花いっぱいの春が、来る。羽生結弦『REALIVE』発表。「二度と同じ瞬間などないプログラムたち」ーー「いま」「ここ」の感動、新たに。(3)

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「勇気の人」羽生結弦
興行は本当に難しい。
羽生結弦「成功しかない興行」、それは決して偶然でも奇跡でもない。
世界中の「羽生結弦と共にある人たち」が歩み続ける、確かな成果だ。
すでに『notte stellata 2026』も激しいチケット争奪戦となっているが、これは本当に誇りうるべきことで、まあチケットがとれないことは悲しむべきことなのだが、いつでもチケットがとれてしまうどころかチケットが売れずにガラガラの会場となることはもっと悲しきことだろう。『REALIVE』もとんでもない競争率となるに違いない。
どんな売れっ子でも、世界中でチケットがソールドアウトのミュージシャンでも「興行は怖い」と語る。私の実際の肌感では「席が埋まるか心配」はむしろそうした売れっ子ほど気に掛けるように思う。その人が本物だからこそ知る興行の現実、だから私はこうした興行を打つ人を「勇気の人」と呼ぶ。羽生結弦しかり。
チケットが売れない、席が埋まらないことを映画の興行では「ボックスオフィス・ボム」と呼ぶ。日本では「爆死」だろう。
私にもその「爆死」の思い出はある。角川書店(現・KADOKAWA)にアルバイト社員として入社した1992年末、同社は『ルビー・カイロ』という映画の公開直後であった。
角川映画と聞けば多くのヒット作を記憶するだろう。しかしこの『ルビー・カイロ』を知る人はそうとうな映画マニアか関係者に違いない。当時、実際に観た人はどれだけいたことか。角川のハリウッド進出第一弾となった同作は大爆死してしまう。
興行を打つ人は勇気の人
私はその直後にいたわけだが、編集部のゴミ箱に突っ込まれた前売りチケットを記憶している。30億円の製作費に対して5億円いくかいかないかの結果となった。この負債がいわゆる角川のお家騒動に発展し、いろいろあって現在のKADOKAWAに至るわけだが、その後の『REX 恐竜物語』もいろいろあって散々な結果となった。
そうした1990年代の角川映画を支えたのはアニメであった。ライトノベル原作アニメの走りとなった『スレイヤーズ』、CLAMPの『X』、そして言わずもがなの『新世紀エヴァンゲリオン劇場版』である。
私が「コンプティーク」にいた時代はそんな角川アニメ第二次黄金期であった。その後、実写も『失楽園』『リング』『らせん』と復活を遂げることになる。
「興行は水物」と言うが、直接の当事者ではないが肌感としてしっかりと記憶している。羽生結弦のアイスストーリー『RE_PRAY』で改めて注目された『エストポリス伝記II』(1995年)もこの時代に生まれた作品だ。
だからこそ、興行を打つ人は勇気の人だと心の底から思う。