海外メディアが報じた「高市首相の政策大転換」…経済誌元編集長「増税ラッシュが日本を襲う」高市周辺は「仕方ない」「本音は違う」連発

(c) AdobeStock

 2025年5月13日、高市早苗総理は虎ノ門ニュースに出演し、「賃上げのメリットを受けられない方々にも広くメリットがあるのは、食料品の消費税率ゼロだと確信していた。かなりがっかりしている」と主張し、17日には「(消費税減税に否定的な見解を示した石破茂首相の国会答弁を受け)私たちの敗北かなと思っている」(札幌での講演)と指摘していた。そして、いざ総理になれば巨額のバラマキ始めた。歳出削減せずに国債を発行して景気刺激策を撃つやり方には疑問の声もあがったが、それでもアベノミクスを継承した大胆な財政出動に期待もあった。しかし、経済誌プレジデントの元編集長で作家の小倉健一氏は「防衛費のための増税や、高校生の扶養控除縮小といった『増税ラッシュ』の話ばかりになった」と方針転換が起きたことを指摘する。なぜこんなことが起きているのか。小倉氏が解説していく―-。

目次

聞こえてくるのは「増税ラッシュ」の話ばかり

 手元のスマートフォンが震え、ニュースアプリの通知が画面に浮かび上がる。そこには、私たちの生活を根底から揺さぶるような言葉が並んでいる。「増税」「控除縮小」「負担増」。文字の列は冷たく、そしてどこか他人事のように報じられているが、その意味するところは、私たちの財布の中身が、そして明日への希望が、じわりと削り取られていくという現実だ。

 かつて、この新しいリーダーに対して、多くの人々が抱いた期待があった。それは、アベノミクスを継承し、縮こまった日本経済を大胆な金融緩和と財政出動――いわゆる「リフレ政策」――で温め直し、成長の軌道に乗せてくれるのではないかという期待だ。しかし、蓋を開けてみればどうだろう。「リフレをやめます」と宣言したかのような変節ぶりだ。聞こえてくるのは、防衛費のための増税や、高校生の扶養控除縮小といった「増税ラッシュ」の話ばかりである。中には総理本人は「指示していない」という弁解をしたものもあったが、それでも新たな減税案は出てこない。

 なぜ、このような劇的な方針転換が起きたのか。その背景には、リーダー自身の「真面目さ」と、それゆえに直面した冷厳な現実、そして周辺から漏れ聞こえる「仕方ない」という諦念があったようだ。ロイター通信が配信した記事(12月5日)の中に、その内幕を伝える興味深い記述がある。そこには、総理就任前の主張をねじ曲げてきた数々の総理大臣が直面した「現実」という壁があったようだ。

「マーケットの動向を相当気にしているようだ」

「高市氏には誤算だった。もともと勉強熱心で『何事も自分で理解しないと気が済まないタイプ』(内閣官房関係者)と言われる高市氏だ。足下の市場動向についてたびたび省庁から説明を受けるうちに、対応が必要だとの思いを強くしたとみられる。前出の経済官庁関係者は『11月18日に日銀の植田和男総裁と会談したときには、すでに高市氏は現状への強い危機感を抱いていた』と話す」

「『財政をもっと噴かせろ』という声はいまや政府内で少数になりつつある」。前出の政府関係者はこう話す。来年度当初予算に向けた首相官邸での打ち合わせでも高市氏から『無理な要求』は出なくなったといい、『マーケットの動向を相当気にしているようだ』と、この関係者は解説する。政府内では、こうした高市氏の「変化」が日銀の利上げを容認する姿勢につながったとの見方が大勢だ」(ロイター、『アングル:日銀利上げ容認へ傾いた政権、背景に高市首相の「変化」』12月5日)

 この引用箇所が示唆する事実は重い。勉強熱心なリーダーは、役所の説明を聞き込むうちに、市場の論理、とりわけ円安や金利の動きという現実に圧倒されたのだろう。結果として、当初の威勢の良さは影を潜め、「円安阻止には緊縮もやむなし」「財源不足だから増税も仕方ない」という、役所が用意したシナリオへと回収されてしまったのである。

連発されるこの「仕方ない」という言葉

 高市周辺から連発されるこの「仕方ない」という言葉こそが、リフレ政策の墓標となりつつある。

 特に、今回議論の俎上に載せられた「高校生の扶養控除縮小」という案は、この増税ラッシュの中でも多くの国民にとって到底納得のいくものではない。「児童手当を拡充するから、その分、税金の優遇措置である控除は減らしますよ」という理屈だ。役所の人々はこれを「行って来い」でプラスマイナスゼロだと説明するかもしれない。高市総理はその後、この案について「自分は指示していない」などと弁明し見送りを示唆した。しかし、これこそが現代の政治が陥っている最大の罠であり、私たちが断固として拒絶すべき悪手である。

 ここで、少し立ち止まって考えてみたい。そもそも「お金」とは誰のものだろうか。それは、汗水流して働いた人々のものであり、日々の暮らしを営むための糧である。

国民のお金をとらなければいい

 シンプルに考えれば、国民の暮らしを楽にするための最善の方法は、そのお金を「取らない」ことであるはずだ。税金を安くし、消費税や間接税を減らし、国民の手元に残るお金を増やす。それだけでいい。そうすれば、私たちは自分の判断で必要なものを買い、子供の教育費に充て、時には将来のために貯蓄することもできる。

