IR(独自企業分析)

「農業機械・林業・ポンプ・防災テーマ」丸山製作所

今回は、「農業機械」「林業」「ポンプ」「ドライミスト」「防災」などの株テーマ関連から、株式会社丸山製作所(6316) です。

Key Points:

  • 農業の効率化と生産性向上ニーズへの対応力が求められる中、創業来培ってきた「コア技術」を活かした戦略と、新規市場の開拓能力を強みに企業成長中。
  • 2022年9月期は「増収増益」。2023年9月期2Qは「減益」だが、通期では「増収増益」を見込む。
  • 株主還元においては、1株当たり配当金を12円増配の55円を実施! 2023年9月期も同額を想定。

目次

Identity

KFS(Key Factor for Success = 重要成功要因)

創業来127年にわたり培ってきた「コア技術」を活かした戦略と新規市場の開拓能力

 1895年に消火器の製造・販売からスタートした丸山製作所は、国内子会社及び関連会社5社、海外子会社5社で構成される農林業・工業機械メーカーです。防除機や林業機械などの「農林業用機械」を事業の柱に、高圧ポンプや高圧洗浄機などの工業用機械、消防機械をはじめとするその他の機械を製造・販売。加えて、不動産賃貸事業も展開しています。また近年、新規分野として、強みのポンプ技術を活かしたウルトラファインバブル製品の拡販活動が好調です。

 同社の対面市場の世界的な課題として、農家の高齢化や人手不足が挙げられます。日本でも、2010年に260万人だった農業就農人口は、2019年には168万人にまで減少。うち65歳以上が118万人と約7割を占め、平均年齢は67歳に到達しています。しかし、雇用総数における農業労働人口は多くの国で減少しているにも関わらず、世界の穀物消費量は途上国の人口増や所得水準の向上を要因に増加傾向で推移。少ない人数でこれまで以上の農地を管理する必要があるため、農業の効率化と生産性向上のニーズは世界的に高まっています。

 こうした中、同社の売上高で7割以上を占める「農林業用機械」の品質の高さとアフターフォローは国内市場で確固たるポジションを築いています。また海外戦略を積極的に展開しており、海外売上高比率を2022年9月期の27.2%から、2027年9期には35%を目標としています。

Performance:全体業績

経営環境

 同社が対面する市場環境は、新型コロナウイルス感染症の影響による経済活動の制限と緩和が繰り返される中、世界経済の回復を背景に製造業の収益が改善し、設備投資が増加傾向となるなど、持ち直しの動きが見られますが、原油などの資源価格の高騰もあり、景気の先行きについては不透明な状況で推移しています。2023年9月期2Q時点の同社グループが主力とする農林業用機械業界については、国内では資材調達の遅れなどにより出荷・生産実績は減少し、海外においても各国の金融引き締め、欧米における一部金融機関の破綻など、世界経済の減速により出荷・生産実績は減少しています。

 このような状況の中、同社グループは、国内において、エリアマネジメントを強化し、強みであるポンプ技術、エンジン技術、ウルトラファインバブル技術を活かした製品を拡充し、新しい市場を積極的に開拓しました。

 また、お客様満足度の向上を目的としてアフターサービス担当者の育成と各事業所及び営業所の環境整備を実行し、丸山グループ全体でアフターマーケット事業への取り組みを強化しました。

 海外においては、現地を訪問する営業活動を再開しつつ、強みである農林業用機械やウルトラファインバブル製品などの拡販活動を積極的に展開しました。

 これらの結果、国内におきましては、アグリ流通において大型機械やセット動噴が減少しましたが、ホームセンター流通において刈払機が増加し、その他の機械において防災関連部品が増加した結果、国内売上高は13,234百万 円(前年同四半期比2.2%増)となりました。

 また、海外におきましては、欧州向けの刈払機は減少しましたが、北米向けの工業用ポンプが増加した結果、海外売上高は5,196百万円(前年同四半期比3.2%増)となり、当第2四半期連結累計期間の売上高合計は18,431百万円(前年同四半期比2.5%増)となりました。

 利益面では、一部製商品の値上げを実施しましたが、原材料費の高騰による売上総利益率の悪化や販売費及び固定費の増加などにより、営業利益は425百万円(前年同四半期比34.8%減)、経常利益は424百万円(前年同四半期 比40.3%減)となり、親会社株主に帰属する四半期純利益は378百万円(前年同四半期比27.1%減)となりました。

