「中国本土を攻撃できる兵器開発を!」の声も 中国離れが加速する台湾…好戦ムードで問われる日本の覚悟(特集:丸わかり中国経済 第6回)

ロシアのウクライナ侵攻以来、「次は台湾」と言われてきたが、実際に台湾の人々は、現在の国際情勢の急変や、大陸・中国に対してどのような感情を持っているのか。みんかぶプレミアム特集「丸わかり中国経済」(全10回)第6回は、ジャーナリスト・野嶋剛さんが、ペロシ訪問以来1カ月の台湾滞在で現地の人々の本音を探った。
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台湾の人々はなぜペロシ訪台に熱狂したのか
私は8月3日にコロナ禍以降、数年ぶりに台北松山空港に降り立ちました。偶然だったのですが、前日に訪台したナンシー・ペロシ米下院議長の帰国日時に重なっていました。空港には、ペロシ議長が乗る米軍機があり、それを見送る台湾人が集まり、大変な騒ぎでした。
ペロシ議長の訪台前、習近平総書記はバイデン大統領との電話会談で「中国の民意に逆らって火遊びをすれば身を焦がす」と釘を刺していました。バイデンも訪台には消極的で、ペロシの訪問リストから一度、台湾は消え、結局、台湾には寄らないのではないかとの情報も流れていました。来るのか来ないのか。台湾の人たちはみな、やきもきしながら、ペロシ議長が搭乗した米軍機をリアルタイムで追えるウェブサイト「フライトレーダー24」に注目していました。サイトを同時に閲覧していた人の数はなんと約70万人! 台湾行きの軌道が確認されたとき、「やった、ペロシが台湾に来る!」と歓喜の声が上がったそうです。
当初は中国の批判をかわすため、空港にほんの数時間滞在するだけで、その場で蔡英文総統と会談する、という観測もありました。ですが結局、蔡総統との会談のみならず、立法院(議会)、総統府、人権博物館まで訪れ、大勢のメディアに見つめられる中、記者会見も行いました。わずか20数時間の滞在でしたが、非常に密度の濃いスケジュールをこなしました。そうした中で台湾人が熱狂したのは、ペロシ議長の言葉です。「アメリカは台湾を見捨てない」「アメリカと世界は台湾とともにいる」――それは台湾人が最も望んでいたメッセージだったのです。