IR(独自企業分析)

「半導体商社・サイバーセキュリティテーマ」東京エレクトロンデバイス

みんかぶ編集室
公開)

今回は、「半導体商社」「専門商社」「サイバーセキュリティ」などの「株テーマ」に関連する、東京エレクトロン デバイス株式会社(2760)です。

Key Points:

  • 高効率スマート社会(Society5.0)の到来を見据えた「技術商社機能を持つメーカー」へと進化を目指している。
  • 2022年3月期は2桁の「増収増益」。ビジネスモデルの変革を進めており、2023年3月期2Qにおいて通期業績を上方修正へ。
  • 株主還元においては、「80円増配」の205円を実施! 2023年3月期も増配予定で310円を想定。

目次

Identity 

★企業能力 KFS(Key Factor for Success = 重要成功要因):高効率スマート社会(Society5.0)の到来を見据えた、「技術商社機能を持つメーカー」への進化

 同社は、1986年の設立以来順調に成長しており、産業機器メーカーを中心とした顧客に、半導体製品、ボード、ソフトウェア、電子部品等の販売、PB(プライベートブランド)製品の開発・製造・販売、ネットワーク関連製品、ストレージ関連製品、セキュリティ関連製品の販売及び保守・監視サービス等を行っています。

 現在同社では、「技術商社機能を持つメーカー」への進化を目指して、技術商社機能としては、これまでの製品販売と技術サポート・保守に加えて、データビジネス・サービスビジネス・ストックビジネスを利益源泉とする高収益ビジネスへの移行に着手しています。また、設計・量産受託やモノづくりシステムの提供、ODMのメーカーへと進化させて収益性の向上に取り組むことを、重要な経営課題に掲げています。

Performance:全体業績

経営環境

 同社が対面する市場環境は、新型コロナウイルス感染症の影響による経済活動の制限と緩和が繰り返される中、世界経済の回復を背景に製造業の収益が改善し、設備投資が増加傾向となるなど、持ち直しの動きが見られますが、原油などの資源価格の高騰もあり、景気の先行きについては不透明な状況で推移しています。なお2023年3月期2Q時点では、ウクライナ情勢の長期化や資源価格の高騰に加え、急激かつ大幅な円安の進行により、景気の先行きについては不透明な状態が続いております。

2022年3月期決算の概要

P/L

P/Lは大幅な「増収増益」。売上高25.6%増、経常利益58.2%増、親会社株主に帰属する当期純利益61.8%増。

 P/Lは大幅な「増収増益」です。売上高179,907百万円(前期比25.6%増)、経常利益7,318百万円(前期比58.2%増)、親会社株主に帰属する当期純利益5,085 百万円(前期比61.8%増)となりました。直近2年間の業績推移を見た場合、売上高は二期連続の増収となっており、該当二期の平均増収率は32.87%です。また、営業利益も二期連続で増益傾向にあり、該当二期で平均113.41%の増益率となっています。増収効果を利益に直結させ、安定成長を実現する背景には当企業の高い競争力の維持だけでなく、徹底したコスト管理もあることが伺えます。

 なお2023年3月期2Qについては、売上高111,769百万円(前年同期比35.0%増)、経常利益5,208百万円(前年同期比109.9%増)、親会社株主に帰属する四半期純利益3,584百万円(前年同期比35.5%増)となりました。

B/S

 B/Sでは、自己資本比率は31.9%から28.7%へと推移。また、2023年3月期2Q決算においては26.5%へ。ROEは5.7ポイントUPして17.0%へと上昇!

 B/Sでは、総資産および純資産は増加しており、売上増加に伴う運転資金の借入増加から自己資本比率は前年度の31.9%から28.7%と3.2ポイントDOWNしています。また、2023年3月期2Qにおいても、総資産および純資産は増加しており、自己資本比率は26.5%となっています。

 流動資産は、受取手形、売掛金及び契約資産が7,674百万円増加したことに加え、前払費用が4,865百万円増加したことなどにより、前期末に比べ16,174百万円増加して98,895百万円となりました。固定資産は前期末に比べ757百万円増加の8,906百万円でした。これは主に、連結子会社である東京エレクトロン デバイス長崎株式会社における固定資産の譲渡及び取得に伴い、有形固定資産(建物及び構築物)が1,681百万円増加した一方で、連結子会社である株式会社ファーストに係るのれん及び無形固定資産の減損損失の計上等により1,499百万円減少したことによります。この結果、総資産は前期末に比べ16,931百万円増加し107,801百万円となりました。なお、2023年3月期2Q時点では、22,534百万円増加して130,336百万円となっています。

