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「インバウンドテーマ」日本空港ビルデング

コロナ禍の影響により、航空業界や観光業界の需要が著しく減退していましたが、今、株式市場では「インバウンド」テーマが再浮上しています。今回は、日本空港ビルデング(株)(9706)を分析します。

Key Points

  • 新型コロナ感染症による経営環境が徐々に緩和に向かう流れの中で、羽田空港における国内線および国際線の旅客数の推移が一番のポイント。
  • 2022年5月12日公表の2023年3月期の通期見込みでは、国内線は上期の回復の遅れから1割ほど当初予想を下回るが、国際線では入国制限の大幅な緩和に伴い当初様相を2割程度上回ると想定される。
  • 業績面では2023年3期も「増収減益」継続の見込みで、「無配当」の見込み。

目次

Identity

★企業能力 KFS(Key Factor for Success = 重要成功要因):

  • 6年連続で世界最高水準である「5スターエアポート」を受賞(SKYTRAX社による国際空港評価“Global Airport Rating”)。
  • 国際空港評価におけるアジア空港の総合評価「Best Airports in Asia」部門で日本の空港で初めて第1位、空港の総合評価である「World’s Best Airports」で3年連続して世界第2位を獲得(2021年8月の顧客調査)。

同社は、「公共性と企業性の調和」の理念のもと1953年に設立。以来、約70年にわたり民営ターミナルビル経営のパイオニアとして、羽田空港を中心に施設管理、物品販業、飲食を事業展開しています。事業環境は引き続きコロナ禍の厳しい状況は続くものの、経済社会活動は正常化へ向かうと思われます。これに伴い、出入国制限は徐々に緩和され、国際的な人の往来は段階的に回復するでしょう。ただ、新型コロナウイルス感染症の再拡大や、ウクライナ情勢・資源価格の高騰等による物価上昇に留意する必要性は感じます。

Performance:全体業績

経営環境

 2022年3月期は、新型コロナウイルス感染症による厳しい状況が緩和される中で、国内経済は持ち直しの動きがみられます。先行きについては、感染対策に万全を期し、経済社会活動が正常化に向かう中で、各種政策の効果や海外経済の改善もあって、景気が持ち直していくことが期待されます。ただし、ウクライナ情勢等による不透明感がみられる中で、原材料価格の上昇や金融資本市場の変動、供給面での制約等による下振れリスクに十分注意する必要があります。

航空業界においては、国内の感染が拡大し2022年1月に東京都等にまん延防止等重点措置が再発出されたこともあり、国内線の需要が再び低下しました。羽田空港国内線の通期の旅客数は、前期比では38%増ですが、コロナ影響が深刻化する前の2019年度比では57%減となりました。国際線では、2021年11月末に強化された水際対策は2022年3月から徐々に緩和されているものの依然として需要は低迷しています。羽田空港国際線の通期の旅客数は、前期比では100%増ですが、2019年度比では95%減となりました。

2022年3月期の羽田空港における戦略展開

このような状況のもと、「航空分野における新型コロナウイルス感染拡大予防ガイドライン」に基づき、ターミナル各所で感染防止対策を実施しています。施設面においては、大規模災害への備えとして、特定天井の改修工事を順次行い、蓄電池内蔵充電設備の整備を完了しています。また、同社では2016年よりHaneda Robotics Labを始動させており、ロボットの実証実験・開発・導入を促進しています。2021年7月には自動運転技術搭載のパーソナルモビリティ「WHILL」による運行サービスを国内線出発ゲート全域に展開しました。国際線では、顔認証技術を活用した「Face Express」の本格運用や、従来の5倍の規模のビジネスジェット専用施設の供用を開始しています。今後も安全性・利便性の向上に加えて非対面・非接触化による感染防止策を強化し、アフターコロナを見据えた羽田空港全体のスマートエアポート化を推進しています。

営業面においては、国内線を中心に旅客が回復する中、2021年の東京オリンピック・パラリンピック期間中には第1、第3ターミナルにオフィシャルショップを展開したほか、軽飲食スペースを併設した北海道公式アンテナショップを開業するなど、需要の取り込みを図りました。EC事業では、北海道の厳選した産品を産地直送で販売するサイトを開設したほか、人気の機内食セットは新メニュー等の商品を拡充し空港内店舗でも販売するなど、実店舗と連動した取り組みも進めています。また、羽田空港で導入しているロボットとオペレーションシステムをセットにし、国内外の空港やオフィスビル・商業施設等への販売・リースを開始しました。

