IR(独自企業分析)

「鉄鋼・機会・工作機械テーマ」リックス

みんかぶ編集室
公開)

今回は、「鉄鋼」「機械」「工作機械」「半導体製造装置」「自動車製造装置」「東証再編」「中国関連」「専門商社」「ゴム」などの「株テーマ」に関連する、リックス株式会社(7525) です。

Key Points

  • 産業機械・機器の「メーカー商社」として、商社機能とメーカー機能を有することで、顧客のモノづくりのプロセス全体に対して多機能的に対応する独自の存在感を発揮しており、国内外の産業界大手企業約3,000社の顧客数を誇る。
  • 流体(水、油、ミスト、粉、スラリーなど)を制御する独自コアテクノロジーの蓄積により、オリジナル品(自社製品、ブランド品、PB商品)の収益が全体の収益向上に貢献。
  • 株主還元においては、個別配当性向30%を意識して前期比20円増配の65円を実施。さらに2023年3月期は、連結配当性向40%に引き上げて、年間配当金額110円を想定。

目次

Identity

★企業能力 KFS(Key Factor for Success = 重要成功要因):メーカー商社として独自の「課題解決力」

    • ビジネス:国内外の産業界大手の約3,000社の顧客数を誇る!

    対面業界➡ 鉄鋼、自動車、電子・半導体で売上高の63%。他に、ゴム・タイヤ、工作機械、高機能材、環境、紙パルプなど。

  1. 流体制御技術(水、油、ミスト、粉、スラリー、などの「流体」の動きや熱の移動の現象を把握し制御する技術)を軸に4つの独自技術を活用した自社製品群を展開。①トライボロジー技術、②精密洗浄技術、③高圧液圧技術、④微粒化技術

リックスは、1907年(明治40年)の創業以来、着実な成長を継続しています。現在では、「メーカー商社」という独自のポジションを築いており、 鉄鋼、自動車、電子・半導体など、国内外の産業界大手約3,000社の顧客数を誇ります。

 また、流体(水、油、ミスト、粉、スラリーなど)を制御する独自技術の蓄積によるオリジナル品(自社製品、ブランド品、PB商品)の収益が全体の収益向上に貢献しています。

 同社の強みは、商社機能とメーカー機能を有することで、顧客のモノづくりのプロセス全体に対して多機能的に対応可能なことです。つまり、顧客である大手製造業の生産現場で使用される設備や部品、消耗品などの生産財を取り扱うなど、現場に密着しているため、困りごとやニーズを直接把握し、解決するソリューションを自社の製造部門をはじめ様々な仕入先各社より調達してグローバルに提供可能としています。さらには、仕入先各社の商品のコラボレーションやシステム化の提案など一歩先の解決策を創り出すことができます。いわゆる「課題解決力」が秀でており、産業機械・機器のメーカー商社として高い評価を得ています。

Performance:全体業績

経営環境

 2022年3月期の世界経済は、先進国を中心に回復が見られました 。しかしながら、変異株の流行で新型コロナウイルスの影響が続き、ロシアのウクライナ侵攻により資源価格の高騰に拍車がかかるなど、景気回復の足取りが重くなることが懸念されています。また日本経済は、いったん沈静化したかに見えた新型コロナウイルスの感染が再拡大し、半導体をはじめとする供給制約の長期化や原材料価格上昇による影響を受けたことで、全体としては緩やかな回復となりました。

2022年3月期決算の概要

・P/L:

P/Lでは、売上高は前年同期比11.0%UP、営業利益44.5%UP、親会社株主に帰属する当期純利益50.3%UP!

このような経済環境のなか、中期3ヵ年計画「GP2023」に基づく施策に取り組んだ結果、2022年3月期は、売上高399.6億円(前年同期比11.0%増)、営業利益25.8億円(同44.5%増)、経常利益29.8億円(同42.8%増)、親会社株主に帰属する当期純利益20.5億円(同50.3%増)という結果でした。

※同社では「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を2022年3月期から適用しており、2021年3月期との前年同期比は非公表としています。よって、本文中の前年同期比比較はminkabuが独自分析して記載しています。

・B/S:

 B/Sでは、自己資本比率は2.1ポイントDOWNして56.0%へと推移。また、ROEは対前期比3.1ポイントUPして11.2%へと上昇!

