IR(独自企業分析)

「資産運用・不動産投資・クラウドファンディングテーマ」クリアル

みんかぶ編集室
公開)

今回は、「資産運用」「不動産投資」「クラウドファンディング」「2022年のIPO」「投資事業」「ESG投資」など、投資・運用の株テーマから不動産関連のクリアル株式会社(2998) です。

Key Points

  • 不動産投資における資産運用プロセスをITで効率化するDXカンパニー。
  • 不動産投資市場は、2016年からの4年間で10倍の成長を遂げており、2022年には987億円マーケットに成長。さらに2026年には1.7兆円超の成長が予測されている。
  • 主力の「CREAL」は1万円から投資可能で、誰もがオンラインで安定的に・気軽に参加可能なサービスとして4年連続で運用資産残高No.1。

目次

Identity

★企業能力 KFS(Key Factor for Success = 重要成功要因):

「市場開拓の知見とDX技術力」

国内市場の規模と成長予測:

年率平均成長率(CAGR)は70%に近い成長率を示す!

  • 2022年現在 987億円
  • 2026年予測 1.7兆円超

②不動産クラウドファンディング市場におけるクリアル社のポジション(2022年現在):

・4年連続運用資産残高No.1

2022年に東証グロース市場に上場したクリアル株式会社は、「不動産投資を変え、社会を変える」というミッションを掲げています。今まで個人では投資の機会を得ることが難しかった不動産への投資機会を、誰もが資産運用を開始できる社会の実現を目指して1万円から投資可能な不動産クラウドファンディングに加えて、実物不動産やプロ向け投資サービスも展開しています。

 資産運用をITで効率化する「DXカンパニー」であるクリアル社は、不動産投資の資産運用プロセスをDXで推進しており、洗練された技術基盤とそれを生み出す最高峰のエンジニアメンバーが強みです。また、同社が提供する不動産クラウドファンディング「CREAL」は、誰もが不動産での資産運用をオンラインで安定的に・気軽に参加できるサービスです。

 オンラインの不動産投資成⾧率は年率68%と急拡大しており、2026年には1.7兆円を超えるマーケットになると言われています。その中で、同社の運用資産残高は4年連続第1位と圧倒的なシェアを占めており、成⾧市場でのリーディングカンパニーです。

このクリアル社は、急拡大するオンライン不動産投資において「市場開拓の知見とDX技術力」が同社(の存在感)のポイントです。

Performance:全体業績

経営環境

同社の対面市場(不動産クラウドファンディング業界及び不動産投資を通じた資産運用業界)は、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う外出自粛や国境を超えた移動の制限等により、ホテルの稼働率低下や商業施設 の時短営業など影響が長期化するセグメントがあった一方で、安定的な需要が見込まれるレジデンスや物流施設には投資資金が流入しました。例えば、マンション市場においては、2021年の取引件数はコロナ禍以前の水準まで回復し、財政出動による市場の潤沢な資金を背景に平米単価と不動産価格指数が上昇傾向を維持しています。また、日本の低金利と円安を背景に海外投資家による国内不動産への投資需要の高まりが見られます。

2022年3月期決算の概要

・P/L:

P/Lは大幅な「増収増益」を達成!売上高は前年同期比48.2%UP、営業利益70.6%UP、親会社株主に帰属する当期純利益243.2%UP。この大幅な「増収増益」傾向は2Qでも継続中。

同社では「CREAL」において、東京23区のマンション、ホテル、保育園等を投資対象とした不動産ファンドをオンラインで提供することで登録会員数及びGMV(※1)の拡大を図るとともに、これらの対象不動産を着実に売却し、クラウドファンディング投資家への配当を確保しつつ、当社利益の増加につなげました。なお現在の投資家会員数は3万人、累積投資金額は200億円を突破(2023年3月期2Q決算公表時点)しています。また、国内投資家および海外機関投資家などを対象に国内ヘルスケアアセットを対象とした不動産ファンドを組成し、ファンド組成手数料およびアセットマネジメントフィーの増加につなげています。

【不動産ファンド組成の直近トピックス(2023年3月期2Q決算公表時点)】

  • 10億円超の物流施設(同社初)ファンド
  • ESG不動産投資として国立大学キャンパス内の『PAL国際保育園』ファンド  etc.

