2026年日本経済大展望!経済誌元編集長「前半上昇、後半没落か」増税&借金ラッシュ!「高市=サッチャー」無理なプロパガンダ放つ自民党

寒空の下、街路樹が枯れ枝を鳴らし、乾いた風が吹き抜けていく。暦が音もなく移ろい、街の景色が季節の節目を告げても、多くの人々の胸に去来するのは、明日への希望というよりも、重くのしかかる現実へのため息であるかもしれない。2025年に発足した高市早苗政権。日本初の女性リーダーとして華々しく登場したあの日、確かに私たちの胸にはかすかな期待の灯がともっていたはずだ。しかし今、その灯は「増税ラッシュ」という冷や水によって、今にも消え入りそうになっている。経済誌プレジデントの元編集長で作家の小倉健一氏が解説する――。
目次
サッチャーに高市総理を重ねる自民広報にSNSでツッコミ
先日、自民党がX(旧Twitter)に投稿した記事が、一部で話題を呼んでいる。高市首相が尊敬するマーガレット・サッチャー元英国首相との共通点を強調し、「強い女性リーダー」のイメージを重ね合わせるプロパガンダだ。
『自由民主(自民党機関紙)』の記事タイトル『強い女性リーダーの実像と共通点 マーガレット・サッチャーと高市早苗:二人の女性首相に寄せて』だ(2025年12月22日、X投稿日時)。
「高市早苗総理が目標とする政治家がサッチャー元英国首相」
「『鉄の女』と称されたサッチャー元首相の強いリーダーシップと、冷戦を終結に導いた強い信念や議会での力強い討論は高市総裁と共通する点も多く、高市総理が『目標』とするのもうなずける」
「首相就任時の英国は、インフレや労働争議に喘ぎ、『英国病』などと揶揄される有様であった。サッチャー政権は、新自由主義的な荒療治によって英国経済を立て直そうとしたことで知られる。とりわけ国営企業の民営化や金融の規制緩和(金融ビッグバン)は、政権の代名詞となった」
この投稿は、サッチャーの強さと改革への意志を称賛し、高市首相もまた同様のリーダーシップを発揮するだろうと示唆している。確かに、サッチャーの功績は大きい。「英国病」と呼ばれた経済の停滞を、痛みを伴う改革で打破し、英国を再び繁栄の軌道に乗せた手腕は歴史に残るものだ。自身の信念を貫き通す強靭な精神力、そして自由主義経済への揺るぎない信頼。それらは称賛に値するリーダーの資質である。
しかし、ここで私たちは冷静に問いかけなければならない。現在の高市政権が行っていることは、本当にサッチャーの理念と合致しているのだろうか、と。
サッチャーが否定した「政府による産業の選別」をする高市総理
サッチャーが行った改革の本質は、「小さな政府」への回帰であった。国営企業を民営化し、規制を緩和し、政府の役割を縮小することで、民間の活力を引き出したのである。彼女は、政府が経済に介入しすぎることを嫌い、個人の自助努力と自由な競争こそが繁栄の源泉であると信じていた。だからこそ、痛みを伴う歳出削減を断行し、非効率な補助金をカットしたのだ。
対して、今の高市政権はどうだろう。「積極財政」という美名のもと、半導体、造船といった、どう考えても失敗しそうな特定産業へ巨額の官民投資をぶち上げている。これは、サッチャーが否定した「政府による産業の選別」そのものではないか。さらに、「増税して増税して増税して参ります」と揶揄されるほどの増税ラッシュ。防衛費増額、扶養控除縮小、社会保険料の引き上げ。これらはすべて、政府の肥大化を意味し、民間の自由な経済活動からリソースを奪う行為である。
こうした現状の延長線上に、2026年の日本経済がどのような姿を見せるか、客観的なデータと政策のベクトルから予測することは難しくない。そこに見えてくるのは、「官製相場」の熱狂と、その後に訪れる冷徹な停滞のシナリオだ。
日経平均株価は、見かけ上の数字は華々しい記録を更新するかもしれない
2026年、市場は一時的な活況を呈するだろう。過去最大規模となる120兆円超の予算と、補正予算による20兆円規模の財政出動が、文字通りマネーの奔流となって経済に流れ込むからだ。「高市トレード」と呼ばれる現象が加速し、AI半導体や防衛関連、エネルギー産業といった「国策銘柄」に資金が集中する。日経平均株価は、見かけ上の数字は華々しい記録を更新するかもしれない。政府はこれを「サナエノミクスの成功」と喧伝し、成長の果実が実ったと胸を張るだろう。