 流動負債は16,625百万円増加し56,622百万円となりました。これは主に、1年以内返済予定の長期借入金も含む短期借入金が6,403百万円増加したことに加え、前受金が4,275百万円増加したことによります。固定負債は、長期借入金が2,412百万円減少したことにより前期末に比べ2,059百万円減少し19,160百万円となりました。また純資産は、前期末に比べ2,365百万円増加し32,018百万円となりました。以上の結果、自己資本比率は28.7%となり、前連結会計年度末に比べ3.2ポイント低下しています。なお、2023年3月期2Q時点では、純資産は3,588百万円増加して35,606百万円へと推移しており、自己資本比率は26.5%と2.2ポイント低下しています。

C/F

フリーキャッシュフローは改善しているが、現金及び現金同等物期末残高は減少!

 フリーキャッシュフローは前期比較で改善が見られますがマイナスです。また、現金及び現金同等物期末残高は同レベルで推移しています。

 2022年3月期における現金及び現金同等物は、362百万円減少し、5,028百万円でした。なお各キャシュフローの状況では、営業活動の結果使用した資金は891百万円(前期は3,463百万円の支出)となりました。これは主に、売上債権及び契約資産の増加や前払費用の増加等の資金減少要因が、税金等調整前当期純利益や仕入債務の増加等の資金増加要因を上回ったためです。投資活動の結果使用した資金は155百万円(前期は469百万円の支出)でした。これは主に、有形固定資産の取得による支出によるものです。また、財務活動の結果得られた資金は606百万円(前期は5,079百万円の収入)となりました。これは主に、短期借入金の増加等の資金増加要因が、配当金の支払や自己株式の取得による支出等の資金減少要因を上回ったためです。

株主還元

前年同期比で80円増配の205円を実施!さらに2023年3月期は年間で310円を想定。

 株主還元においては、前期比80円増配の205円を実施。さらに2023年3月期は、年間配当金額310円を想定しています。

2023年3月期の見通し

 半導体の需給切迫については、同社が取り扱う半導体製品で一部改善の兆しが見られることに加え、半導体及び電子デバイス事業において産業機器向けや車載向け、通信機器向けを中心に半導体製品の需要が高水準で推移しており、ドル建て及びドルリンク販売においても為替相場が円安で推移しています。

 こうした中同社では、半導体及び電子デバイス事業において顧客商権の拡大に伴い堅調さを維持すること。そして、コンピュータシステム関連事業及びPB(プライベートブランド)事業においては、新規顧客の獲得に引き続き注力することにより、中期経営計画「VISION2025」に基づく事業成長の実現に向けて邁進しています。

2023年3月期の見通し(※2023年3月期2Q時点)

  • 売上高  :230,000百万円(前期比27.8%増)
  • 経常利益 :11,000百万円(前期比50.3%増)
  • 親会社株主に帰属する当期純利益:7,600百万円(前期比49.5%増)

Performance:セグメント別業績

 同社の事業は、CN事業(コンピュータシステム関連事業)及びEC事業(半導体及び電子デバイス事業)の2セグメントです。

CN事業(コンピュータシステム関連事業)

 クラウドへの移行やセキュリティ対策、サーバ仮想化といった企業のIT投資は堅調に推移していますが、半導体不足の影響で納期が長期化したことに加え、「収益認識に関する会計基準」等を適用したことにより、売上高23,460百万円(前期比2.0%減)、IT技術者の採用に伴う人件費の増加などから、セグメント利益(経常利益)は2,234百万円(前期比21.2%減)となりました。なお、2023年3月期2Q時点では、売上高12,670百万円(前年同期比26.7%増)でしたが、円安の進行に伴い仕入原価が上昇したことや、IT技術者の採用に伴い人件費が増加したことなどからセグメント利益(経常利益)は903百万円(前年同期比1.7%減)となっています。

EC事業(半導体及び電子デバイス事業)