羽田空港獲得アワード

羽田空港旅客ターミナルは、SKYTRAX社による国際空港評価“Global Airport Rating”において、6年連続で世界最高水準である「5スターエアポート」を受賞していますが、国際空港評価の顧客調査において、2021年8月にアジア空港の総合評価である「Best Airports in Asia」部門で日本の空港で初めて第1位、空港の総合評価である「World’s Best Airports」で3年連続して世界第2位を獲得しました。さらに、部門賞である「World’s Cleanest Airports」(6年連続)と、「World’s Best Domestic Airports」(9年連続)、「World’s Best PRM / Accessible Facilities」(3年連続) で世界第1位となりました。また、新型コロナウイルス感染症対策に関する監査「COVID-19 Airport Safety Rating」において、日本国内の空港では初めて世界最高水準である「5スター」を獲得しています。

2022年3月期決算の概要

・P/L:

2022年3月期のP/Lポイントは、売上高は増加しているが「赤字」を継続!

旅客数の回復に伴い、売上高は全てのセグメントで増収となりました。それに加え、さまざまな費用削減が進んだことにより、損益は大きく改善していますが、需要の戻り幅がまだまだ小さいために、2期連続で大幅な赤字となっています。具体的には、 国内線と国際線の旅客数の段階的な回復に伴い施設利用料収入等が前年度より増加し、売上高は 570億5千7百万円となりました。一方で、売上の回復と前期からのコスト削減の堅持はあるものの、営業損失は 412億5千5百万円、経常損失は 438億6千1百万円、親会社株主に帰属する当期純損失は 252億1千7百万円となりました。

・B/S:

 B/Sでは、自己資本比率は1.1ポイントDOWNして33.2%へと推移

流動資産は295億3千8百万円減少し、1,138億6千8百万円となりました。これは主に、新株予約権付社債の満期償還などにより、現金及び預金が減少したことによるものです。固定資産は減価償却に伴う減少により257億7千5百万円減少し、3,500億1千万円でした。この結果、総資産は553億1千4百万円減少し、4,638億7千8百万円となっています。

流動負債は222億4千6百万円減少し、368億4千7百万円でした。これは主に新株予約権付社債の満期償還で減少したことによるものです。固定負債については、東京国際空港ターミナル株式会社が長期借入を実行したことにより、64億6千6 百万円増加し、2,710億2千1百万円となりました。この結果、負債合計は157億7千9百万円減少し、3,078億6千9百万円でした。

純資産合計は395億3千4百万円減少し、1,560億9百万円となりました。これは主に、その他の包括利益累計額が増加したものの、当期純損失の計上により利益剰余金及び非支配株主持分が減少したことによるものです。この結果、自己資本比率は33.2%(前連結会計年度末は34.3%)となりました。

・C/F:

フリーキャッシュフローは改善が見られるものの引き続きマイナス状態!

現金及び現金同等物は、232億2千6百万円減少し、971億2千8百万円となりました。

営業活動によるキャッシュ・フローは、その他の流動負債が減少したこと等により、49億1千7百万円支出が増加(前年比112.1%増)の93億5百万円の支出となりました。投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産の取得による支出等が減少したことにより、203億4千1百万円支出が減少(前年比80.5%減)し、49億2千6百万円の支出でした。また、財務活動によるキャッシュ・フローは、872億6千3百万円減少(前年は782億2千8百万円の収入)し、90億3千5百万円の支出となりました。これは主に、転換社債の償還による支出等によるものです。

以上の結果、フリーキャッシュフローは、改善は見られますが、マイナス状態が継続しています。残念ながら、中期経営計画に基づいた成長に向けた設備投資は限定的になるものと思慮されます。

・株主還元:

無配当

 こうした結果、2022年3月期における1株当たり配当金額は、引き続き無配当となっています。

Performance:2023年3月期の見通し

2023年3月期見通しは、物販と飲食はやや上向きで、施設利用料も国内線が後半には本格的に伸びる計画ですが業績は厳しそうです。家賃収入は戻り基調にありますが、国際線の回復が鈍いと予想され、営業赤字が継続して無配当が継続するのではと思慮します。