 ネット上では、「子育てに対する罰金だ」という怒りの声が溢れたという。この直感的な言葉こそ、事の本質を鋭く射抜いている。国民は馬鹿ではない。名目上の給付が増えたとしても、実質的な手取りが減り、生活が苦しくなることを肌感覚で理解している。役所が作った複雑な計算式よりも、日々の暮らしの中で感じる「重さ」の方が、よほど正確な経済指標なのだ。

 高市政権が直面しているのは、単なる財源の問題ではない。「大きな政府」として国民の生活の隅々まで介入し、お金の配分をコントロールしようとするのか、それとも「小さな政府」として国民の自由を尊重し、余計な手出しをせずに民間の活力を信じるのか、という岐路である。

やるべきことは国民の可処分所得の最大化

 残念ながら、今の動きを見る限り、政権は前者の道を選ぼうとしているように見える。防衛費が必要なのは理解できる。国の安全を守ることは重要だ。しかし、その財源を確保するために、経済の血管である民間のお金の流れを阻害してしまっては本末転倒である。経済が痩せ細れば、守るべき国そのものが弱ってしまうからだ。

 政権中枢から漏れる「仕方ない」という言葉で、思考を停止してはいけない。複雑な制度を作り、現金を給付することで仕事をした気になっている政治に対して、私たちはもっと「シンプルにしてくれ」と声を上げるべきだ。「私の財布から勝手に抜かないでくれ、そうすれば自分でなんとかするから」と。

 市場の動向を気にすることは大切だ。金利や為替の動きを無視して財政を拡張し続ければ、いつか破綻が訪れるかもしれない。その意味で、高市氏が現実路線に修正したこと自体は、ある種の学習能力の高さとして理解できなくもない。しかし、その「現実的な対応」と称するものが、安易な増税ラッシュや控除の廃止という、国民にツケを回すだけの形になっていることが問題なのだ。

 本当に市場や経済を理解しているのであれば、今やるべきことは国民の可処分所得を最大化することだと気づくはずだ。

高市首相周辺が「高市首相の本音は違う」といくら強弁しても

 企業が自由に活動し、個人が自由に消費できる環境を整えること。それには、税というブレーキを緩めることが最も効果的である。

 かつて、ある実業家たちが築き上げた日本の繁栄は、細かい政府の規制や補助金頼みで生まれたものではなかったはずだ。彼らはリスクを負い、知恵を絞り、消費者が喜ぶ商品やサービスを生み出すことで富を築いた。そこにあったのは、市場という公正な場での真剣勝負であり、政府の役割は公正な審判であれば十分だった。経済産業省の産業政策などまともに機能したことはなかった。

 高市首相周辺が「高市首相の本音は違う」といくら強弁しても、実態として高市首相が働けば働くほどに「増税して増税して増税して参ります」となっているのであれば、残念だ。「リフレをやめます、増税します、仕方ないです」という言葉に、私たちはただ頷くわけにはいかない。

 高市首相は当初のリフレ政策から転換し、防衛費増税や控除縮小など「増税ラッシュ」に舵を切った。これは市場の現実と役所のシナリオに屈した結果と見られ、「仕方ない」という諦めが蔓延。筆者は、国民の可処分所得最大化こそが経済対策の本質だと訴える。

    この記事はいかがでしたか?
    感想を一言!

政治・経済カテゴリーの最新記事

その他金融商品・関連サイト

ご注意

【ご注意】『みんかぶ』における「買い」「売り」の情報はあくまでも投稿者の個人的見解によるものであり、情報の真偽、株式の評価に関する正確性・信頼性等については一切保証されておりません。 また、東京証券取引所、名古屋証券取引所、China Investment Information Services、NASDAQ OMX、CME Group Inc.、東京商品取引所、堂島取引所、 S&P Global、S&P Dow Jones Indices、Hang Seng Indexes、bitFlyer 、NTTデータエービック、ICE Data Services等から情報の提供を受けています。 日経平均株価の著作権は日本経済新聞社に帰属します。 『みんかぶ』に掲載されている情報は、投資判断の参考として投資一般に関する情報提供を目的とするものであり、投資の勧誘を目的とするものではありません。 これらの情報には将来的な業績や出来事に関する予想が含まれていることがありますが、それらの記述はあくまで予想であり、その内容の正確性、信頼性等を保証するものではありません。 これらの情報に基づいて被ったいかなる損害についても、当社、投稿者及び情報提供者は一切の責任を負いません。 投資に関するすべての決定は、利用者ご自身の判断でなさるようにお願いいたします。 個別の投稿が金融商品取引法等に違反しているとご判断される場合には「証券取引等監視委員会への情報提供」から、同委員会へ情報の提供を行ってください。 また、『みんかぶ』において公開されている情報につきましては、営業に利用することはもちろん、第三者へ提供する目的で情報を転用、複製、販売、加工、再利用及び再配信することを固く禁じます。

みんなの売買予想、予想株価がわかる資産形成のための情報メディアです。株価・チャート・ニュース・株主優待・IPO情報等の企業情報に加えSNS機能も提供しています。『証券アナリストの予想』『株価診断』『個人投資家の売買予想』これらを総合的に算出した目標株価を掲載。SNS機能では『ブログ』や『掲示板』で個人投資家同士の意見交換や情報収集をしてみるのもオススメです!

関連リンク
(C) MINKABU THE INFONOID, Inc.