2022年3月期の総資産は、13.3%増加して341.8億円となりました。なお、流動資産は16.2%増加して271.8億円、固定資産は3.2%増加して70.3億円でした。また、負債合計は19.4%増加して146.8億円となりました。このうち流動負債は21.5%増加して132.5億円、固定負債は2.5%増加して14.3億円でした。

純資産については、9.1%増加して195.6億円となりました。主に利益剰余金が16億円、為替換算調整勘定が1億円それぞれ増加し、一方で、その他有価証券評価差額金が1億円減少したことなどがその理由です。

 B/Sのまとめです。総資産および純資産が増加したものの、自己資本比率は58.1%から56.0%へと2.1ポイントDOWNしています。なお、財務の健全性を示す指標のひとつであるROEは、前期より3,2ポイントUPして11.2%へと推移しています。

・C/F:

フリーキャッシュフローは減少したが、現金及び現金同等物期末残高は16.4%UP!

2022年3月期の現金及び現金同等物は、11億円増加し、81億円でした。また、フリーキャッシュフローは、前期の16.8億円から15.4億円へと減少しています。なお、営業キャッシュ・フローは23.1億円、投資キャッシュ・フローは▲7.6億円、財務キャッシュ・フローは▲4.9億円となっています。

・株主還元:

前期比20円増の65円配当を実施。配当性向は25.9%。

株主還元においては、個別配当性向30%を意識して前期比20円増配の65円を実施。さらに2023年3月期は、連結配当性向を40%に引き上げて、年間配当金額110円を想定しています。

2023年3月期の見通し

今後については、新型コロナウイルス感染症の再拡大の可能性や、それに伴う海外における規制強化など経済情勢に影響を与える状況が続くことが考えられます。加えて、地政学的なリスクや資源価格の上昇等、経営環境に不透明さを増す要因が増えています。

こうした中、同社では既存の顧客に対する営業強化を図るとともに、新規製商品の開発や新規分野の開拓を進めるなど、中期経営計画の諸施策を積極的に推進しています。2023年3月期連結業績の見通しは、売上高439億円(前年同期比9.8%増)、営業利益29.5億円(同14.3%増)、経常利益33.5億円(同12.2%増)、親会社株主に帰属する当期純利益22.5億円(同9.7%増) を見込んでいます。

Performance:セグメント別業績

同社のセグメント区分は、業界別に「鉄鋼」「自動車」「電子・半導体」「ゴム・タイヤ」「工作機械」「高機能材」「環境」「紙パルプ」の8つです。売上高構成では、「鉄鋼」「自動車」「電子・半導体」の3業界で6割を超える比率です。

❶鉄鋼業界

同業界では、製造業の回復により粗鋼需要が増え、特に自動車部品などに使用される特殊鋼の伸び率が高くなりました。同社では、整備部門だけでなく操業部門への営業活動に注力した結果、製鋼副資材の販売が伸びたほか、ダストリサイクル設備向け部品や熱延工程向け高圧バルブ等の販売が売上増に寄与しました。

❷自動車業界

同業界では、国内自動車メーカー大手の世界生産は僅かに減少しました。こうした中、同社では今後成長が期待される電池・モーター分野やデジタル技術に関する提案活動に注力した結果、音響カメラや自動搬送システム、塗布装置やディスペンサー等の販売が伸長しました。

❸電子・半導体業界

同業界では、半導体の材料と装置いずれも需要が拡大しており、半導体市場は活況を呈しています。同社では、メーカー機能や修理サービス事業の強化、デジタル新商品の拡販やリサイクルビジネスに繋がる活動に注力した結果、半導体製造装置用シール材や回転継手、洗浄装置等の販売が伸長しました。

❹ゴム・タイヤ業界

同業界では、国内タイヤメーカー大手の売上高が増加しています。同社では、開発案件の対応強化や補修ビジネスに関する営業活動に注力した結果、加硫機用バルブの販売が大きく伸長したほか、水封式真空ポンプの大口案件等が売上増に貢献しました。

❺工作機械業界

同業界では、年度の前半はコロナ禍からいち早く回復した中国で需要が高まり、後半は欧米や日本でも需要が回復しました。同社では、工作機械の複合化に対応する新しい回転継手の営業に力を入れたほか、新型回転継手の開発にも注力した結果、回転継手の販売が伸びたほか、渦巻きポンプ等の販売も増加しました。

❻高機能材業界

同業界では、高機能フィルムや機能性樹脂などの原材料価格上昇が続いており、引き合いが強い自動車・半導体向けで価格転嫁できるかどうか懸念が出てきています。同社では、高機能フィルムメーカーへの深耕を図るとともに医薬・化粧品業界の開拓に力を入れた結果、医薬向け真空ポンプの販売に結びついたほか、チラーのレンタル等が売上増に寄与しました。

❼環境業界

同業界では、半導体業界向け水処理設備や脱炭素社会をにらんだ再生可能エネルギー関連設備向けの投資が増加し、好況が続きました。同社では、SDGsに関連する水処理関連事業の拡大に力を入れたほか、再生エネルギー分野への深耕を図った結果、プラントメーカー向けベッセルや環境装置向けインバーター等の販売が伸びました。

