IR(独自企業分析)

「スポーツ用品・アウトドア・自動車部材テーマ」モリト

みんかぶ編集室
公開)

今回は、「スポーツ用品」「アウトドア」「自動車部材・部品」などの株テーマ関連からモリト株式会社(9837)です。

Key Points:

  • 「小さなパーツで世界を変え続ける、グローバルニッチトップ企業」
  • 2022年11月期は大幅な「増収増益」
  • 株主還元においては、「6円増配」の32円を実施!さらに、 2023年11月期は「22円増配」の54円を想定

目次

Identity

モリトをひとことで言えば、「小さなパーツで世界を変え続ける、グローバルニッチトップ企業」です。

 靴・衣類に紐を通す穴に取り付ける金具の「ハトメ」をはじめ、ホック、マジックテープなどの服飾およびフットウエアの付属品。また、自動車の内装品等の企画・開発から製造、卸・流通までを一貫して手掛ける専門商社です。

 創業 115 年の歴史の中で培われた「信頼性」、「トップシェア」、そして「グローバルネットワーク」を強みに、「ニッチ」な市場において、確かな存在感を発揮しています。

 現在は、国内7 社、海外 12 社の合計19社の連結子会社、1社の持分法適用関連会社を持つホールディングカンパニーです。なお同社では、2026年11月期を最終年度とする中期経営計画の一部変更(「サステナビリティ方針」の策定、「資本政策」および「株主還元策」の変更)を発表しています。

Performance:全体業績

2022年11月期決算の概要

P/L

大幅な「増収増益」。過去の売上および経常利益。売上高11.1%増、営業利益30.7%増、経常利益27.7%増、親会社株主に帰属する当期純利益19.0%増。

 2022年11月期におけるP/Lは、大幅な「増収増益」でした。売上高は前年同期比 11.1%の増収、利益面では営業利益30.7% 、経常利益27.7%、最終利益19.0%とそれぞれ増収でした。   

 2022年11月期の経営環境は、原材料の高騰や為替の変動、半導体不足による自動車メーカーの減産や生産停止、そして海上輸送の遅れや運送費の高騰など様々なリスクが重なり、先行きの不透明感は継続しています。こうした中、流行に左右されないメディカルウェア、作業服関連、またスポーツ関連や医療機器関連商品などの機能性に優れた付属品や製品のビジネスが好調に推移。利益面では、サステナブル社会の実現を目指すグループの取り組み「Rideeco(リデコ)= RIDE for ECO」において、廃漁網や縫製工場から出るハギレなどを活用した環境配慮型の商品開発・販売を推進し新規取引の各獲得に注力、また運送費など経費の見直しを継続実施することで、営業利益率は前年同期 3.7%から 4.4%へ改善しています。

 地域別業績で見ても、日本、アジア、欧米の販売実績は好調に推移しており、合計で前年同期比111.1%です。

 また、2023年11月期 1Qの決算状況も好調で、売上高・営業利益・経常利益・当期純利益のそれぞれの項目が 四半期開示開始以来、過去最高を達成しています。

B/S

総資産および純資産ともに増加。自己資本比率は0.8ポイントDOWNし72.9%へと推移。また、ROEは0.5ポイント改善し4.8% へ。

 総資産は、502億7千1百万円と前年同期比43億3千3百万円増加しました。流動資産は、304億8千1百万円で前年同期比35億2千3百万円増加しています。これは主に、商品及び製品が15億6千9百万円の増加、受取手形及び売掛金が8億9千2百万円の増加、原材料及び貯蔵品が6億8千7百万円の増加、電子記録債権が5億6千1百万円の増加、現金及び預金が7億3百万円減少したことによります。

 純資産については、366億8千4百万円となり前年同期比27億6千9百万円増加していますが、自己資本比率は前年同期の73.7%から72.9%と0.8ポイント減少しました。なお、財務の健全性を示す指標のひとつであるROEについては、前年同期の4.3%から4.8%へと0.5ポイント改善しています。

C/F

フリーキャッシュフローは、前年同期の22億4千3百万円から7億1千5百万円へと推移。

 フリーキャッシュフローは前年同期の22億4千3百万円から7億1千5百万円へと推移。また、現金及び現金同等物は6億2千4百万円減少し、103億9千6百万円となっています。

