「不動産情報サイト・不動産テックテーマ」ファーストロジック
今回は、「不動産情報サイト」「不動産投資」「不動産テック」「空き家対策」などの株テーマ関連から、株式会社ファーストロジック(6037)です。
Key Points:
- 2022年7月期は「増収増益」。各利益においては「二桁増益」を達成!さらに、2023年7月期も「増収増益」を見込む。
- 株主還元においては、年間配当金額が10円から11円へと1円増配。2023年7月期にはさらに増配の14円を想定。
- 「公正な不動産投資市場を創造する」というビジョンのもと、誰でも安心して不動産投資情報と向き合える不動産投資専門プラットフォーム「楽待」を展開。サービスにおける「会員数の増加」と「不動産会社の数およびシェアの確保」がポイント!
目次
Identity
★企業能力 KFS(Key Factor for Success = 重要成功要因):
国内最大の不動産投資情報プラットフォーム「楽待」を運営
2015年2月に上場した株式会社ファーストロジックは、「公正な不動産投資市場を創造する」というビジョンを掲げています。同社は、不動産投資専門プラットフォーム「楽待」を会員向けに運営することで、「不動産投資家の支援」、「不動産業界の健全化」、「不動産情報の透明性向上」を追求した不動産関連ビジネスを展開しています。
同社が運営する「楽待」は、投資用不動産に特化した国内最大の不動産投資専門プラットフォームです。初心者からプロまで幅広い方々に、不動産投資の学習、収益物件探し、収益物件の購入から売却までを効率的に行えるサービスを提供しています。
この他、不動産投資専門メディア『楽待新聞』を運営し、不動産投資にまつわる正しい知識の普及に努めています。
さらに、YouTubeチャンネルは登録者数42万人超で、総再生回数は2億回を突破。YouTubeをきっかけに「楽待」のサイトを知ったという顧客も多く、オウンドメディアを活用しながらサイトの訪問者数を伸ばしています。
Performance:全体業績
経営環境
2022年7月期の国内経済は、新型コロナウイルス感染症に対する各種政策やワクチン接種普及等により一時持ち直しの動きが見られたものの、オミクロン株の拡大に伴い再び経済活動が抑制される等厳しい状況で推移しました。また、ウクライナ情勢の緊迫化や急激な円安の進行等、依然として先行きは不透明な状況が続いています。一方で、インターネット広告の2021年(1月~12月)の市場規模(注)は前年比21.4%増と拡大しています。
(注)出典 株式会社電通「2021年 日本の広告費」
同社の運営する「楽待」では、有料会員サービス「楽待プレミアム」をリリースし、不動産投資家への有益なコンテンツを充実させ、会員数の増加策を図るとともに、不動産会社への営業強化を行っています。
また、「楽待公式YouTube チャンネル」においては、わかりやすく不動産投資に関する情報を配信しています。このほかにも、不動産投資に特化したQ&Aサービス「楽待相談室」を開発。賃貸経営に関する不安や疑問を解消できるサービスを提供し、会員の増加や「楽待」の利用価値の向上を図っています。
2022年7月期決算の概要
・P/L
P/Lは「増収増益」。利益面においては二桁の「増益」を達成!
2022年7月期は「増収増益」でした。売上高は前年同期比 9.3%の「増収」、利益面では、営業利益25.3%、経常利益25.3%、当期純利益37.8%といずれも二桁の「増益」です。
また、2022年7月期時点のページビュー(PV)数は1億3,859万2千PV(前期比1.1%増)、「楽待」ウェブサイト会員数は31万2千人(前期比18.3%増)、物件掲載数は5万1千件(前期比1.4%増)となっています。
なお、直近の2023年7月期3Qでも前年同期比「増収増益」を達成しており、通期業績も5月に上方修正されているように、着実な業績が想定されます。
・B/S
B/Sでは、自己資本比率は1.4ポイントUPして92.8%へと推移。また、ROEは対前期比3.5ポイントUP して16.6%へと上昇!
B/Sでは、総資産が10.0%増加し47億5百万円。純資産も11.6%増加の43億6千4百万円となりました。この結果、自己資本比率は1.4ポイントUPして92.8%へと推移しています。非常に高い財務の健全性を確保しており、将来に向けた成長戦略への備えも整っています。
また、ROEは3.5ポイントUPしており、16.6% と国内平均水準以上を維持しています。
・C/F
フリーキャッシュフローはプラス推移、また、現金及び現金同等物期末残高も増加!
2022年7月期におけるフリーキャッシュフローは、5億7千3百万円から7億6千8百万円へとプラス推移しており、現金及び現金同等物期末残高も、前年同期比で5億2千9百万円増加しています。
営業活動の結果得られた資金は、6億7千2百万円となりました。これは主に税引前当期純利益10億1千2百万円を計上した一方で、法人税等の支払額3億3千4百万円が生じたこと等によるものです。
投資活動の結果得られた資金は、9千6百万円となりました。これは主に敷金及び保証金の回収による収入 1億6千1百万円が生じた一方、有形固定資産の取得による支出2千5百万円及び無形固定資産の取得による支出3千8百万円が生じたこと等によるものです。
財務活動の結果使用した資金は、2億4千万円となりました。これは自己株式の取得による支出1億2千9百万円及び配当金の支払額1億1千万円が生じたことによるものです。
・株主還元
前期比1円増の11円配当を実施。配当性向は17.7%!
