IR(独自企業分析)

「生命保険・金利上昇メリットテーマ」第一生命ホールディングス

みんかぶ編集室
公開)

 2022年7月、円安の進行や海外の金利上昇により、資金運用の環境改善が期待され「生命保険」テーマが上昇しています。その中から、第一生命ホールディングス(8750) を分析します。

Key Points

  • 2022年3月期は「増収増益」を達成。しかし2023年3月期の見通し(2022年11月14月2Q決算短信)は「増収減益」を想定。
  • 株主還元においては、62円から83円へと年間配当金額が推移。2023年3月期にはさらに増配の86円を目指す。
  • 国内有数の生命保険事業だけでなく、国内有数の機関投資家として総資産約65.8兆円(2022年3月期)を誇るなど、「グループ総合力」が魅力。

目次

Identity

★企業能力 KFS(Key Factor for Success =重要成功要因)

「グループ総合力」

  1. 国内のお客様数:約1,150万人
    ※グループ子会社3社の合算(第一生命、第一フロンティア生命、ネオファースト生命)
  2. グルーバル:世界8ヵ国展開
    ※2007年より海外生命保険事業を展開し、先進国市場、新興国市場でバランスの取れた成長を推進中
  3. 総資産:約65.8兆円
    ※機関投資家として安全性や収益性の追求、また、金融仲介機能として経済や金融市場を動かして社会に貢献

1902年に日本初の相互会社として創業し、2016年に持株会社体制へと移行した現在、生命保険業界でトップクラスの地位を確立しています。同社の優位性は、国内市場でブランド体制を確立させていること。そして、グローバルに世界8か国で順調に成長中の海外展開です。

 お客さまの立場に立った商品・サービスを提供し続けて「一生涯のパートナー」を目指す事業展開を推進する一方、国内有数の機関投資家としての側面を持ち総資産:約65.8兆円を誇ります。

第一生命ホールディングス株式会社は、その存在感を「グループ総合力」でアピールしています。

Performance:全体業績

経営環境

 2022年3月期の世界経済は、前年度からの新型コロナウイルスの影響が和らいだことなどを背景に、先進国を中心に高い成長率となりました。行動制限の緩和で需要回復が進む一方、サプライチェーンの混乱や資源価格の上昇が生じ、多くの国でインフレ率が高まりました。このような中で日本経済は、行動制限が繰り返された影響から個人消費の回復が遅れ、先進国の中では緩やかな成長に留まりました。

 金融環境は、年度前半には経済回復への期待感などから株式市場の上昇が国内外で見られましたが、後半には米国の金融引き締め加速が意識された他、2022年2月にはロシアがウクライナに侵攻し、投資家心理の悪化から株式市場は不安定に推移しました。一方、市場金利は、世界各国で上昇傾向に推移する中、に品の長期金利も上昇し、日本銀行が上限とする0.25%に達する局面がりました。

 国内外において生命保険事業を中心に事業を展開する同社グループでは、新型コロナウイルス禍において、顧客や従業員の健康に配慮した業務運営を継続し、速やかな保険金および給付金の支払いなど、保険事業者としての役割を果たすことに努めました。また、経営環境が大きく変化する中、2022年3月期より中期経営計画「Re-connect 2023」をスタートさせ、新グループビジョン「Protect and improve the well-being of all」を掲げ、4つの重点施策(国内事業、海外事業、財務・資本、サステナビリティ・経営基盤)を中心に事業を推進しました。

さらに、2023年3月期2Q期間における世界経済は、インフレ率の高止まりに伴って各国中央銀行が金融引き締めを進めたほか、ロシアのウクライナ侵攻等を背景に多くの国で減速しました。金融市場では、アメリカを中心とした金融引締めの加速を背景に株価が下落したほか、為替市場ではドル高円安が進みました。日本経済は、新型コロナウイルスの第7波に見舞われましたが、行動制限等の措置が行われなかったこともあり、国内需要主導で回復が続きました。一方で、ウクライナ情勢の悪化や円安によって輸入価格の上昇が進み、景気回復の重石となっています。

2022年3月期決算の概要

P/L

「増収増益」を達成。売上高にあたる「経常収益」は4.9%UP。また、最終利益に相当する親会社株主に帰属する当期純利益も12.5%UP!