 営業活動によるキャッシュ・フローは、8億5千万円の収支プラスとなりました。これは主に、棚卸資産の増加及び法人税等の支払により資金が減少した一方で、税金等調整前当期純利益の獲得及び減価償却費の計上により資金が増加したことによるものです。

 投資活動によるキャッシュ・フローは、1億3千5百万円の収支マイナスとなりました。これは主に、投資有価証券の売却及び有形固定資産の売却により資金が増加した一方で、有形固定資産の取得により資金が減少したことによるものです。

 財務活動によるキャッシュ・フローは、19億1千6百万円の収支マイナスとなっています。これは主に、長期借入金の返済による支出、配当金の支払及び自己株式の取得による支出により資金が減少したことによるものです。

株主還元

1株当たり年間配当金額は、前期の26円から32円と増配。また2023年11月期は、さらに22円増配予定で年間配当54円を想定!

 株主還元においては、2022年11月期の配当を前期の26円から32円へと増配。配当性向は51.4%です。さらに2023年11月期は22円増やして、年間配当金額を54円で想定しています。

2023年11月期の見通し

 同社グループでは、『存在価値を創造する、あたらしい「モリトグループ」の実現』という経営ビジョンのもと、第8次中期経営計画(2022年11月期から2026年11月期の5年間)の最終年度目標である「連結売上高500億円、連結営業利益25億円」の達成を目指し、各種施策に取り組んでいます。

 2023年11月期の通期見通しは、激しい為替変動や物価上昇など、世界経済の先行きは不透明ですが、基軸商品に加え、機能性、サステナブルやエコにこだわった付加価値商品の販売に注力し、連結業績は2022年11月期を上回る、売上高500億円、営業利益23億円、経常利益24.5億円、親会社株主に帰属する当期純利益18億円を予想しています

Performance:セグメント別業績

 事業は「アパレル関連」、「プロダクト関連」、「輸送関連」の3つで構成され、ファッション性、機能性、快適性、安全性などを勘案し、市場や顧客ニーズに沿った商品をグローバル展開しています。

 地域別の「売上高」は、日本(69.1%)、アジア(17.2%)、欧米(13.7%)です。また、事業別の「売上高」では、「アパレル関連:227億9千5百万円(47.0%)」、「プロダクト関連180億6千万円(37.3%)」、「輸送関連76億2千2百万円(15.7%)」となっています。

(日本)

 アパレル関連では、欧米向けの作業服・メディカルウェア向け付属品、カジュアルウェア向け付属品、スポーツウェア向け付属品、スポーツシューズ向け付属品の売上高が増加しました。プロダクト関連では、医療機器関連商品、均一価格小売店向け商品、建築現場向け安全関連商品、スノーボード・サーフィン・アウトドア関連商品の売上高が増加しました。輸送関連では、日系自動車メーカー向け自動車内装部品の売上高が増加しました。その結果、売上高は335億1千6百万円(前年同期比10.9%増)、セグメント利益は16億1千8百万円(前年同期比17.7%増)となりました。

 なお、収益認識会計基準等の適用により、売上高は4億2千7百万円、セグメント利益は4千6百万円それぞれ減少しています。

(アジア)

 アパレル関連では、中国・香港での欧米向け作業服関連付属品、カジュアルウェア向け付属品、ベトナムでのスポーツシューズ向け付属品の売上高が増加しました。輸送関連では、半導体不足の影響により、中国での日系自動車メーカー向け自動車内装部品の売上高が減少しました。その結果、売上高は83億4千万円(前年同期比3.5%増)、セグメント利益は6億9千6百万円(前年同期比73.7%増)となりました。

(欧米)

 アパレル関連では、作業服向け付属品、カジュアルウェア向け付属品、高級ダウンウェア向け付属品の売上高が増加しました。輸送関連では、半導体不足の影響により、日系自動車メーカー向け自動車内装部品の売上高が減少しました。その結果、売上高は66億2千1百万円(前年同期比23.7%増)、セグメント利益は1億4百万円(前年同期比82.7%増)となりました。