2022年9月期決算の概要

P/L

2022年9月期は「増収増益」。また、2023年9月期2Qは「増収減益」だが、通期予想では引き続き「増収増益」を想定。

2022年9月期のP/Lは、「増収増益」です。

 国内売上高は28,868百万円(前期比2.5%減)です。また、海外は、北米、欧州向けの工業用ポンプや、中南米を中心に刈払機の売上が増加した結果、海外売上高は10,771百万円(前期比36.3%増)となり、売上高合計は39,639百万円(前期比5.7%増)となりました。なお、売上高構成比率は「国内72.8%」/「 海外27.2%」となっています。

 利益面では、原材料費の高騰による売上総利益率の悪化はありましたが、売上高の増加に伴う売上総利益の増加などにより、営業利益は1,521百万円(前期比9.7%増)、経常利益は1,635百万円(前期比25.6%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は1,158百万円(前期比35.3%増)となりました。

 尚、直近決算の2023年9月期2Qは「増収減益」ですが、通期予想では製商品の更なる値上げなど上期における課題に対して必要な利益対策を講じることで「増収増益」を想定しています。

B/S

B/Sでは、自己資本比率は31.9%から28.7%へと推移。また、2023年3月期2Q決算においては26.5%へ。ROEは5.7ポイントUPして17.0%へと上昇!

 B/Sでは、総資産は305百万円増加して34,459百万円、純資産は710百万円増加して17,699百万円へと推移しています。 

 流動資産は22,615百万円で、751百万円増加しました。これは主に現金及び預金の増加(529百万円)、電子記録債権の増加(277百万円)、原材料及び貯蔵品の増加(414百万円)によるものです。固定資産は11,844百万円となり、305百万円減少しました。これは主に投資有価証券の減少(542百万円)によるものです。

 一方、負債総額は16,759百万円となり405百万円減少しています。流動負債は14,293百万円で、464百万円減少しました。これは主に1年内返済予定の長期借入金の減少(3,085百万円)によるものです。固定負債は2,466百万円となり58百万円増加しました。これは主に社債の増加 (40百万円)によるものです。

 純資産総額は17,699百万円となり、710百万円増加しました。これは主に、親会社株主に帰属する当期純利益を計上したことなどによる利益剰余金の増加(962百万円)によるものです。この結果、自己資本比率は1.4ポイントUPし、51.1%へと推移。また、直近の2023年9月期2Q決算でも50.1%と高い財務の健全性を示しています。

 ROEは1.5ポイントUPして6.7% で、経営効率を示す指標も改善しています。

C/F

フリーキャッシュフロー、および現金及び現金同等物期末残高ともに前期比でプラス推移!

 フリーキャッシュフローは、866百万円から1,632百万円へとプラス推移しています。また、現金及び現金同等物期末残高についても、4,012百万円から4,658百万円となりました。         

 なお、各キャシュフローの状況では、営業活動によるキャッシュフローは、その他に含まれる未収入金の減少などで、2,259百万円(前期比331百万円増)となりました。 投資活動によるキャッシュフローは、有形固定資産の取得による支出の減少などにより、627百万円(前期比433百万円減)となりました。財務活動によるキャッシュフローは、短期借入金は増加したものの長期借入金が減少したことなどにより、1,114百万円(前期比115百万円増)となりました。

株主還元

前年同期比で12円増配の55円を実施! 2023年9月期も同額を想定。

 株主還元は、1株当たり12円増配の55円の期末配当を実施。また、2023年9月期においても同額の配当金額を想定しています。

2023年9月期の見通し

 今後の見通しは、半導体不足や原材料費高騰に加え、エネルギー問題や大幅な円安、ウクライナ情勢の長期化等の影響により、国内外にて先行きの不透明感が増しています。また、国内では、政府の農業政策の変化、異常気象の影響など、海外では各国の政策の不確実性の影響、為替変動などにより、同社グループの事業を取巻く環境は大きく変動しています。同社グループは「利益率の向上」、「新規事業の確立」、「海外事業の成長」、「既存事業のさらなる成長」、「財務体質、リスク管理、人財育成の強化」を重点課題として取り組み、引き続き収益力の向上と企業体質の強化に努めていく考えです。

 2023年9月期の業績予想は、連結売上高40,000百万円、連結営業利益1,800百万円、連結経常利益1,750百万円、親会社株主に帰属する当期純利益1,200百万円を見込んでいます。

2023年9月期の見通し(※2023年9月期2Q時点)

