「DX・グループウェアテーマ」ネオジャパン

今回は、「グループウェア」「クラウドコンピューティング」「ソフト・システム開発」「DX」などの「株テーマ」関連から株式会社ネオジャパン(3921) です。
Key Points
- 高い技術力が可能とするソフトウェアの「自社開発力」と常に新しい技術やサービスを開発する「企業姿勢」が強み。
- 2023年1月期は11期連続の「増収」だが、成長への経費投資の増加や子会社売上減少により「減益」。2024年1月期については、1Qで過去最高の「増収増益」を達成したが、通期では広告宣伝費の増加に伴い「増収減益」を想定。
- 株主還元においては、上場来増配を継続中で2023年1月期の1株当たり配当金額は20円を実施。さらに2024年1月期は、3円増配して1株当たり23円を見込む。
目次
Identity
企業能力 KFS(Key Factor for Success = 重要成功要因)

今日の企業経営において、DX戦略は重要な経営課題のひとつと認識されています。ネオジャパン(3921)は、創業から30年にわたって成長を継続しているビジネスICTツールのリーディングカンパニーです。
グループウェア「desknet’s NEO」やビジネスチャット「ChatLuck」などのソフトウェア開発を主な事業に、11期連続の増収を達成し、上場来増配を続ける東証プライム上場企業です。 また、社長自身も現役のエンジニアであることから、新卒からマンツーマンで育てるという独自の人財育成方針を貫いており、エンジニア比率は約52%(2023/01末)と業界トップクラスです。

同社は、高い技術力が可能とするソフトウェアの「自社開発力」と常に新しい技術やサービスを開発する「企業姿勢」が特徴です。ソフトウェア製品における自社ソフトウェアの優位性は、主力製品「desknet’s NEO」や「AppSuite」における堅調な販売実績に示されています。同社は、484万人ユーザーへのソフトウェア導入、全国18/47都道府県庁への販売実績(2023年3月末現在)を誇ります。
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また、組織内コミュニケーションの基盤となる同社のビジネスチャット「ChatLuck」と「ChatGPT」との連携により「チームとAIとの協働」を実現するアップデートを発表するなど、同社のビジネス展開には注目が集まっています。

Performance:全体業績
経営環境と同社の動向
2023年1月期は、新型コロナウイルス感染症による影響を受けながらも徐々に経済社会活動の制限が緩和され、景気は緩やかに持ち直しの動きがみられました。しかしながら、ウクライナ情勢の長期化、エネルギー価格や原材料価格の高騰、世界的な金融引き締めによる急激な為替変動など、先行きが不透明な状況が継続しています。またIT業界においては、政府によるデジタルトランスフォーメーション(DX)の推進や継続的な働き方改革への取り組みに関連し、生産性向上のためのIT投資が継続するものと想定されます。
トピックス① 製品のリリース
2022年3月に、組織内のテレワーク状況を可視化する「プレゼンス」機能を搭載したdesknet’s NEOバージョン7.0をリリース。2022年7月には、ビジネスチャットChatLuckのバージョン5.0をリリースし、リアクション機能を新たに追加するとともにSAML認証に対応し、利便性の向上を図っています。2022年9月には、ノーコード業務アプリ作成ツールAppSuiteにプラグイン機能を追加し、手書き入力やリアクションなどの拡張部品を利用可能としたdesknet’s NEOバージョン7.1をリリースしました。
さらに、2023年1月に「トピック」機能等を新たに追加したChatLuckバージョン5.5を、さらに3月20日には、利用ユーザーの声を受け15機能・50項目以上の機能改善したdesknet’s NEOバージョン7.5をリリースしています。。
トピックス② アワード受賞
2022年3月に、法人向けIT製品・サービス比較サイト「ITトレンド」が選出する「ITトレンド GoodProduct」にdesknet’sNEOが選出されました。また、2023年1月には、IT製品比較・レビューサイト「ITreview」主 催の「ITreview Grid Award 2023 Winter」で、同社の主力ソフトウェア3製品がアワードを受賞(グループウェア「desknet’s NEO」は16期連続、ビジネスチャット「ChatLuck」は10期連続、ノーコードアプリ作成ツール「AppSuite」は初受賞)。また、健康経営に取り組む法人として「健康経営優良法人(大規模法人部門)」に4年連続で認定を受けています。
【2022年3月】
法人向けIT製品・サービス比較サイト「ITトレンド」が選出する「ITトレンド GoodProduct」にdesknet’sNEOが選出
【2023年1月】
IT製品比較・レビューサイト「ITreview」主催の「ITreview Grid Award 2023 Winter」で、同社の主力ソフトウェア3製品がアワードを受賞(※グループウェア「desknet’s NEO」は16期連続、ビジネスチャット「ChatLuck」は10期連続、ノーコードアプリ作成ツール「AppSuite」は初受賞)
【2023年3月】
健康経営に取り組む法人として「健康経営優良法人(大規模法人部門)」に4年連続で認定 (2023年)
トピックス③ 地方自治体のDX推進をサポート
2022年11月に、横浜市が募集した民間企業のデジタル技術を活用して行政サービスのDX化を進めるプロジェクト「YOKOHAMA Hack!」の第一回実証実験事業者に選定され、同社のノーコードアプリ作成ツール「AppSuite」およびグループウェア「desknet’s NEO」を活用し、横浜市と共同で「要配慮施設利用者の安全を守る避難確保計画の取組強化」の実証実験を開始しました。実証実験を通じて、災害時の避難確保計画の実効性の向上、避難訓練実施の実施率の向上、施設管理者や市担当課の作業負担の軽減等の実現に貢献するよう努めています。なお結果として、システム化により作業工数を41%削減できており、同社製品の有益性を物語っています。
2023年1月期~2024年1月期直近決算概要
P/L
2023年1月期は「増収減益」だが、2024年1月期1Qでは過去最高の「増収増益」を達成!
2023年1月期は「増収減益」でした。ソフトウェア事業の業績は堅調に推移しましたが、システム開発サービス事業においては、3Q期間まで主要顧客の体制縮小や退職等の影響により売上高の減少が継続しました。海外事業においては、米国子会社において新サービスの開発に注力し、関連する投資が増加しました。また、次年度において認知度向上のための広告宣伝費の増加等による課税所得の減少が見込まれることにともない、繰延税金資産の取崩し等を行い税金費用が増加しました。これらを主な要因として、売上高は60億7百万円(前年同期比1.5%増)、営業利益は12億4千1百万円(前年同期比0.5%減)、経常利益は13億3千5百万円(前年同期比1.9%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は8億1千2百万円(前年同期比6.2%減)となりました。
一方、直近決算の2024年1月期1Qでは、「増収増益」に転じています。売上高は16億4千5百万円(前年同期比9.9%増)と過去最高を更新。また利益面では、営業利益は3億9千3百万円(前年同期比27.2%増)、経常利益は4億1百万円(前年同期比22.5%増)、親会社株主に帰属する四半期純利益は2億6千9百万円(前年同期比21.9%増)と二桁の「増益」を達成しています。

