小泉進次郎がTikTokで大炎上!「有料レジ袋で何か変わった?」Xでコメ欄封鎖は「逆効果」の声…SNSの双方向性を完全無視

(c) AdobeStock

 最近、SNSでの投稿コメントを問題視する政治家やインフルエンサーをよくみかける。法的に問題のある投稿は法的に対処するべきだろう。一方でX(旧ツイッター)はもともと「ご飯なう」などとたわいもないことをつぶやいてワイワイする場所だったのに、いつしか政治的・商業的意図をもった人々がたくさん参入してきたわけだ。「むしろ規制するべきは政治家たちなのではないか」という意見もある。そもそもSNSとは民間の企業活動として運営されており、全国民がやらなくてはいけないものでもない。「そんなに嫌なら使わなければいいのではないか」と思う人も多いのではないだろうか。

 そんな中で総裁選候補の小泉進次郎氏のTikTokが炎上し、話題を呼んでいる。NHK党の元公設秘書で、政治とSNSに詳しいコラムニストの村上ゆかり氏は「双方向のコミュニケーションができない政治家は炎上し続ける」と指摘する。村上氏が詳しく解説していく――。

目次

「レジ袋有料化で何か変わった?」厳しい意見が殺到

 小泉進次郎氏がTikTokに登場し、大炎上している。若い人たちに向けてアプローチをすることが目的だろうし、この取り組みそのものは新しい挑戦として評価できる。しかし、最初の投稿が公開されると、大規模に批判コメントが集まった。9月24日にはJ-CASTニュースで「公開からわずか数日で1万4千件を超えるコメントが寄せられた」と報じられており、これほどのコメントが殺到するのは珍しく、その大半が厳しい批判であった。

 コメント欄には、「レジ袋有料化で何か変わったか」という環境大臣時代の省令改正に対する批判や、「日本のために政治家引退してくれ」という強い言葉も投稿されている。批判の嵐は一つの政策への反発ではなく、積み重なった不信感の爆発のようにも見える。TikTokだけではなく、小泉氏のインスタグラムにも批判が殺到した。「若者に迎合しているだけ」「国民の生活を見ていない」といったコメントである。批判が複数のSNSで同時に広がったことは偶然ではなく、根本的な不信感が存在していたことを示しているだろう。

 小泉氏陣営は「なぜ小泉氏にはこんなに批判が集まるのか」を十分に理解していない可能性がある。炎上を単なる荒らしやアンチ活動と考えれば、対応を誤る。筆者は小泉氏がこの炎上の理由を本質的に理解していないのではないかと推察している。

 炎上が大きくなった理由はいくつかあるが、主には二点あるだろう。一点目は発信の中身の薄さである。TikTokに投稿された動画はパフォーマンス的な印象を与えた。

Xではコメント欄を閉じて意見受けつけない進次郎

 TikTokはパフォーマンス的な投稿も目立つSNSではあるものの、小泉氏は以前から「見た目は派手だが中身がない」という批判が多く、TikTokの動画でさらにそれを強める結果となってしまっている。Instagramも同様だろう。

 二点目は「なまごえプロジェクト」である。普段利用しているX(旧Twitter)ではリプライ欄を閉じ、意見を受け付けていないのに「なまごえプロジェクト」として、国民の声を聞くとPRしている。この矛盾に多くの人が反応した可能性が高い。

「なまごえプロジェクト」はその名の通り、国民の「生の声」を集めると説明し、専用フォームの設置だけでなく、街頭での活動やSNSでの呼びかけを組み合わせた取り組みである。誰でも専用フォームから意見を送信できる仕組みを整え、集まった声を小泉氏が読み上げたり、テーマごとに発信したりすることもあった。狙いは「国民の声を直接政治に届ける」という姿勢を示し、双方向性を演出することだと思うが、この「なまごえプロジェクト」の取組みは根本的な問題点が浮かび上がる。