  • 売上高  :40,000百万円(前期比2.9%増)
  • 営業利益 :1,800百万円(前期比18.3%増)
  • 経常利益 :1,750百万円(前期比7.0%増)
  • 親会社株主に帰属する当期純利益:1,200百万円(前期比3.6%増)

Performance:セグメント別業績

 同社グループは、「農林業用機械」と「工業用機械」、「その他の機械」、「不動産賃貸他」の4セグメントです。

 2022年9月期の国内売上高は、工業用ポンプの売上が好調でしたが、大型防除機や動力噴霧機の売上減少に伴い、2.5%DOWNの288億6千8百万円の着地でした。一方、海外は、36.3%UPの107億7千1百万円です。

 セグメント別を見ていきましょう。

「農林業用機械」の売上高は前期比1.9%UP、営業利益は前期比39.4%DOWN

「工業用機械」の売上高は前期比28.5%UP、営業利益は前期比56.6%UPと大幅に増加

「その他の機械」の売上高は前期比1.5%DOWN、営業利益は前期比9.4%UP

「不動産賃貸他」の売上高は前期比1.2%DOWN、営業利益は前期比15.5%UP

 以上となりました。

 現在同社グループでは、国内のエリアマネジメントを強化し、強みであるポンプ技術、エンジン技術、ウルトラファインバブル技術を活かした製品を拡充し、新しい市場を積極的に開拓しています。また海外では、現地を訪問する営業活動を再開しつつ、強みである農林業用機械やウルトラファインバブル製品などの拡販活動を積極的に展開しています。

ESG Elements:環境・社会・ガバナンス

 SDGsの認識浸透とともに、ESG項目は企業の成長可能性をはかる視点のひとつになりつつある中、同社では「SDGsに繋がるESG経営の強化」および「社会貢献型企業として成長市場に進出」というテーマを長期経営ビジョンとして掲げています。また、目標として「食・水・環境分野の社会課題解決」、「CO2排出量50%削減」、「女性管理職7名」を設定し、サステナビリティを実現するESG経営を目指しています。

Environment(環境)

 環境関連では、CO2排出量削減への取り組みとして、当社メイン工場である千葉工場および子会社の電力を、 再生可能エネルギー由来の電力へ変更し、自社内で発生するCO2排出量の約30%を削減しています。最終的には全拠点に展開していく方針です。

Social(社会)

 社会関連では、「採用者に占める女性の割合を 30%以上」と「全社員の有休取得率を 75%以上」という労働慣行におけるKPI目標を掲げています。

Governance(ガバナンス)

 コーポレート・ガバナンスの体制は、社外取締役が37.5%です。また、女性役員は居ません。

Plan 中期経営計画

 同社は、ポンプ技術、2サイクルエンジン技術をコアとして、生産性、安全性、快適性の向上を目指した製品、サービスを提供することにより、創業以来、社会貢献してきました。その間、持ち続けてきた社是「誠意をもって人と事に當ろう」という不変の精神をベースとして、コア技術をさらに深めながら新しい用途開発を追求・開発し企業価値の向上に努めてきています。

 現在推進中の「第8次中期経営計画」において、売上高480億円、営業利益28億円、ROE(自己資本利益率)7.5%以上を掲げ、成長戦略の推進と収益力の向上に努めています。

 計画の基本方針である「成長事業の創出」に向けて、5項目を重点課題としてESG経営の強化を目指しています。

 さらに、「販売部門」のアジア市場へのリソース拡大や海外売上比率35%、「生産部門」のウルトラファインバブル技術の進化とスマート農業の促進、「管理部門」では収益力向上・財務体質強化など、部門毎に目標を明確化した進捗管理を行っています。

Out Look まとめ

 丸山製作所は、農業の「効率性と生産性、安全性向上ニーズ」という課題に対して、創業来127年にわたり培ってきた「コア技術」を活かした戦略を展開し企業成長を可能としています。同社の確かな視点は、間違いなく「◎」です。

★注目の「農業機械」「林業」「ポンプ」「防災」テーマ株

井関農機(6310)
農業機械専業大手。稲作向け比率大。コンバイン・田植機に強み。農業施設も。

やまびこ(6250)
農林業機械首位。共立、新ダイワ工業が統合。刈払機等小型屋外作業機拡充。

タカキタ(6325)
飼料系農機が主体。風力発電軸受も。クボタ、井関、ヤンマーと連携。

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