株主還元においては、前期の10円から1円増額して1株当たり配当は11円を実施しています。配当性向は、22.5%から17.7%へと4.8ポイントDOWNしています。なお、2023年7月期には14円を予定しています。
Performance:セグメント別業績
ファーストロジックの事業展開は、不動産投資のプラットフォーム運営の単一セグメントです。 同社の運営する「楽待」は、主に個人の不動産投資家層を対象にマンション、アパートおよび戸建住宅などの収益不動産の物件情報を提供しています。
ユーザーは家賃収入を増やすために一度物件を購入した後も、自主的に「楽待」で物件を探すため、ユーザーの集客コストが他の不動産ポータルサイトと比べてかかりません。
また、不動産投資には、学習・物件購入・購入後の管理や売却など、多様なフェーズが存在します。「楽待」は、不動産投資家が従来行ってきた業者とのやり取りの負担を軽減し、あらゆる場面に対応するワンストップサービスを提供することで、継続的に使ってもらえる仕組みを作っています。
売上の柱である「物件掲載サービス」は、楽待のサイト上に投資物件の広告を載せて集客できるSaaS型の収益モデルです。2007年にリリースし、2023年8月現在では、約5万9000件の物件が掲載されています。
有料会員サービス「楽待プレミアム」では、有料会員限定のコンテンツ発信の他、会員限定機能の提供なども行っており、順調に会員数を伸ばしています。このサービスはサブスクリプション型の新サービスで、ストック収益の積み上げが期待されます。
一方、顧客となる不動産会社等に対しては、ChatGPTを活用した自動生成機能を無料で提供するなど、不動産業界のDX化を進めています。
ESG Elements:環境・社会・ガバナンス
SDGsの認識浸透とともに、ESG項目は企業の成長可能性をはかる視点のひとつになりつつあります。同社は、「公正な不動産投資市場を創造すること」というビジョンのもと、プラットフォーム「楽待」を通して社会貢献を目指しています。
Social(社会):
社会関連では、特に、「楽待」を通じた空き家の売買活発化や、不動産投資市場DX化の推進など、社会課題に対応しています。
また、人事採用のユニークな事例に「将棋選考」の開催があります。これは選考希望者がプロ棋士と対局し、勝てば一部選考が免除されるというユニークな選考です。2023年1月に初めて実施し、棋力の高い13名が参加して1名内定が出ています。
将棋は、一手二手先を読むロジカルシンキングが必要な競技です。その思考力は働く上でも大切な能力であり、社名「ファーストロジック」に込めた「最初に論理的思考を」という思いと共通することから2017年から、日本将棋連盟が主催する「全国オール学生将棋選手権戦」の協賛を行っています。
Governance(ガバナンス)
ガバナンス体制では、同社の社外役員比率は66.7%、6名中4名と半数を超えています。なお、女性役員はいませんが、2023年8月22日公表の「次期の役員体制に関するお知らせ」では、社外取締役候補として新たに2名を選出、内1名は女性となっており、ガバナンスにおける多様性も視野に入れているようです 。
(選出の2名)
馬渕磨理子氏:日本金融経済研究所の代表理事で、多数のメディアに出演する経済アナリスト。
林隆弘氏:AI技術を活用したサービスの企画・開発・運用で知られるHREOZ株式会社の代表取締役CEO
Plan:2023年7月期の経営方針
楽待の登録会員は右肩上がりで増加しており、「貯蓄から投資へ」と気運が高まる中、不動産投資のニーズは今後も増加するものと考えられます。現在同社では中期経営計画を公表していませんが、①「楽待の認知度を高め、No.1 シェアをさらに拡大」、②「加盟店および楽待プレミアム会員獲得による業績予想の達成」、③「楽待プレミアムサービス拡充」、④「(これらを遂行するため)積極的な採用活動」の4つを2023年7月期の経営方針として掲げています。
また、有料会員サービスの楽待プレミアムについては、2024年7月期における売上高で1億円を目指しています。また、主要サービスの値上げも行っており、今後も着実な成長が見込まれます。
Out Look:まとめ
ファーストロジックは、今後も不動産投資分野におけるマーケットリーダーとして成長が期待されます。
また、不動産会社と投資家間で情報格差が大きい不動産業界の課題に対して、プラットフォーム「楽待」を通じて、誰でも安心して不動産投資に取り組める社会の実現を目指す同社の企業姿勢には熱意を感じます。
現在、ファーストロジックの「会員数」と「加盟店舗数」は、独自の成長戦略により確実に増加傾向を示しています!こうした同社の果敢にビジネス展開する攻めの姿勢は間違いなく「◎」です。
その他注目の「不動産情報サイト」「不動産テック」関連のテーマ株
LIFULL(2120)
不動産情報検索サイト「HOME’S」を運営。物件掲載数は業界最多。海外展開も。
ニフティライフスタイル(4262)
大手不動産サイトの比較サイト検索や温泉比較検索サイトを展開。求人比較サイトも。