ESG Elements:環境・社会・ガバナンス

 SDGsの認識浸透とともに、ESG項目は企業の成長可能性をはかる視点のひとつになりつつあります。同社では、SDGsおよびESGを重視したサステナブル経営を推進しています。

Environment(環境):

  環境関連の取り組みとして同社では、さまざまな業種や業界と協力しあい、活動の幅を広げていく新しいコンセプト「Rideeco(リデコ)= RIDE for ECO」をスタートさせています。廃漁網を活用したパーツ・生地などの資材を取り扱っています。廃漁網とは漁師が使用していた網のことで、海洋プラスティックごみの4割を占めるといわれています。

Social(社会):

 社会関連データでは、グループ従業員における外国人比率が60.9%あり、「グローバル化」が進行する同社の躍進状況が伺えます。

Governance(ガバナンス):

 ガバナンス体制においては、8名中4名と役員の半数を社外役員が占めています。女性役員は8名中2名と25.0%です。また、コンプライアンス委員会を設置し、法令を遵守した経営の健全性、透明性の確立に努めています。

Plan:中期経営計画

 3つの事業で安定した業績を継続中で、過去の大きな経済ショックでも赤字に陥ったことがありません。

また、様々なアイテムにおいて高い市場シェアを持っており、現在は一層の成長企業を目指して生産拠点、販売網の拡充とグローバル経営を支える内部体制の構築を加速させています。

 同社が取り扱う品目一つひとつをとれば競合先もありますが、これだけ多彩な品目を企画・開発から製造・流通、販売まで一貫して手掛けて、売上高400億円を超すというボリュームを実現している企業は世界的にも他に見当たりません。

 同社では、2026年11月期の最終年度目標「売上高500億円、営業利益25億円」を掲げる第8次中期経営計画の一部変更を行っています。

 環境、社会、経営に関するマテリアリティを定め、ESGおよびSDGsを意識したサステナビリティ経営を推進するための方針を策定。

 また、「企業活動に必要となる資金を長期的な視点で安定的かつ効率的に調達運用するため、偏りのない安定的な財務資本構成を構築する」ことを目標に、「資本政策」を定めています。

 そして株主還元策として、投資案件および財務状況を勘案した「利益配分に関する基本方針」において、「安定的かつ継続的配当の実現」、「連結配当性向:50%以上」、「連結自己資本配当率(DOE)目標:4%」を定めています。

第8次中期経営計画の一部変更

サステナビリティ方針の策定:サステナビリティ経営を目指してマテリアリティを特定!

環境への取り組み:地球環境に配慮した事業活動の推進 / 気候変動に対応したサプライチェーンマネジメント

社会への取り組み:人々の生活に役立つ製品作り / 社会資本・人的資本に対する取り組み強化

経営への取り組み:生産性向上による付加価値の最大化  / 経営における経営基盤の強化

資本政策の方針策定:

  1. 効率的経営の実践:中長期的な資本効率(ROE)の向上
  2. 適切な利益配分:業績連動性に安定性も付加した株主還元
  3. 資産効率の改善:BSの圧縮とCF創出および資金の積極投資
  4. 資本構成の適正化:財務レバレッジなどの活用

利益配分に関する基本方針:

  • 安定的かつ継続的配当の実現
  • 連結配当性向50%以上
  • 連結自己資本配当率(DOE)目標4%

Outlook:まとめ

「無くてはならない付属品」、「ニッチトップ」、「安定した収益」、「実質無借金経営」、「サステナビリティ経営」、「配当性向50%以上」など、モリトには、グローバル市場で十分に戦える競争優位性があります。「小さなパーツで世界を変え続ける、グローバルニッチトップ企業」、モリトの積極姿勢は引き続き「◎」です。

★注目の「スポーツ用品」「靴」「自動車部材・部品」「専門商社」テーマ株

三共生興(8018)
繊維商社の老舗。高級服ブランドを展開。欧米ブランド「DAKS」のライセンス保有。

明和産業(8103)
三菱系商社中堅。化学品・樹脂主力。炭素製品などで高シェア。中国に強み。

クリヤマHD (3355)
ゴム、合成樹脂製品が主力。産業用や建設用中心。尿素SCRセンサー事業も。

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