IR(独自企業分析)

「鉄道関連、ホテル、百貨店、バス テーマ」京王電鉄(9008)

 今回は、陸運業から【鉄道関連】【ホテル】【百貨店】【バス】などの株テーマに関連する、京王電鉄株式会社(9008)を取り上げます。

Key Points

  • 東京都と神奈川県という国内有数の経済圏に6路線を展開。また、長期的視点での街づくりと多角的ビジネス展開で地域との信頼関係を構築していることが優位性。
  • 直近2024年3月期3Q決算は「増収増益」、利益面ではすべての項目が二桁以上の増益。
  • 自己資本比率は0.1ポイントUPし36.9%へと推移。
  • 2024年3月期の年間配当は52.5円(中間配当22.5円、期末配当30円)を想定

目次

Identity

企業能力 KFS(Key Factor for Success = 重要成功要因)

 東京都と神奈川県という国内有数の経済圏に6路線を展開。また、長期的視点での街づくりと多角的ビジネス展開で地域との信頼関係を構築していること

 1910年に設立された京王電鉄は、東京都と神奈川県で路線網(京王線、高尾線、相模原線、競馬場線、動物園線、井の頭線)6路線を運営する鉄道会社です。最初の路線展開は、今から100年以上前の1913年で、京王線「笹塚⇆調布」路線を開業しています。

 現在では、「運輸業」に加えて「流通業」「不動産業」「レジャー・サービス業」「その他業」を事業展開しています。

 京王電鉄の優位性は大きく3つあります。

  1. 魅力ある沿線資源(事業エリア)です。

 東京都と神奈川県の都心部と郊外を結ぶ路線が多く「沿線人口:約330万人」「1日の乗降人員:303万人」と同社の交通ネットワークが広がる沿線地域は国内有数の人口を誇る経済圏です。

  1. 沿線からの信頼感(社会関係資本)です。

 鉄道事業のほか、不動産事業、ホテル事業、レジャー事業など、多様な事業展開による地域の信頼関係を構築しており、持続可能な地域の実現を目指しています。

  1. 長期視点のまちづくり(ビジネスモデル)です。

 移動需要創出や生活サービスの提供および地域への安定的な交通サービスの提供を行い、時代ニーズに対応しています。具体的には、過去最大規模のまちづくりである「新宿駅西南口地区開発計画」、リニアの開業が予定されている橋本エリアなど、長期視点での再開発を通じて「点ではなく面」での沿線での街づくりを推進していく方針です。

Performance:全体業績

 同社グループでは、大規模投資期を見据えた財務基盤づくりをはじめとした経営基盤の強化や、「まちづくり」による新たな移動需要の創出など、社会の変化に対応した事業構造変革の取組みを進めています

2024年3月期3Q決算の概要

P/L
直近2024年3月期3Qは「増収増益」、利益面ではすべての項目が二桁以上の増益。

 こうした中、2024年3月期3QのP/Lは「増収増益」でした。営業収益(=売上高)はすべてのセグメントで増収となり、前年同期比16.7%増でした。収益面でもその他を除くセグメントで大幅に改善し、営業利益は109.7%増、経常利益106.5%増、最終利益99.3%増となりました。

B/S
総資産および純資産ともに増加。結果、自己資本比率は0.1ポイントUPし36.9%へと推移。

グラフ

自動的に生成された説明

 前期末比で、総資産は、8.3%UPの1兆342億4千9百万円、純資産は、8.8%UPの3,824億6千6百万円となりました。自己資本比率は0.1ポイントUPして36.9%へと推移しており、財務基盤の改善状況が伺えます。

株主還元
2024年3月期の年間配当は52.5円(中間配当22.5円、期末配当30円)を想定。

 株主還元については、2Qにおいて中間配当を2.5円増配して22.5円を実施。2024年3月期は、期末配当30円と合わせて年間配当金額52.5円を想定しています。

 また、株主優待乗車券や京王グループ各社の株主優待割引券など、鉄道会社ならではの「株主優待」特典が好評を博しているようです。

2024年3月通期予想も対前年同期比で二桁の「増収減益」を見込む

 なお2024年3月通期決算についても、3Q業績を踏まえて前回公表値の上方修正を想定しています。訪日外国人旅行客の増加や国内需要の回復により、運輸業、流通業、レジャー・サービス業が想定以上に好調に推移するものと見ており、対前年同期比で営業収益は16.4%増、営業利益は97.9%増、経常利益は91.5%増、最終利益105.1%増と二桁の「増収増益」を見込んでいます。

  2023年3月期(実績) 2024年3月期(予想)
営業収益 347,133百万円
(前期比15.8%)
➡ 404,000百万円
(前期比16.4%)
営業利益 21,479百万円
(前期比―%)
➡ 42,500百万円
(前期比97.9%)
経常利益 21,772百万円
(前期比305.7%)
➡ 42,500百万円
(前期比97.9%)
親会社株主に帰属する当期純利益 13,114百万円
(前期比134.8%)
➡ 26,900百万円
(前期比105.1%)