経常収益は、保険料等収入5兆2,919億円(前期比11.9%増)、資産運用収益2兆5,511億円(同6.2%減)、その他経常収益3,666億円(同3.0%減)を合計した結果、前年同期比で3,819億円増加し、8兆2,097億円(同4.9%増)でした。保険料等収入は、第一フロンティア生命において販売が増加したこと等により増加しました。

一方、経常費用は、保険金等支払金5兆8,557億円(同17.1%増)、責任準備金等繰入額3,168億円(同67.4% 減)、資産運用費用3,811億円(同16.7%増)、事業費7,521億円(同9.2%増)、その他経常費用3,129億円(同

%増)を合計した結果、7兆6,188億円(同4.7%増)となりました。

この結果、経常利益は380億円増加し、5,908億円(同6.9%増)となりました。また、親会社株主に帰属する当期純利益は4,093億円(同12.5%増)となりました。増益となったのは、グループ通算制度の導入に伴い、第一フロンティア生命において繰延税金資産を計上したこと等によるものです。

また、2023年3月期2Qにおける経常利益は2,192億円(同23.4%減)でした。親会社株主に帰属する中間純利益は1,082億円(同39.4%減)となっています。

B/S

総資産は3.6%UPだが純資産は減少し、自己資本比率は0.9ポイントDOWNの6.7%。また、保険金等の支払い余力を示すソルベンシー・マージン比率は、958.5%から969.5%へと依然高い数値を維持!

 B/Sでは、総資産は65兆8,811億円(前期末比3.6%増)となりました。主な資産構成は、有価証券が51兆5,047億円(同1.2%増)、貸付金が3兆9,785億円(同5.7%増)、有形固定資産が1兆1,597億円(同4.2%増)です。また、負債の部合計は、61兆4,726億円(同4.6%増)となりました。負債の大部分を占める保険契約準備金は52兆7,459億円(同3.3%増)となりました。

純資産は4兆4,085億円(同8.3%減)となりました。純資産における、その他有価証券評価差額金は2兆3,979億円(同21.5%減)となりました。なお、保険金等の支払余力を示す連結ソルベンシー・マージン比率は、11.0ポイントUPし、969.5となりました。

また2022年11月14日公表された、2023年3月期2Q決算では、総資産は63兆8,492億円(前年同期比3.1%減)、負債合計は、60兆8,969億円(同0.9%減)となりました。純資産は2兆9,522億円(同33.0%減)となっています。なお、連結ソルベンシー・マージン比率は、969.5%(2022年3月期)から708.9%へと推移しています。

C/F

フリーキャッシュフローは6.3%増加!

フリーキャッシュフローは5,012億円(前期末比6.3%増)となりました。営業活動によるキャッシュ・フローは、前期と比べて3,821億円支出増の4,620億円の支出、投資活動によるキャッシュ・フローは、4,119億円収入増の9,632億円の収入でした。また、財務活動によるキャッシュ・フローは、前期と比べて2,462億円支出増の1,807億円の支出でした。

以上の結果、現金及び現金同等物の当連結会計年度末残高は、期首から3,538億円増加し、2兆6,167億円(前連結会計年度末は2兆2,629億円)となっています。

株主還元

21円増配して83円を実施。配当性向は21.7%!

1株当たり配当金額は、21円増加して83円の増配を実施しています。なお、配当性向は21.7%となっており、前年同期の19.0%から2.7ポイントUPしています。また、2023年3月期における配当金額は、一株当たり86円と想定されています。

2023年3月期の見通し

2023年3月期の業績見通しについては、経常収益は9兆6,500億円と増収を見込んでいます。経常利益は、4,300億円と減益を見込んでいます。親会社株主に帰属する当期純利益についても、2,190億円と減益を見込んでいます。

なお、当該見通しは、現時点で入手可能な情報及び過去の実績等を踏まえた独自の予想に基づいて策定されており、市場金利、為替レート及び株式相場については、2022年3月期末を踏まえた前提としています。このため、実際の業績は当該予想と大きく異なる可能性があります。

2023年3月期の見通し:(2022年11月14日決算短信ベース)

  • 経常収益:9兆6,500億円(前期比増減率17.5%)
  • 経常利益:4,300億円(前期比増減率△27.2%)
  • 親会社の所有者に帰属する当期純利益:2,190億円(前期比増減率△46.5%)

Performance:セグメント別業績

事業のセグメント状況を見ましょう。

「経常収益」の構成比率は、国内:73.6%、海外:24.1%、その他:2.3%でした。

「セグメント利益」では、国内:62.9%、海外:12.0%、その他:25.1%となっています。

 国内事業では、約90%の世帯が生命保険に加入している中、今後は人口減少などによる落ち込みが予想されるものの、長生きによるリスクの変化や、ライフスタイルの多様化など、時代の潮流に合わせて引き続き保障ニーズは高まっています。