 羽田空港における旅客数で見ると、国内線は観光需要が牽引して、通期でコロナ前の85%までの回復。一方国際線は、ビジネス需要より回復が見られるものの、観光需要の回復までには時間を要し、通期でコロナ前の計画比18%までの回復と想定されていましたが、先日公表された2023年3月期2Qの決算短信によれば、2023年9月期時点における羽田空港の旅客数は、夏場以降の感染第7波の影響により国内線では当初予想を1割程度下回りましたが、国際線では段階的な入国制限緩和により当初予想並みとなりました。業績については、国内線旅客の伸び悩みの影響により営業収益は予想を下回りましたが、コスト抑制の継続により営業損益は予想を上回っています。

これを踏まえた2023年3月期の見通しは、航空旅客数は国内線では上期の回復遅れの影響により当初予想を1割程度下回るとの予想ですが、国際線では入国制限の大幅な緩和により当初予想を2割程度上回ると想定されます。通期業績については、営業収益は国内線の回復遅れを国際線で挽回し概ね当初予想並み、営業損益はコスト抑制の継続により当初予想を上回ると思慮します。この結果、売上高105,900百万円、営業利益▲14,300百万円、親会社株主に帰属する当期純利益▲4,600百万円を見込んでおり、2022年5月12日公表の見込みから上方修正となっています。

ESG Elements:環境・社会・ガバナンス

SDGsの認識浸透とともに、ESG項目は企業の成長可能性をはかる視点のひとつになりつつあります。

Environment(環境):

 環境問題への対応については、羽田空港ではこれまでも館内照明のLED化等により東京都の温室効果ガス排出削減義務量を達成していますが、2030年の削減目標達成、2050年のカーボンニュートラル実現に邁進しています。本年2月に国土交通省の空港分野におけるCO2削減に関する検討会において各空港は2030年に2013年比で46%以上の温室効果ガス削減目標が示されており、羽田空港は東京国際空港エコエアポート協議会を中心に削減目標の達成に向けて取り組んでいます。同社はこれまでも館内照明のLED化等により東京都の温室効果ガス排出削減義務量を達成していますが、同協議会の一員として羽田空港に従事する各事業者とともに2030年の削減目標達成、2050年のカーボンニュートラル実現に邁進しています。

CO₂排出量(スコープ1・2)

2030年の削減目標▲46%の達成、2050年のカーボンニュートラル実現

Social(社会):

 社会性の観点では、羽田空港は国際線空港として外部から高評価されています。また、感染症対策への空港監査において世界最高水準の認定獲得をはじめ、「安心できる施設整備とサービスの提供、理解を深める取り組みが評価され、同社は東京都の「心のバリアフリー」好事例企業に選定されています。

Governance(ガバナンス):

 ガバナンス強化については、監査等委員会設置会社へ移行しました。委員の過半数が社外取締役で構成される監査等委員会が、業務執行の適法性、妥当性の監査・監督を担うことでより透明性の高い経営を実現し、国内外のステークホルダーの期待に、より的確に応えうる体制の構築を目指しています。また、取締役会の業務執行決定権限を取締役に委任することにより、取締役会の適切な監督のもとで経営の意思決定および執行のさらなる迅速化を図ることとしています。

社外取締役:(7名/15名、46.7%)、女性役員:(2名/15名 、13.3%)

Plan:中期経営計画(2022年度~2025年度)

中期経営計画の戦略は、【将来の航空需要の取り込み】と、その実現に向けた【再成長土台の確立】および【収益基盤の拡大】を掲げています。また、サステナブル経営を推進するための経営基盤の強化として、「DX・新技術活用による改善・革新」、「組織・人財・ガバナンス」、「財務戦略」を推進する計画です。

 同社では、2026年3月期に売上高2,800億円、営業利益300億円を目標に掲げていますが、国際線の復活が「鍵」です。中計期間中に、将来の需要拡大を見据えてターミナル拡充を目的として930億円の設備投資を計画しています。

【ベスト・モデル】を創り出し、世界から評価される存在 ➡ 空港評価

サステナビリティ経営を軸に「稼ぐ力」を強化      ➡ 収益性・効率性

不確実性の高い事業環境の変化に柔軟に対応       ➡ 安定性・株主還元

▶機会を捉えた投資を実行し成長し続ける企業体      ➡ 投資計画

Out Look:まとめ

日本空港ビルデングは、羽田空港の国際線旅客需要の回復次第!それに向けて着実に準備が整えば「◎」です。

 ちなみに「インバウンド」テーマの他にも、「羽田空港国際化」「空港ビジネス」「免税店」「MICE」「 国家戦略特区」でも注目されています。

<Youtubeでも解説>
【企業分析】日本空港ビルデング(9706)『この会社の○は何?』

みんかぶ編集室

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