一方で、「CREAL」の事業拡大に伴い先行投資も含めた人員の拡充が進み、人件費が大きく増加しました。

この結果、売上高は105億8千1百万円(前年同期比48.2%増)、営業利益3億1千3百万円(前年同期比70.6%増)、経常利益2億5千6百万円(前年同期比142.6%増)、親会社株主に帰属する当期純利益1億7千2百万円(前年同期比243.2%増)となりました。2023年3月期2Qにおいても好調な決算状況を継続しており、売上高は93億40百万円、売上総利益は12億26百万円、営業利益5億3百万円、経常利益4億75百万円、親会社株主に帰属する四半期純利益3億27百万円となっています。

◇同社では、2022年3月期以前における四半期での連結財務諸表を作成していないため、2Q時点におけるにおける対前年同期比増減率は非公開となっています。

※1 GMVとは「流通取引総額:Gross Merchandise Value」の略であり、「CREAL」においてファンド組成のため投資家から調達した資金額のことです。

・B/S:

 B/Sでは、自己資本比率は9.64%から9.56%へと推移。また、ROEは9.6ポイントUPして18.1%へと上昇!

総資産は、販売用不動産の増加、現金及び預金の減少などにより前期比20.8%増加して109億2千6百万円となりました。また、負債は98億8千万円となり、前連結会計年度末に比べ17億5百万円増加しています。これは主に、「CREAL」でのファンド運用開始による匿名組合出資預り金の増加35億4千3百万円、「CREAL」でのファンド運用開始によるクラウドファンディング預り金の減少8億2千万円、短期借入金の減少2億5千万円、長期借入金の減少1億5千万円、償還による社債の減少5億8千万円によるものです。また純資産は、10億4千5百万円となり、前連結会計年度に比べ1億7千3百万円増加しています。主な理由は、親会社株主に帰属する当期純利益の計上1億7千万円によるものです。

なお、自己資本比率は9.64%から9.56%へとDownしていますが、総資産のうち70%以上がクラウドファンディング関連の勘定が占めていることから、BS上では「負債」として形式的に計上されてしまうため、実質的な自己資本比率は「もっと高い状況」にあるとも考えられます。また、ROEは9.6ポイント改善し、2022年3月期は18.1%です。ちなみに、2023年3月期2Qにおける自己資本比率は、上場に伴う公募増資による資本金の増加と四半期純利益の計上により11.8%へと推移しています。

◇同社では、2022年3月期以前における四半期での連結財務諸表を作成していないため、2Q時点におけるにおける対前年同期比増減率は非公開となっています。

・C/F:

フリーキャッシュフローは改善したが、現金及び現金同等物期末残高は減少!

フリーキャッシュフローは前期の▲7億5千3百万円から5億1千2百万円へとプラスに転化しており著しく改善されています。しかしながら、連結ベースの現金及び現金同等物の期末残高は、5億7千8百万円減少し14億5千8百万円となりました。

営業活動によるキャッシュ・フローは、2億7千4百万円の収入(前年同期は5億1千3百万円の支出)。これは主に、税金等調整前当期純利益2億6千6百万円、匿名組合出資預り金の増加額35億4千3百万円の影響により資金が増加し、棚卸資産の増加額27億8千4百万円、クラウドファンディング預り金の減少額8億2千万円の影響により資金が減少したことによります。

投資活動によるキャッシュ・フローは、2億3千7百万円の収入(前年同期は2億3千9百万円の支出)。これは主に、貸付金の回収による収入2億7千万円、ホテル設備取得に伴う有形固定資産の取得による支出7千8百万円によるものです。

財務活動によるキャッシュ・フローは、10億9千万円の支出(前年同期は14億8百万円の収入)。これは主に、短期借入金の純減額2億5千1百万円、長期借入金の返済による支出2億5千4百万円、社債の償還による支出6億6千4百万円によるものです。

・株主還元:

昨年に引き続き「無配」を継続!