「声を聞く」というより「声を隠す」進次郎

 まず、「専用フォーム」にアクセスし入力して送信する手間がかかる。また、専用フォームを通じてどのような声が届いているのかを国民が見る機会は現時点でない。街頭や集会で寄せられた声は、どのような場所で、どのような方が集まる場所に参加し、どのような意見が出たのか一部しか公開されていない。SNSに投稿された意見は一方向に留まっている。すべて一方向に留まった仕組みでは「声を聞く」というより「声を隠す」ことになってしまうのではないか。

 この点は多くの人にすぐに見抜かれ、「都合の良い声しか見ないのではないか」「本当に聞く気はないのではないか」という批判が集中している。双方向性のない意見収集は信頼を生まず、むしろ逆効果さえある。これが炎上の大きな理由の一つ、「なまごえプロジェクト」との矛盾ではないか。

 政治家がコメント欄を閉じるとき、よく口実にするのが誹謗中傷やデマ拡散である。確かにSNSには過激な言葉が多い。だが研究や実例をみると、デマの中心は開かれたコメント欄ではない。総務省「情報通信白書2022」は「閉鎖的なSNS(LINEなど)を情報源とする層は誤情報の影響を受けやすい」と明記されている。

本当にXは誹謗中傷やデマを拡散しているのか

 熊本地震のときには「動物園からライオンが逃げた」というデマが拡散したが、総務省「熊本地震におけるSNSの利用と課題」(2017年報告書)では、このデマはLINEで広がったことを指摘している。北海道胆振東部地震でも「長期間停電が続く」「断水が始まる」というチェーンメッセージがLINEで流れ、北海道庁が否定コメントを出すに至っている。

 閉鎖的なSNSによるデマ拡散は海外の事例でも見られる。インドでは2017年から2018年にかけてWhatsAppで「子ども誘拐犯が村にいる」というデマが広がった。村人は無関係の人を誘拐犯と信じ込み、リンチを行い、複数の命が奪われたとBBCが報じた。ミャンマーではFacebookやMessengerを通じて「ロヒンギャが武装蜂起する」という虚偽情報が広がり、国連の調査報告書は「Facebookが憎悪扇動と暴力拡大に寄与した」と結論づけた。ブラジルの2018年大統領選では「性教育で子どもに同性愛を強要」という虚偽情報がWhatsAppで拡散した。オックスフォード大学インターネット研究所は「閉鎖的グループでの拡散が投票行動に影響した」と報告した。MITの研究者Vosoughiらは「虚偽情報は真実よりも70%速く拡散する」と結論づけた(Science 2018)。

小泉陣営のコメ欄封鎖は逆効果

 これらの事実から明らかなとおり、デマはX等の開放的なSNS空間から生まれるのではなく、LINEやWhatsAppのような閉ざされた場で広がりやすい。開かれた場ではすぐに反論が出て修正が働くが、閉じた場では反論が入らず、仲間同士の信頼関係で誤情報が強化される。小泉氏をはじめとした複数の国会議員が行っている「コメント欄閉鎖」はデマ対策にはならないばかりか、むしろ逆効果である。批判や誤解が公開されない場に潜り、修正の機会を失うことは、国民に見えない場所で不信が増幅することにつながるだろう。

 小泉陣営はこの炎上の発生原因を理解していない可能性が高い。関係者が「炎上対策としてリプ欄を閉じている」と語ったと報じられているが、前述したとおりその対策は逆効果である可能性が高い。批判の根本は矛盾と不信であり、閉じれば閉じるほど批判が増幅する恐れがある。国民が求めているのは対話と説明であり、説明責任を果たさずに防御だけを固めれば、炎上は収束せず長引く可能性がある。