 海外事業は、米国を中心に先進国市場での安定的な利益貢献、アジア新興国市場における中長期的な成長を見込んでいます。

セグメント業績(2023年3月期2Q時点)

 国内生命保険事業

 経常収益は、第一フロンティア生命保険株式会社において、海外金利上昇に伴い外貨建て保険の販売が好調に推移したことによる保険料等収入の増加及び円安の進展に伴い為替差益が生じたこと等により、前年同期に比べて1兆5,852億円増加し、4兆6,842億円(前年同期比51.2%増)となりました。セグメント利益は、主に第一フロンティア生命保険株式会社において、金融市場環境の急速な変動に伴い資産運用費用が増加したことや、第一生命保険株式会社においてコロナに関する保険金支払いが増加したこと等を要因として、前年同期に比べて287億円減少し、2,043億円(同12.3%減)となりました。

海外保険事業

経常収益は、Protective Life CorporationおよびTAL Dai-ichi Life Australia Pty Ltdにおいて責任準備金戻入の影響や円安の進行等を理由に保険料等収入が増加したことを主な要因として前年同期に比べて5,724億円増加し、1兆6,900億円(前年同期比51.2%増)となりました。セグメント利益は、主にProtective Life Corporationにおいて、金融市場変動影響により営業外損益が悪化したこと等により、前年同期に比べて655億円減少し、145億円のセグメント損失(前年同期は509億円のセグメント利益)となりました。

その他事業

同社グループ会社からの配当金収入が増加したこと等により、経常収益は前年同期に比べて949億円増加し、2,737億円(前年同期比53.1%増)となり、セグメント利益は前年同期に比べて938億円増加し、2,625億円(同55.6%増)となりました。

ESG Elements:環境・社会・ガバナンス

SDGsの認識浸透とともに、ESG項目は企業の成長可能性をはかる視点のひとつになり得ようとしています。

Environment(環境)

ESGの観点で見る第一生命グループは、2040年度を目標に脱炭素化を掲げており、気候変動対策に積極的です。また国内有数の機関投資家として、ESGを資産運用の柱と位置付けており、2024年3月期までに2兆円以上、気候変動に対しては9,500億円以上の投融資を目標に据えています。

Social(社会)

 社会関連データでは「女性管理職比率28.5%」と女性の活躍を示す指標は高いレベルと思われます。またダイバーシティ比率25.6%と従業員の多様性化も進んでいるようです。

Governance(ガバナンス)

 またガバナンス体制においては、社外役員および女性役員比率は国内トップレベルです。なお取締役に対して、経営へのコミットメントによる企業価値向上を目的として、業績連動型株式報酬制度を導入しています。

Plan:中期経営計画「GP2023」(2021年3月期~2023年3月期)

中期経営計画では、2023年3月期にグループ修正利益を2,500~2,800億円を想定し、ROE8%程度をKPI目標としています。

 国内では約90%の世帯が生命保険に加入している中、今後は人口減少などによる落ち込みが予想されるものの、長生きによるリスクの変化や、ライフスタイルの多様化など、時代の潮流に合わせて引き続き保障ニーズは高まっています。人生100年時代において、マイナスを補填する「保障」だけでなく、プラスをさらに高める「資産形成・承継」という経済的サポート、さらに「健康・医療」、そして「つながり・絆」の支援といった心のサポートを通じて、少子化、年金、介護、医療、地方過疎化などの社会課題解決を重視していく方針です。

 また海外展開は、既存進出国や周辺国を中心に、既存事業の成長と同時に資本コストを上回る成長性の見込めるM&A案件を探索する方針です。

Out Look:まとめ

第一生命ホールディングスは、グループの総合力で揺るぎない業界ポジションを獲得しています。この勢いは「◎」です。

【企業分析】第一生命ホールディングス(8750)『この会社の○は何?』

★注目の「生命保険」「金利上昇メリット」テーマ株

SOMPOホールディングス<8630>
損保3強の一角。損保ジャパンと日本興亜が合併。海外、介護・ヘルスケアを拡大。

T&Dホールディングス<8795>
中核に個人向け太陽生命、中小企業向け大同生命。T&Dフィナンシャル生命も。

東京海上ホールディングス<8766>
損保で首位級。東京海上日動を主体に生保、金融。海外保険事業を拡大。

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