株主還元においては、昨年に引き続き「無配」を継続中です。現在は「CREAL」の事業拡大を積極的に推進中で成長過程にあることから、内部留保の充実を図り、組織体制、システム環境の整備への投資などの財源として資金を有効活用することが、株主への最大の利益還元につながると考えています。同社では将来において、財政状態および経営成績を勘案しながら「配当」を実施していく方針ですが、現時点において、今後の具体的な配当方針については未定です。

2023年3月期の見通し

今後については、国内の少子高齢化が進み「人生百年時代」といわれる中で、老後資金についての関心が高まっています。このような状況下「資産運用」という市場は拡大傾向にあり、中でも「Fintech」を活用した資産運用のツールが普及の兆しを見せています。不動産投資はIT化が進んでいないといわれる業界ですが、大きなIT化の進む局面に来ており、当社グループではITプラットフォームの有無、運用プロセスのDX化が競争優位性を持ち始める時代に入ると思われます。海外では不動産投資のDX化が進展を続け、例えばグローバルの不動産投資クラウドファンディングのマーケットは約2.8兆円(2020年)から48.9兆円(2026年) (※1)へ成長するという予測もされています。

「資産運用」と「Fintech」という今後の拡大が見込まれる2つの領域にまたがる同社グループの不動産ファンドオンラインマーケット「CREAL」は、多くの人が手軽に楽しく安心してオンラインで効率的な資産運用を始められるサービスであり、大きな成長可能性を感じます。個人投資家や国内外の機関投資家の運用ニーズはともに高まりを見せており、直近では政府が「資産所得倍増プラン」を発表する等、資産運用市場は今後も拡大していくと考えられます。このような状況の中、「CREAL」の認知度向上、新規投資家の獲得および投資家のリピート投資率の向上のため、魅力あるサイト構築、新規プロダクト開発、各種マーケティング施策の実行、多様で良質な不動産投資案件の提供および機関投資家を含む法人会員の開拓等により事業成長をしていく方針です。

2023年3月期の業績見通しについては、成長戦略を着実に実施することで売上の拡大を見込む一方、人件費を含む開発費用のほか、認知度向上のための広告宣伝費等の積極的な先行投資を行っていくことで、売上高160億円(前年同期比51.2%増)、営業利益3億3千万円(前年同期比5.2%増)、経常利益3億1千万円(前年同期比20.6%増)、親会社株主に帰属する当期純利益2億円(前年同期比16.0%増)と、引き続き「増収増益」を見込んでいます。

※1 Global Real Estate Crowdfunding Market, 2016-2026, Facts & Factors, USD/JPY129.9(日本銀行金融市場局発表 2022年4月28日中心相場)で換算

Performance:セグメント別業績

 同社事業は、資産運用プラットフォーム事業の単一セグメントです。

セグメント別業績:(資産運用プラットフォーム事業の単一セグメント)

「増収増益」の主な増減要因:

①「CREAL」:短期の資産運用のための不動産クラウドファンディング→東京23区の区分レジデンスのリノベーション、ホテル、商業施設、物流施設、一棟レジデンス、コリビングタイプのレジデンス(※)、保育園等を投資対象とした不動産ファンドをオンラインで提供することで登録会員数及びGMV*が拡大

※GMVとは?:「流通取引総額:Gross Merchandise Value」の略であり、「CREAL」においてファンド組成のため投資家から調達した資金額のこと。

※ワークスペースとシェアハウスを複合させたもので、高水準のデジタルインフラが整っているコワーキングスペースや住居者の交流を重視する仕掛けが充実している共同住居施設

