主力事業好調で「黒転」を達成!AIやIP無線機の共同開発で通期の成長加速目指すサイエンスアーツ(4412)

みんかぶ編集室
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記事のポイント

  • サイエンスアーツ(4412)は、次世代IP無線アプリ「Buddycom」で4年連続シェアNo.1を獲得
  • 2025年8月期2Qで黒字転換し、通期も前倒しでの黒字化を見込む
  • 楽天グループやJVCケンウッドと提携し、AI・海外展開を含む成長戦略を加速中
  • 中期経営計画では2030年までに売上50億円、営業利益率20%を超えることを目指す

 現場で働く人々──いわゆる「フロントラインワーカー」のコミュニケーションを支える、次世代IP無線アプリ『Buddycom(バディコム)』が、市場での広がりを見せています。

 1,300社を超える企業が導入し、現場での新しい業務コミュニケーションのインフラとして活用。鉄道・小売・医療・建設・警備など多岐にわたる業界業種で、“現場のDX”を体現する存在となりつつあります。

 開発・提供しているのは、東京・渋谷に拠点を構える株式会社サイエンスアーツ(4412)。2025年8月期2Qでは黒字転換を果たすなど、高成長を遂げている注目企業です。

 今回はサイエンスアーツがどのような企業なのか、最新の決算発表をもとに解説します。

目次

“現場で働く人々”を美しくつなげるサイエンスアーツとは? 

 

 サイエンスアーツは、無線機に代わるアプリBuddycomで、“現場で働く人々”を美しくつなげ、現場業務の効率化に貢献している企業です。2003年9月に設立され、2021年11月には東京証券取引所マザーズ市場へ上場。

 フロントラインワーカーに未来のDXを提供することをミッションに掲げ、現場の声に耳を傾けながら、プロダクト開発を行ってきました。

中核をなす次世代IP無線アプリ「Buddycom」とは

 サイエンスアーツの事業の中核となっているのは、フロントラインワーカーをつなげるライブコミュニケーションプラットフォームのBuddycomです。

 音声、映像、テキスト、位置情報をリアルタイムにやり取りできる“次世代IP無線アプリ”で、スマートフォンやタブレットを利用して誰でも簡単に利用できる点が特徴です。業務用無線機やインカムの代替手段としてだけでなく、チャットやWEB会議では果たし得なかった、現場の日々の業務においてリアルタイムに連携できることをご評価いただき、鉄道の運行管理、小売業の店舗内連携、医療現場でのコミュニケーションなど、幅広い業種・業界で活用され、業務効率化に貢献しています。

 さらには大阪・関西万博の警備や災害現場での救助活動などのシーンでも採用。総務省の分類する国内99業種(中分類)のうち93業種に広がっています。

多様な機能で競合製品を抑え、シェアNo.1を獲得

 Buddycomは、従来の無線機の課題であった通信距離の制限などを解消し、スマートフォン上で手軽に導入できるという点が高く評価されています。また、音声に加え、映像・テキスト・位置情報の共有といった競合製品を上回る多機能性で市場の信頼を獲得し、4年連続シェアNo.1(※)に輝いています。

※音声(映像)コミュニケーションツール出荷金額・社数(ノンデスクワーカー向け) デロイト トーマツミック経済研究所「デスクレス SaaS 市場の実態と展望 2024 年度版」

 サイエンスアーツのビジネスモデルの強みは、ソフトウェアだけではなく、顧客のニーズに応じてマイクやインカムなどのハードウェアも提供している点です。多くのSaaS企業がソフトウェア単体の提供にとどまるなか、現場コミュニケーションのラストワンマイルを担うハードも含めた2本柱による事業展開が、トップシェア獲得という実績に結び着いた要因のひとつと言えます。

 Buddycomが市場で勝ち続ける理由やサイエンスアーツのビジョンについては、以下のインタビューで平岡秀一社長が詳しく語っています。

 それでは、2025年8月期2Qの決算発表をもとに、足元の業績について解説します。

決算発表のポイント

  • 2025年8月期2Q決算では、純損益の「黒転」を達成し、主力サービスであるBuddycomの利用料の売上成長率が加速中!また通期決算においても中期計画より1年前倒しで通年の「黒字化」を見込む。
  • 中期経営計画では、「売上高における年平均成長率(CAGR):+30%」、2030年8月期の「売上高50億円、営業利益率20%」を前提として、昨年締結した楽天およびJVCケンウッドとの資本業務提携を通じて一層の成長を目指す。