なお、今期増加予定の広告宣伝投資3億円は、製品・サービスの認知度向上を目的として、1億5千万円をテレビコマーシャルで2Q期間中に消化する計画です。残りの1億5千万円は、3Q期間での実施を考えています。

Performance:セグメント別業績
ネオジャパンの事業は、「ソフトウエア事業」「システム開発サービス業」「海外事業」の3つで構成されています。
売上高約70%を占めるソフトウエア事業では、主力製品「desknet’sNEO」をはじめとした自社製品のクラウド提供、パッケージ製品としてのライセンス販売、および関連する役務作業を提供しています。また、システム開発サービス事業は、主に取引先に常駐して、システムの企画開発から保守・運用まで一貫して請け負う業務を子会社で手掛けています。
海外事業については、中長期的な成長を見据え、グローバルネットワークの構築を進めており、米国、マレーシア、タイ3拠点に展開する海外子会社の事業で構成されています。

2023年1月期における「事業セグメント別」の売上高の状況は、構成比率70.1%を占める「ソフトウエア事業」が7.2%UPでしたが、「システム開発サービス」は10.3%DOWN、「海外事業」は、各拠点における内部取引の減少の影響により、61.0%DOWNとなっています。

B/S
総資産および純資産ともに増加。自己資本比率は0.5ポイントUPし71.2%へと推移。また、ROEは3.1ポイントDOWNし15.0% だが、国内水準以上を維持。
B/Sでは、総資産が10.1%増加し、80億2千5百万円。純資産は11.5%増加の57億2千7百万円となりました。この結果、自己資本比率は0.5ポイントUPして71.2%へと推移しています。高い財務の健全性を確保しており、将来に向けた成長戦略への備えも整っています。
また、ROEは3.1ポイントDOWNですが、15.0% と国内水準以上を維持しています。

C/F
フリーキャッシュフローは7億8千1百万円から10億1千6百万円へとプラス推移!
フリーキャッシュフローは、7億8千1百万円から10億1千6百万円へとプラスで推移しています。各キャシュフローの状況では、営業活動によるキャッシュ・フローは、11億9千万円(前年度は11億7百万円の収入)となりました。

