する局面がありましたが、今回の下落はそれとは異なる様相で、「ああ、これが投資というものなのか」と、改めてその本質を突きつけられたような出来事でした。

 ポートフォリオのメインは米国株だったため、トランプ関税による利益の減少幅は非常に大きなものでした。しかし、そんな状況下でも、日本の金利が長らくゼロ近辺で推移している中で、比較的高い利回りが見込める東証REIT指数に以前から注目し、日本の不動産市況の堅調さなども踏まえて、リスクは低いと判断し、投資を続けていました。

 その結果、今回の暴落においても、ポートフォリオ全体の大きな損失を避けることができたのです。この経験から、一本足打法の危うさと、分散投資の重要性を同時に学ぶことができました。

今こそが仕込みのチャンスなのかもしれない

 現時点では、全体として含み益は出ているものの、新NISA制度以降に購入した米国株と日本株は含み損を抱えています。

 今後、相場がどのように推移していくのか、底を打ったのかどうかもまだ不透明な状況ではありますが、ここで焦って売買するのではなく、ここはどっしりと構え、長い目で見ていこうと考えています。

「足元ではなく、遠くを見つめる」

 これは、以前、配信番組でご一緒させていただいた、株式ストラテジストの方の言葉です。

 新NISAから投資を始めた方の中には、今回の下落で大きな不安を抱えている方も少なくないかと思います。しかし、投資を始めた本来の目的は、きっともっと先の未来を見据えてのことだったはずです。

 今はまだ、始めてから1年ちょっと。楽観的に聞こえるかもしれませんが、もしかしたら今こそが、将来の大きな成長に向けた仕込みのチャンスなのかもしれません。

 私にとっての投資は、未来の自分へのエールのようなもの。正解が一つではないからこそ、周りの情報に過度に振り回されるのではなく、自分が納得していることが何よりも大切だと感じています。不安定な相場が続くかもしれませんが、焦らず、慌てず、少しずつ、着実に前に進んでいきたいと思っています。

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この記事の著者
宇内梨沙

2015年、TBSテレビにアナウンサーとして入社。スポーツ、情報バラエティ、経済と幅広いジャンルを担当する。ラジオやYouTubeでは自身のゲーム偏愛を曝け出し、2023年には東京ゲームショウ2023のオフィシャルサポーターに就任。

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