IR(独自企業分析)

市場拡大の波にのり急成長!在宅医療のDXで高齢化社会を支える株式会社eWeLL<5038>

 独自の観点で注目企業の価値を分析するMINKABUマトリクス企業分析。今回は、「訪問看護」ステーションを中心に在宅医療の業務をDXで効率化する、株式会社eWeLL(イーウェル)<5038>(以下、eWeLL)をピックアップします。

Key Point

目次

「株式会社eWeLL」ってどんな会社?

 eWeLLは、2012年に大阪で設立され、2022年に東証グロース市場にて上場しました。代表取締役社長の中野剛人氏は、元プロの水上バイク選手という異色の経歴。生死をさまようほどの大事故から一命をとりとめたことをきっかけに、恩返しとして医療業界の支援事業を志すようになったそうです。

課題だらけの「訪問看護市場」をDXによる生産性向上で変革

「訪問看護」は「訪問介護」とは違い、すべての世代を対象に医療行為を行うサービスで、看護師が療養者宅に訪問して看護ケアを行います。少子高齢化により訪問看護の需要は伸びていますが、現在看護師不足が深刻な問題となっています。

 eWeLLは、訪問看護ステーションに向けたクラウド型電子カルテ「iBow(アイボウ)」を中心に、BPOサービス、医療データビジネス等により在宅医療のDXを推進。在宅医療のプラットフォーマーとして、訪問看護の「業務効率化」を行うことで生産性を高め、看護師不足の解消を図っています。

 主力サービスであるクラウドサービス「iBow」は、あらゆる訪問看護の業務をワンストップでできることが強み。アナログだったカルテ作成や情報共有などの業務を、訪問先でも行なえるようスマートフォンやタブレットから使用できるようにしています。満足度が非常に高く、サービス継続率は99.73%を誇ります。

 また、内閣府によると日本の高齢者人口比率は今後2070年まで上がり続けることが予測されており、加速する少子高齢化が訪問看護市場拡大の追い風となり、同社のサービス契約数は前年同期比17.8%と上昇しています。

 同社は、これまで「iBow」により蓄積されてきた、医療ビッグデータを活用したビジネス展開も進めています。

 今年8月には、地域包括ケアプラットフォーム「けあログっと」の提供を開始。退院支援看護師などが、退院患者に最適な訪問看護ステーションをスピーディーに見つけることができるサービスです。国策である在院日数の短縮と在宅復帰率の向上に貢献できることが期待されています。

 2025年問題を目前に控え、在宅医療のプラットフォーマーとしての地位確立を目指しています。

eWeLLの企業価値を4つの独自視点からチェック!

 次に、eWeLLの企業価値について分析していきましょう。評判(価値)、実利(実績)、共感(志向)、姿勢(ESG)の4つの観点からチェックしていきます。

 以下では、その内容をピックアップして解説していきます。まずは、各分析の結果を見てみましょう。

1.評判価値:Excellent

 2024年8月現在の時価総額は249億円と個人および中小型株ファンドがターゲットとするレベルに。PERおよびPBRなど株式関連指標も良好で、配当性向は23.2%となっています。

2. 実利(業績)価値:Excellent

 2024年12月期2Qは前年同期比「増収増益」。売上高は12億5百万円で前年同期と比べると24.2%UPの増収となりました。

3. 共感(志向)価値:Excellent

 日本の在宅医療領域の課題解決のために、中期経営計画において明確なKPI目標と具体的な施策を設定しています。

4. 姿勢(ESG)価値:Good

 サステナブル経営に不可欠なESGを意識した企業姿勢と、地域医療の存続と発展を促す事業の社会性が評価ポイントです。女性役員比率は12.5%、管理職における女性比率は0.0%と、今後の改善が期待されます。

 それでは各項目について詳しく見ていきましょう。

PER、PBRともに非常に高い数値

 2024年8月20日現在の時価総額は、249億6千8百万円と200億円以上で個人を中心とした中小型株ファンドがターゲットとする時価総額レベルといえます。

 PERは38.66倍と10倍以上、PBRも1倍以上の14.77倍と高い数値となっています。また配当は、2023年12月期は5円増配して20円で実施、配当性向も23.2%と0.9%UPしていることが評価ポイントとなりました。

※株式分割後の数値(2023.12)

過去最高の契約獲得数で前年同期比「増収増益」

 直近2024年12月期2Qは、前年同期比「増収増益」。

 売上高は12億5百万円で前年同期比24.2%UPで二桁の増収。利益においても、すべて二桁の「増益」となっています。主力サービスの「iBow」の新規顧客獲得が順調に推移しており、直近の四半期でも過去最高の契約獲得数となっています。積み上げ型のビジネスモデルで、既存顧客の収益に新規顧客を加え、持続的な売上成長を実現していることが分かります。


 貸借対照表サマリーによると、自己資本比率は+5.0ポイントUPの76.0%で、財務の健全性レベルが非常に高いことが分かります。企業の稼ぐ力を表すROEにおいては、12.0ポイントダウンして43.9%となっていますが、自己資本の充実が進んだためであり、同業他社と比べても傑出して高い数値を誇っています。8~10%といわれる国内平均レベルを大きくクリアしており、経営の効率性の高さが伺えます。

訪問看護市場の成長率は12.1%、診療報酬改定が追い風に

 2024年度に診療報酬改定があり、訪問看護の市場規模は過去13年間で約4.4倍の9,017億円に拡大、年平均成長率は12.1%と勢いのある市場です。さらに訪問看護ステーションの数も年平均で8.8%成長、今年は前年比10.4%UPで過去最高の増加となっています。高齢化社会が加速し、需要はさらに伸びると言われています。

 中期経営計画においては、明確なKPI目標と具体的な施策を設定できています。

 今年4月には国内初となるAIを活用した訪問看護計画を作成するシステムを提供開始、8月には、「2025年問題」にむけて病院と在宅医療・介護の課題を解決する地域包括ケアプラットフォーム「けあログっと」をリリース。今後も成長エンジンである「iBow」に蓄積した医療データを活用した新規性の高いサービスを次々と展開していくようです。

 同社は「在宅療養に新しい価値の創造を行い、すべての人が安心して暮らせる社会の実現」を目指しており、日本の在宅医療領域の課題解決のために、新たなサービスの開発・提供を推進しています。

DX支援で地域医療の発展を担う

 訪問看護ステーションの業務をDXで支援することで、地域医療の存続と発展を促すと共に、移動の効率化と書類のペーパレス化の促進に期待されます。

 管理職における女性比率0.0%ですが、上場して2年あまりの急成長企業のため、これからに注目です。女性従業員は70.8%なので、組織体制は「人的資本」の充実とともに整備されることが期待できます。一方で、社外役員は、8名中4名で50%、女性役員は1名で12.5%という状況で改善が望まれます。

 また、コーポレート・ガバナンスへの意識が高く、今後さらなる企業価値の向上が見込まれます。

 加速する少子高齢化社会に向け、在宅医療のDXと地域包括ケアの発展を推進する株式会社eWeLL<5038>を紹介しました。

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