❽紙パルプ業界

同業界では、ペーパーレス化により印刷用紙・情報用紙の需要は減少したものの、通販向けを中心に段ボール原紙の需要が伸びました。同社では、ケミカル素材増産の設備投資案件と抄紙工程の設備投資案件に注力した結果、増産対応のポンプや粉体溶解装置改造案件等が売上増に貢献しました。

ESG Elements:環境・社会・ガバナンス

SDGsの認識浸透とともに、ESG項目は企業の成長可能性をはかる視点のひとつになりつつあります。

Environment(環境):

同社は、ESGの視点から社会課題の解決に取り組むことで、長期的に成長できる企業を目指しています。

 環境関連では、Co2排出量削減目標として2050年のカーボンニュートラルの達成を掲げています。具体的な取り組みとしては、社用車の低燃費車への切り替え、再生可能エネルギーへの移行を推進中です。

Co2削減目標(Scope1&2):カーボンニュートラル達成(2050年)

  • 社用車の低燃費車への切替(Scope1排出量の削減)
  • 再生可能エネルギーへの移行(Scope2排出量の削減)

※Scope1:社用車等の燃料使用に伴う排出(直接排出)
※Scope2:購入した電力・熱の使用に伴う排出(間接排出)

Social(社会):

 また社会関連では、現在展開している中期経営計画において、同社のステークホルダーを「ファン」と定義し、積極的な情報発信を通じて、継続的に企業価値を創造して行くことを目指しています。

同社のステークホルダーを「ファン」と定義し、積極的な情報発信を通じて、継続的に企業価値を創造して行くことを目指す。

Governance(ガバナンス):

 ガバナンスでは、取締役会への諮問組織として「サステナビリティ委員会」を設置するなど、コーポレート・ガバナンスの強化に積極的です。一方、社外取締役比率は33.3%、女性役員は0%であり、役員構成比率におけるレベルは高くありません。

社外役員:3名/9名(33.3%)

女性役員:0名/9名(0%)

Plan:中期経営計画「GP2023」(2022年3月期~2024年3月期)

  同社では、2022年3月期より中期3ヵ年経営計画を推進中で、「ビジネス領域」、「収益性」、「人材・組織」、「ステークホルダーリレーションズ」の4つの軸を策定しています。「ビジネス領域」では、ビジネス領域の拡大、成長分野への注力、海外拠点の強化により、2022年3月期の399億円から2024年3月期には売上高500億円を目標としています。「収益性」については、DXと協創により、2024年3月期は、営業利益率6.5%以上、ROE10%以上、経常利益35億円、オリジナル品比率40%以上を目指しています。

 また「人材・組織」では、“企業は人なり”のDNAのもと人材と組織の育成を。「ステークホルダーリレーションズ」においては、事業を通じたSDGsへの貢献とステークホルダーを同社の「ファン」と捉えたコミュニケーションの活性化を目指しています。

中期経営計画「GP2023」(2022年3月期~2024年3月期)

ビジョン:

「販売・技術・製造・サービス」の高度な融合とパートナーとの「協創」により、世界の産業界の課題解決のためのソリューションを提供する。

4つの軸のKPI:

  1. 「ビジネス領域」:売上高399億円(2022年3月期)→売上高500億円(2024年3月期目標)
  2. 「収益性」:2024年3月期:営業利益率6.5%以上、ROE10%以上、経常利益35億円、オリジナル品比率40%以上
  3. 「人材・組織」:「企業は人なり」のDNAのもとに人材と組織の育成を目指す。
  4. 「ステークホルダーリレーションズ」:事業を通じたSDGsへの貢献、ステークホルダーを「ファン」と捉え、コミュニケーションを活性化

Out Look:まとめ

「メーカー商社」と自負するリックスの独自の「課題解決力」による顧客密着の企業姿勢は「◎」。

国内外の産業界に機器や部品などを製造・販売する「メーカー商社」、リックス株式会社。BtoBビジネスのため、一般社会では認知度は高くありませんが、国内外の産業界大手企業で約3,000社との取引実績が示すように、独自の「課題解決力」による顧客密着の企業姿勢は「◎」です。

【企業分析】リックス(7525)『この会社の○は何?』

★注目の「鉄鋼」「工作機械」「自動車製造装置」テーマ株

兼松<8020>
総合商社から専門商社にシフト。電子、食糧、鉄鋼・プラント、車両・航空が柱。

白銅<7637>
非鉄金属商社。加工、小口、短納期が強み。顧客の要望に柔軟に対応。

NaITO<7624>
機械工具卸老舗。自動車業界向けに切削工具が柱。計測器具も展開。

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