Performance:セグメント別状況

 同社は、子会社52社および関連会社7社で京王グループを構成しており、「運輸業」「流通業」「不動産業」「レジャー・サービス業」「その他業」と5つのセグメントで事業展開しています。

運輸業

 鉄道事業では、輸送人員の回復および2023年10月の運賃改定などにより、旅客運輸収入が10.6%増(うち定期6.4%増、定期外13.4%増)となりました。バス事業においても、路線・高速などで増収でした。結果、営業収益は11.0%増、営業利益は104.3%増となりました。

流通業

 百貨店業では、食品フロアを中心とした新規顧客取り込みによる売上高増加などにより、増収でした。ストア業では、スーパーマーケット事業およびコンビニ事業が好調に推移し増収でした。結果、営業収益は8.9%増、営業利益は69.0%増となりました。

不動産業

 不動産販売業が、リノベーション物件の売上増などにより増収となった結果、営業収益は15.9%増、営業利益は12.2%増となりました。

レジャー・サービス業

 ホテル業では、訪日外国人旅行客の宿泊需要の取り込みなどにより、「京王プラザホテル(新宿)」や「京王プレッソイン」などの客室単価が、コロナ禍以前を上回る水準まで大きく回復し増収となりました。結果、営業収益は47.2%増、営業利益は黒転しています。

その他 業

 建築・土木業では、2023年5月にNB建設を連結子会社化したことなどにより増収となりました。車両整備業では、受注増などにより増収となった結果、営業収益は11.1%増でしたが、営業利益は粗利益の減少などにより4.1%減でした。

ESG Elements:環境・社会・ガバナンス

 同社グループでは、サステナビリティの視点を踏まえた経営を推進するため、社長を委員長とする「サステナビリティ推進委員会」を設置し、全社方針や推進体制の整備、ESG課題の把握、マテリアリティの設定と目標策定など、サステナビリティに関する審議・決定、および取締役会への報告を義務づけています。

 また、社会課題に対して同社が特定しているマテリアリティは7つ。2023年5月には、「環境基本方針」を改訂するとともに、「人財戦略」を策定しています。

 環境関連では、気候変動に関する取り組みとしてTCFD提言への賛同を表明しており、CO₂排出量削減に取り組んでいます。

 社会関連データでは、「安全・安心」という価値観を守りつつ、様々な経営課題に取り組むため、「必要な人材」と「あるべき組織」を制定し、その実現に向けてDE&I(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン)の観点を重要視しています。

 ガバナンス体制では、社外取締役比率は15名中5名と33.3%。また、女性取締役は1名のみの6.7%です。

 コンプライアンス関連では、重大なコンプライアンス違反は0件、コンプライアンス研修受講率は95.4%と、コンプライアンス(法令遵守)への高い意識が浸透しているようです。

Plan 中期経営計画

 同社では、2025年3月期までの3年間を「稼ぐ力」を取り戻す重要な期間と位置付けています。推進中の3ヶ年の中期経営計画では、2025年3月期にコロナ禍前の85%程度まで利益を回復させるとしていました。

 ところが、2024年3月期通期予想をコロナ禍前の水準まで回復して着地する見込みと上方修正しており、2030年代までに過去最高益を超える水準という目標に向けて順調に推移しています。

 中計では、社会における鉄道会社の存在意義を再度見つめ直し、新しいライフスタイルをけん引する存在として、原点である「まちづくり」に注力し、生活県内での回遊性向上・移動需要の創出を図ることをテーマに掲げています。

 5つの重要施策として、「鉄道事業の安全性・サービス向上」「まちづくりへの注力」「事業構造改革の推進」「稼ぐ力の強化」「強固な経営基盤の整備」を掲げています。

「まちづくりへの注力」では、新宿駅西南口地区開発計画をはじめ、多摩地区河川敷整備(聖蹟桜ヶ丘エリア)、沿線の街の活性化(旧京王プラザホテル多摩を複合施設へ)が計画されています。

「鉄道事業の安全性・サービス向上」では、全車両全駅への防犯カメラの設置やホームドアの全駅整備を掲げています。

Out Look まとめ

 京王電鉄の優位性は、東京都と神奈川県という国内有数の経済圏をベースに、長期的視点での街づくりと多角的ビジネス展開で地域との信頼関係を構築していることです。

 創業以来110年以上にわたり、「生活関連サービス事業者」として独自の優位性を追求し続ける同社の不変の企業姿勢は「「◎」です。

その他注目の「鉄道関連、ホテル、百貨店、バス」テーマ株

【鉄道関連】【ホテル】【百貨店】【バス】

小田急電鉄(9007
新宿拠点で箱根、江ノ島など観光強み。複々線で沿線強化。新宿再開発へ。

東急(9005
東急グループ中核。私鉄最大の乗客数。渋谷など沿線の都市再開発に注力。

京阪ホールディングス(9045
大阪京都間が主力の私鉄。京都観光に強み。中之島線沿線の開発に力。

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