20代から始める「ヤドカリ投資」普通の会社員が億を築く資産形成

「不動産投資に興味はあるけど、何千万もの大金をいきなり出すのは無理……」そう考えている人も多いのではないだろうか。
不動産投資には、ハードルが高いイメージがある。しかし、海外不動産投資家・海外移住コンサルタントの宮脇さき氏は、「自己資金が少なくても、無理なく始められる投資法がある」と話す。それが「ヤドカリ投資」だ。
この記事では、ヤドカリ投資の仕組みからメリット、具体的な事例、そして注意点まで、初心者にも分かりやすく解説していく。全3回中の1回目。
※本稿は宮脇さき著『世界の新富裕層はなぜ「オルカン・S&P500」を買わないのか 20代で純資産4億円をつくった超レバレッジ投資の極意』(KADOKAWA) から抜粋、加筆修正したものです。
第2回:ドバイ、ジャカルタ…日本の富裕層が「海外不動産」に注目する理由
第3回:日本を脱出する富裕層たち……海外移住を決める3つの理由と人気の移住先とは
目次
ヤドカリ投資とは? 住宅ローンを最大限に活用する賢い戦略
不動産投資に興味があっても、「いきなり何千万円以上もの大金を投じるのは難しい」と感じている方も多いかもしれません。そんな方に一つのやり方として、国内不動産を活用した「ヤドカリ投資」という方法があります。
ヤドカリ投資とは、文字通りヤドカリがより大きな貝殻に引っ越していくように、自宅を低金利の住宅ローンで購入し、一定期間住んだ後に売却、その売却益を元手に次のより良い物件へと「住み替え」を繰り返す資産形成術です。
この投資法の最大のポイントは、何と言っても低金利で審査が通りやすい「住宅ローン」を活用できること。投資用ローンに比べて金利が圧倒的に低いため、若い世代や不動産投資が初めての人でも始めやすいのが魅力です。
さらに、「住宅ローン控除」という税制優遇も受けられます。これは、年末時点のローン残高の0.7%が所得税や住民税から控除される制度です。例えば、ローン残高が3000万円なら、年間で21万円、10年間で最大210万円もの税額控除が受けられます。
自己資金が少なくてもOK!私も実践したヤドカリ投資
「でも、頭金はいくら必要なの?」と疑問に思うかもしれません。一般的に、自己資金として用意する頭金は、物件価格の10%程度で大丈夫です。
例えば、7000万円の物件なら700万円ほどの頭金と諸費用があれば、購入できる可能性があります(金融機関の審査や個人の属性によります)。
実際に、私も20代の頃に8000万円台のタワーマンションを、頭金1000万円ほどで住宅ローンを組んで購入しました。その後、ドバイへの移住が決まり、想定よりも早く売却したのですが、結果的に1000万円以上の売却益を得ることができました。
20代後半のAさんも、数年前に都内の駅近タワーマンション(約6000万円)を頭金600万円で購入しました。数年間住んだ後に売却したところ、物件価格の上昇によってなんと3000万円もの売却益を得たそうです。
その利益を頭金にして、さらに7500万円のマンションに住み替えたとのこと。数年間は家賃負担ゼロで、さらに住宅ローン控除やキャピタルゲインといったメリットを享受できたのです。
また、関西在住のBさんも、4000万円強で購入した中古の区分マンションを数年後に売却したところ、6500万円で売れました。たった数年で価格が1.5倍以上に上昇したのです。
このように、ヤドカリ投資を2回転、3回転させることで、資産を1億円以上築いたケースは珍しくありません。資産をひけらかすわけでもなく、周囲も気づかないうちに、同世代との間に数千万円〜数億円単位の「静かなる資産格差」が生まれているのが現実です。
やり方を間違えると、金利が上がってしまうリスクも…
ヤドカリ投資は賢い手法ですが、もちろんリスクや注意点もあります。
まず、購入した物件に実際に住むことが大前提です。住宅ローンは自己居住用を目的としたローンなので、最初から転売や賃貸目的で利用することは明確な契約違反です。もし金融機関に発覚した場合、今後の融資取引が拒否されたり、最悪の場合は一括返済を求められたりする可能性があるので絶対にやめましょう。
また、あまりに短期間(例えば1年未満など)で頻繁に売買を繰り返すことも現実的ではありません。金融機関から投機的な取引と見なされ、投資用ローン扱いになって金利が上がってしまう可能性もあります。
家族がいる場合は、住み替えのたびに家族の同意が必要になります。特に、お子さんがいるご家庭では、学区の変更や転校が必要になるなど、家族の状況によっては何度も引っ越しを繰り返すのは難しいかもしれません。
資産1億以上の富裕層にもヤドカリ投資は魅力的な戦略
実は、このヤドカリ投資は、すでに資産を1億円以上持つ富裕層にとっても魅力的な戦略です。
将来の値上がりが期待できる、都心の一等地の新築マンションを例に見てみましょう。物件価格が2億円だとした場合、契約時に支払うのは手付金として物件価格の10%程度の2000万円です。残金は引き渡し時(数年後)に支払うのが一般的です。
この契約から引き渡しまでの数年間、手付金2000万円を支払うだけで、実質的に2億円の不動産の値上がり益を享受できる権利を確保した状態になります。残りの1億8000万円の資金は、引き渡しまでの間、他の投資で運用し続けることができるのです。
これは資金効率の観点から見て、かなりレバレッジが効いた状態と言えます。もし引き渡しまでに物件価格が10%上昇(2000万円の値上がり)すれば、投じた手付金2000万円に対して100%のリターンを得たのと同じ効果になります(諸経費や税金はかかります)。
反対に、もし不動産市場が暴落して物件が値下がりしてしまったとしても、最悪の場合は契約を解除して手付金を放棄することで、それ以上の損失を防ぐことができます。ただし、契約内容によっては違約金が発生することもあるのでご注意を。
2億円全額を現金で投資していた場合、その2億円全体が値下がりリスクにさらされるのとは対照的です。手付金だけで、数年後の大きな値上がり益を享受できる可能性のある「コールオプション(買う権利)」に似たポジションを、比較的低いリスクで保持できるのです。
もちろん、この投資手法は不動産市況の予測を伴うため、すべての人にすすめられるわけではありません。契約内容によっては、手付金の放棄だけでは済まない場合もあります。しかし、最近では一部の新富裕層やアッパーマス層が、住宅ローンのメリットや契約の仕組みを活用し、資産形成を進めているのも事実なのです。