②「CREAL Partners」:個人向け不動産投資運用サービス→区分レジデンスの販売本数を伸ばし、付随する賃貸管理物件数の増加につなげ収益を拡大

③「CREAL Pro」:プロ向け不動産ファンド事業→「CREAL」で組成した一棟レジデンスファンドを中心とするポートフォリオを海外機関投資家へ一括バルク売却を実施、また、国内投資家及び海外機関投資家等を対象に国内ヘルスケアアセットを対象とした不動産ファンドを組成することによりファンド組成手数料およびアセットマネジメントフィーを増加

ESG Elements:環境・社会・ガバナンス

SDGsの認識浸透とともに、ESG項目は企業の成長可能性をはかる視点のひとつになりつつあります。

Environment(環境):

同社では、SDGsおよびESGを意識したビジネスを推進しています。「誰でも手軽にはじめられる不動産投資「CREAL」では、従来の金融市場からは資金調達が難しかったESG不動産領域へ傾注しています。例えば、保育園、学校、地方創生関連の不動産資産に対してクラウドファンディングで個人投資家から資金流入させており、2021年12月末時点での投資金額に占めるESG不動産の累計割合は39%です。

「CREAL」におけるESG不動産への投資割合(累計):39%(2021年12月末時点)

Governance(ガバナンス):

 ガバナンス関連データでは、社外取締役比率は37.5%です。但し、監査役を加えた社外役員比率では54.5%と半数以上となりますが、女性役員は居らず0%の状況です。

Plan:中期経営計画

 同社では「CREAL」のプラットフォームの拡大のため、中長期的に300億のGMVをKPIとして計画しています。GMVの構成要素は「投資家数X一人当たりの投資金額」のため、投資家数については約3倍、投資金額については約1.5倍を目指しており、そのための「IT投資」や「新規プロダクト開発」を計画・実行しています。

 また現状、約70%のユーザーがスマートフォン経由で「CREAL」にアクセスしている状況を踏まえ、アクティブ率や顧客ロイヤリティの向上を目指して「iOSアプリ」や顧客囲い込み戦略としての「会員ランク機能」の開発を行いました。加えて、従来から問題視されている「不動産投資プロセス」の非効率性の解消を可能とするDXツールの開発など、各種サービスおよび管理業務におけるDX化をいっそう推進することで、ローコストオペレーションを目指しています。

Plan

「CREAL」におけるGMVの拡大:2025年3月期に300億を計画

1)GMVの成長:

26.4億円(2020年3月期) → 39.8億円(2021年3月期) → 71.2億円(2022年3月期) → 300億円へ(2025年3月期目標)

2)iOSアプリの開発:

アクティブ率の上昇、顧客ロイヤリティの向上 etc.

3)DX化の推進:

各種サービス及び管理業務におけるDX化を推進し、ローコストオペレーションを!

4)新規プロダクト・新規アライアンスの取り組み事例:

CREAL会員向けにプログラム制度を導入(2022年7月1日):

運用資産残高に応じた会員ランクによって、投資額の最大0.6%の金額がCREAL専用口座にキャッシュバック

② 多数の企業との提携:

JRD社

BRI社

ロイヤリティ マーケティング社(ポンタ)

プロスタイル社(10月)

Out Look:まとめ

不動産投資は、限られた投資領域とこれまで思われていましたが、「誰もが不動産での資産運用をオンラインで安定的に・気軽に参加できるサービス」の存在は魅力的です。クリアル社の「市場開拓の知見とDX技術力」を成長につなげるという攻めの考えは「◎」です。

【企業分析】クリアル(2998)『この会社の○は何?』

★注目の「不動産関連」「クラウドファンディング」テーマ株

FJネクストホールディングス<8935>
投資用ワンルームマンションを首都圏で展開。「ガーラ」ブランド。
LIFULL<2120>
不動産情報検索サイト「HOME’S」を運営。物件掲載数は業界最多。海外展開も。

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