 データ通信量の増大等を背景とした世界的な半導体需要の拡大に伴い、需給逼迫が継続している中、産業機器向けや車載向けをはじめ幅広い分野における半導体製品への需要が高水準で推移したことに加え、顧客商権の拡大も寄与したことなどから、売上高156,446百万円(前期比31.1% 増)、セグメント利益(経常利益)5,083百万円(前期比183.9%増)となりました。また2023年3月期2Q時点では、半導体の需給逼迫が継続している中、産業機器向けや車載向け、通信機器向けを中心に半導体製品への需要が高水準で推移したことに加え、ドル建て及びドルリンク販売において為替相場が円安で推移したことなどから、売上高99,098百万円(前年同期比36.2%増)、セグメント利益(経常利益)4,305百万円(前年同期比175.4%増)でした。加えて、部品逼迫による設計変更のための開発受託も増加しています。

ESG Elements:環境・社会・ガバナンス

SDGsの認識浸透とともに、ESG項目は企業の成長可能性をはかる視点のひとつになりつつあります。

Environment(環境)・Social(社会)

 同社では、サステナビリティの視点から、3つのマテリアリティ(重要課題)を設定しています。気候変動への対応としては「TCFDの提言に沿った情報開示」を推進しており、気候変動問題への取り組みの一環として、温室効果ガス(Co2)の排出削減目標を設定する予定です。

Governance(ガバナンス)

 コーポレート・ガバナンスにおける多様性の視点では、社外取締役比率は33.3%、女性役員は15.4%です。なお、監査役を含めた社外役員比率は46.2%です。

Plan 中期経営計画

 同社では、いわゆる高効率スマート社会(Society5.0)の到来が予測される中、「デジタルトランスフォーメーションを実現する製品・サービスを提供し高効率スマート社会の持続的発展に貢献する」ことをミッションに掲げています。

 ビジネスモデルの変革に着手しており、これまでの「メーカー機能を持つ技術商社」から、ミッションの実現に向けて「技術商社機能を持つメーカー」へと進化を目指しています。技術商社機能とは、社員全員のマーケティングにより、データビジネス・サービスビジネス・ストックビジネスを利益源泉とする高収益ビジネスへ移行し、成長分野の技術進展を支える半導体の販売を通じて顧客基盤を維持・拡大し、高収益ビジネス移行の礎とすることにより、新しい事業形態へと進化し、収益性を向上させることを指しています。

 またメーカーとして目指す形を、①「データサイエンス・画像処理・ロボティクスを駆使したモノづくりシステムメーカー」、②「設計・量産受託サービスで培った技術に基づくODMメーカー」、③「グローバルNo.1のシステム開発力・提案力を有する設計開発部門」、④「マスカスタマイゼーション対応の高効率スマート工場」を4つの重点ポイントにまとめています。

 このように、2025年3月期を最終年度とする中期経営計画「VISION2025」においては、技術商社機能として、セキュリティ、AI、クラウド分野におけるサービスビジネスの強化を、メーカー機能としてODM、モノづくりシステムの海外拡販、設計・量産受託サービス等を重点施策として掲げています。なお、最終年度と定める2025年3月期には、売上高「2,000億円±10%」、経常利益率「5%超」、ROE「15%超」を財務モデルと定めています。

最終年度(2025年3月期)における財務モデル

  • 売上高:2,000億円±10%
  • 経常利益率:5%超
  • ROE:15%超

Out Look まとめ

同社の安定成長を実現する背景には、「技術商社機能を持つメーカー」へと進化することで、高い競争力の維持だけでなく、ビジネスモデルそのものを高収益化する戦略が伺えます。高効率スマート社会(Society5.0)の到来を見据え、DX化を軸に利益成長への取り組みを進める、この企業姿勢は「◎」です。

【企業分析】東京エレクトロンデバイス(2760)『この会社の〇は何?』

★注目の「半導体商社」「専門商社」「サイバーセキュリティ」テーマ株

マクニカホールディングス<3132>
独立系半導体商社で国内大手。技術開発に強み。AI分野、セキュリティ製品も。

レスターホールディングス<3156>
UKCHDとバイテックHD統合、エレクトロニクス総合商社。半導体、電子機器・部品、エネルギー。

菱洋エレクトロ<8068>
三菱電機系、半導体商社。インテルなど外国製に強み。情報ソリューションも展開。

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