双方向のコミュニケーションができない政治家は炎上し続ける

 デマ対策の本質を踏まえると、双方向のコミュニケーションができない政治家は炎上し続けると言えるのではないか。政治家は国民の代弁者である。国民の声を届けるだけでなく、様々に説明責任を果たす義務がある。国民が疑問を投げかけたとき、政治家はわかりやすく説明し、誤解があれば解かなければならないし、批判があれば受け止めなければならない。このやり取りを通じて信頼が生まれる。今のSNS社会において、この双方向性を欠けば信頼は育たないのではないか。

 小泉氏のSNSで新たに指摘されているのが、批判コメントの大量削除である。仮に本当に大量削除が行われているのであれば、その悪影響は計り知れない。批判の内容そのものより「削除した」という事実に注目が集まるからである。SNSでは、削除された投稿はスクリーンショット等が保存され、逆に拡散されることも多い。さらに、削除された事実が「図星だから消したのではないか」と憶測され、逆に信ぴょう性が増す。削除の事実そのものが拡散される現象は「ストライサンド効果」と呼ばれており、情報を隠そうとすると逆にその情報を広めてしまうという現象を指している。特に政治家が批判コメントを消すと、一時的にコメント欄は健全に戻ったとしても、国民の目には「不都合な声を排除した」と映りやすい。結果として批判はさらに強まり、他のSNSや掲示板、まとめサイトへと波及していく。削除は防御策ではなく批判の増幅装置になり得る。特に政治家が行えば「透明性がない」「国民の声を受け止めない」というレッテルを固定化させる危険が大きい。これらの基礎的知見を有していれば、意図的に炎上させる目的でもない限り、わざわざTikTokアカウントを開設した後に批判コメントの大量削除など、やるはずもないだろう。

議論の公開性こそ最良の防御である

 小泉氏のデマ対策はコメント欄を閉じることにあったようだが、これは意見を潜らせるだけだとまずは気付くべきである。批判や疑念は表に出れば説明や反論で対抗できるが、閉じられた場では誤解が強化され、訂正されないまま広がる。総務省白書や国際研究が示さずとも、議論の公開性こそ最良の防御であることは言うまでもないではないか。小泉氏の戦略は本質を外している。このような基礎的な論点を外してSNS対策をしている政治家に、果たして国の舵取りが任せられるのだろうかと、不安に思う国民は少なくないのではないか。

 批判を恐れてコメント欄を閉じるのは、小泉氏だけではない。主要政党の国会議員にも複数見られるが、現代の情報環境を理解していない証拠である。

規制は「批判の封じ込め」にはなっても「デマ対策」にはならず

 SNSは単なる宣伝の場ではない。国民と議員がやり取りする公共の空間である。批判コメントを直接送らない国民も、その批判に対する政治家の姿勢や対応を見て、信頼に足る政治家かどうかを判断している。そこで耳をふさぐ姿勢を見せれば、不信は一気に広がる。この双方向性という特性を持った開放的なSNSコミュニティの特性に理解が浅い政治家が同じ過ちを繰り返し、国民の政治不信に繋がっているのではないか。

 今年の参院選で争点になったSNS規制は「誹謗中傷やデマ対策」という名目で語られた。だが前述した研究や総務省の調査でも指摘されているように、デマはむしろLINEやTelegramなど閉鎖的なSNSで発生・拡散する傾向が強い。公開型SNSでは批判や反論が入りやすいため、規制対象とされやすいが、実際にデマの温床となる閉鎖的空間には十分な対策が及ばない。この矛盾を解消しない限り、規制は「批判の封じ込め」にはなっても「デマ対策」にはならず、かえってデマ情報が閉鎖的空間で広がり続ける恐れさえはらんでいるのではないか。少なくとも、表面的な規制のみ強化することは何の意味もないだろう。

 炎上は信頼を築く試練であり、この炎上をどう切り抜けるかという実力を国民に知らしめるまたとない機会でもあり、政治家の真価が問われる。政治家のSNS戦略はその政治家のSNSリテラシーを如実に現している。小泉氏のみならず、総裁選候補者のSNS戦略に、今後も注目していきたい。

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