しかし、その「宴」の裏側で、経済の基礎体力は確実に蝕まれていく。まず為替市場だ。巨額の財政出動による債務の膨張を世界が見逃すはずはない。「日本の財政規律は失われた」との判断から円売り圧力は消えず、輸入品価格の高止まりし、エネルギーや食料品の価格はじわじわと家計を締め上げる。
さらに深刻なのは金利の上昇だ。ばら撒かれたマネーがインフレ圧力を高め、日銀は利上げを余儀なくされる。政策金利が上昇すれば、何が起きるか。
政府が主導する産業政策の危うさ
住宅ローンの変動金利は跳ね上がり、マイホームを持つ現役世代の可処分所得を直撃する。借入金に依存する中小企業の経営は圧迫され、倒産件数は増加に転じるだろう。「株価は高いが、生活は苦しい」。このスタグフレーションに近い歪な状況こそが、2026年のリアルな姿となる公算が高い。
加えて、政府が主導する産業政策の危うさも指摘せざるを得ない。かつて日本政府は「第五世代コンピュータ」計画などで巨額の国費を投じ、無惨な失敗に終わった歴史を持つ。技術革新のスピードが速い現代において、官僚組織が「勝てる産業」を的確に見極めることなど不可能に近い。それにもかかわらず、高市政権は補助金漬けの産業育成に固執している。これは一時的なGDPの押し上げにはなるが、長期的には生産性の低い「ゾンビ企業」を延命させ、イノベーションの芽を摘む結果にしかならない。こうした「官製バブル」の剥落により、成長率は急速に鈍化していくだろう。
高市政権の「強さ」は、どこか方向がずれている
サッチャーならば、このシナリオを見て何と言うだろうか。「政府が賢いふりをして産業を選ぶのはおやめなさい」と叱責するのではないか。「財源がないなら増税するのではなく、まずは無駄な歳出を削りなさい」と一喝するのではないか。彼女が目指したのは、政府が国民の財布に手を突っ込む社会ではなく、国民が自分の稼ぎを自分の判断で使える社会だったはずだ。
もし高市首相が本当にサッチャーを「目標」とするならば、やるべきことは明白である。それは、官僚が書いた増税シナリオを読み上げることではない。「仕方ない」と諦めて、国民に負担を転嫁することでもない。
真にサッチャーに倣うのであれば、まずは徹底的な歳出削減にメスを入れるべきだ。効果の疑わしい補助金や、肥大化した行政組織をスリム化し、そこから財源を捻出する。そして、増税ではなく減税を行うのだ。消費税を下げ、社会保険料の負担を軽減し、現役世代の手取りを増やす。それこそが、サッチャー流の「自助努力を促す」最強の政策ではないだろうか。
「鉄の女」と呼ばれたサッチャーの強さは、単に強硬な態度をとることではない。不人気な政策であっても、それが長期的には国民の自由と繁栄につながると信じれば、断固として実行する信念の強さだ。しかし、今の高市政権の「強さ」は、どこか方向がずれているように見える。
「サッチャー=高市」というプロパガンダ
増税や負担増といった、国民を苦しめる方向でのみ「強硬」であり、歳出削減や既得権益の打破といった、本当に必要な改革においては「弱腰」に見えるのだ。
産業政策で特定の企業を優遇し、そのツケを国民全体に回す。これは「新しい資本主義」でもなんでもない。かつて失敗した「護送船団方式」の焼き直しであり、サッチャーが最も忌み嫌った「社会主義的」な手法である。2026年に待ち受けているのが、官民癒着による一時的な熱狂と、その後の長い停滞であるならば、私たちは今ここで声を上げなければならない。
私たちは、高市首相に改めて問いたい。あなたが目指すのは、官僚機構という大きな政府に守られた「管理された繁栄」なのか、それとも、国民一人ひとりが自由に挑戦し、失敗もしながら成長していく「自律した繁栄」なのか。もし後者であるならば、今すぐ増税ラッシュというアクセルから足を離し、歳出削減と減税というハンドルを切るべきだ。
プロパガンダで「サッチャー=高市」という構図を作るのは自由だ。しかし、その中身が伴っていなければ、それは単なる虚像に過ぎない。サッチャーの銅像を建てる前に、彼女の魂――「自由への渇望」と「政府への懐疑」――をこそ、継承してほしい。