株主還元
2023年1月期の一株当たり配当金額は、20円を実施。2024年1月期の配当計画は、株主優待制度のコスト見合い(1.5円)にさらに1.5円を加えた3円増配を見込む。
同社は上場来増配を継続しており、今後も継続して増配を目指しています。2023年1月期の一株当たり配当金額は20円(配当性向36.7%)を実施しています。
また、2024年1月期の配当は、株主優待制度のコスト見合い(1.5円)にさらに1.5円を加えた3円増配の1株当たり23円を計画。中期的には、2026年1月期に1株当たり31円(配当性向約40%)を目標としています。

2024年1月期の見通し
同社の2024年1月期は、売上高6,359百万円(前年同期比5.9%増)、営業利益937百万円(前年同期比24.4%減)、経常利益951百万円(前年同期比28.8%減)、親会社株主に帰属する当期純利益629百万円(前年同期比22.6%減)を見込んでいます。
売上高については、主にソフトウェア事業におけるクラウドサービス及びシステム開発サービス事業の売上高が増加する計画です。ソフトウェア事業のクラウドサービスにおいては、月額売上高で約9%の増加を見込んでいます。主力サービスである「desknet’s NEO」クラウド版もおおむね同程度の伸びを想定しています。しかしながら、月額売上高が増加するに従い売上高の成長率が低下してきており、この主な要因の一つが競合サービスに対する当社製品・サービスの認知度の低さとみられます。これに対応するため、2023年1月期4Qには、タクシー広告や一部地域でテレビコマーシャルを実施しました。また2024年1月期には、テレビコマーシャルなど製品・サービスの認知度を向上させるための投資を増加させる計画です。これらの広告宣伝費の増加や従来以上の賃上げを見込むことなどによる人件費の増加により、2024年1月期の営業利益以下の各利益については減益となる計画です。
2024年1月期の見通し(※2024年1月期1Q時点)
- 売上高 :6359百万円(前期比5.9%)
- 営業利益 :937百万円(前期比△24.4%)
- 経常利益 :951百万円(前期比△28.8%)
- 親会社株主に帰属する当期純利益:629百万円(前期比△22.6%)
これらの理由により、2024年1月期の営業利益は減益となりますが、2024年1月期を底にして、2026年1月期には売上高7,875百万円、営業利益1,695百万円を中期業績目標として計画しています。配当計画においても、2026年1月期に1株当たり31円(配当性向約40%)を目標としています。

ESG Elements:環境・社会・ガバナンス
同社では、SDGsおよびESGを重視したサステナブル経営を推進する上で、グループの「サステナビリティ基本方針」のもとに、9つのマテリアリティ(重点課題)を特定しています。

Environment(環境)
環境関連では、地球環境温暖化防止に向けてCO₂排出量削減に取り組んでおり、電力・廃棄物排出・紙購入量等、オフィス環境にターゲットを絞った目標に定めて取り組んでいます。
Social(社会)
社会関連データでは、「労働慣行」および「人材の確保と定着」の視点でのデータが公表されており、同社の働きやすい職場づくりに対する企業姿勢が伺えます。
Governance(ガバナンス)
ガバナンス体制では、同社の社外役員比率は10名中5名と半数の50%です。また、女性役員は2名、20%となっています。
Plan 中期経営計画
同社は、「リアルなITコミュニケーションで豊かな社会形成に貢献する」ことを経営理念として掲げており、一部の先進企業だけでなく、すべての企業にすぐれたITのメリットを提供することを目指しています。

また同時に、「継続した成長を目指した製品開発」、「クラウドサービスの拡大と全国展開による国内販売」、「ノーコード開発ツール「AppSuite」を中心としたクロスセル」、「グローバル市場への新たな取り組みとしての海外販売」という4つの成長戦略を積極展開することで、将来に向けた企業成長を確かなものにしていく考えです。
ノーコード開発ツールは国内市場規模が拡大傾向!
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Out Look まとめ
ネオジャパンは、今後もグループウェアやビジネスチャットなどの分野で成長していくことが期待されます。
一方で、国内の多くの企業にソフトウェアを導入していますが、同業他社と比べて一般的な知名度は高くありませんし、海外展開もまだまだこれからです。
しかし、製品・サービスの認知度を向上させるための広告宣伝活動を積極的に推進させており、徐々に認知度は向上していくものと思われます。加えて、ノーコード市場向け製品AppSuiteが高いポテンシャルを秘めており、中期的にユーザー数をdesknet’s NEOのユーザー数対比30%以上(150万ユーザー相当)まで拡大することを目標にするなど、主力成長事業のひとつと考えています。
同社は、独自のソフトウェアの「自社開発力」と常に新しい技術やサービスを開発する「企業姿勢」を武器に、AIを活用した新しいグループウェアの形態を模索するなど、積極的に新たなフェーズに挑んでいます。こうした同社の果敢にビジネス展開する攻めの姿勢は間違いなく「◎」です。