Performance:全体業績

経営環境

 国内ソフトウェア市場の状況は、働き方改革や人手不足の解消などの課題解決に向けコミュニケーションの促進や業務の自動化・効率化につながるソフトウェアの導入や生成AIの活用による機能強化や高付加価値化が進み、2024年度は2兆8,072億円*1が見込まれています。また、フロントラインワーカーが働く最前線の現場では、法人向けモバイル通信端末市場の拡大、AIや画像認識等の精度向上、5Gの普及による映像等大容量データの活用など、さらなるDX化の拡大が期待されます。こうした中で、同社が提供するサービス「Buddycom」の国内の潜在市場規模は約1,900億円と推計*2されます。サイエンスアーツでは、「フロントラインワーカーをつなげるライブコミュニケーションプラットフォーム」の新たな市場の創出を図りながら、開発・販売の強化を目指しています。

*1: 株式会社富士キメラ総研「ソフトウェアビジネス新市場2024年版」(2024年8月)

*2: 国内における全ての潜在顧客、フロントラインワーカーに導入された場合の、顧客による年間支出総金額。

(日本のフロントラインワーカー人口)

(2024年4月の総務省統計局「2023年度労働力調査年報」より推計)×ID当たりの平均年間課金額)

2025年8月期2Q決算の概要

P/Lは純損益で「黒転」を達成!

 直近決算の2025年8月期2Qは、純損益の「黒転」を達成しています。売上高7億2,915万円(前年同期比30.3%増)、営業利益3,247万円(前年同期営業損失1,543万円)、経常利益1,743万円(前年同期経常損失1,698万円)、中間純利益は1,494万円(前年同期中間純損失1,603万円)となりました。

 また当該2Q期間においては 、「Buddycom」の開発及び販売に注力しました。売上高は順調に推移した一方で、「Buddycom」の開発及び販売強化のための人員増加による採用費及び人件費の増加、知名度向上のための広告宣伝費の増加等により、販売費及び一般管理費も増加しています。

 また、2025年8月通期予想でも売上高で二桁増、営業損益の「黒転」を目指しています。この業績予想は、同社の中長期計画よりも1期前倒しで通年での「黒字化」達成の想定です。

自己資本比率は19.4ポイントUPして69.4%へと推移しており、B/Sは改善傾向!

 2025年8月期2Q時点の総資産は、9億481万円増加し、18億5,827万円となりました。これは主に、現金及び預金の増加(前事業年度末比8億8,548万円増)、前払費用の増加(前事業年度末比1,737万円増)等によるものです。

 また、純資産は8億1,248万円増加し、12億8,904万円となりました。新株式の発行による資本金の増加(前事業年度末比3億9,877万円増)、資本準備金の増加(前事業年度末比3億9,877万円増)、中間純利益計上による利益剰余金の増加(前事業年度末比1,494万円増)等によるものです。

 なお経営効率性を示す指標として当期のROEは1.5%ですが、2030年8月期には30%超を目標としています。

キャッシュ・フロー

 2025年8月期2Q時点の現金フリーキャッシュフローは1億2,900万円(前事業年度末比1億6,100万円増)となりました。また現金及び現金同等物は、14億4,200万円(前事業年度末比8億7,800万円増)となりました。また、各キャッシュ・フローの状況は以下のとおりです。

 営業活動によるキャッシュ・フローは、1億3,300万円(前年同期は800万円の支出)となりました。前受収益の増加額6,500万円、税引前中間純利益1,700万円等の収入要因及び、売上債権の増加額1,100万円、未払消費税等の減少額100万円等の支出が主な要因です。

 投資活動によるキャッシュ・フローは、400万円(前年同期は2,600万円の支出)となりました。これは、有形固定資産の取得による支出300万円、敷金の差入による支出72万円によるものです。

 財務活動によるキャッシュ・フローは、7億5,600万円(前年同期は9,900万円の収入)となりました。これは、株式の発行による収入7億6,720万円及び長期借入金の返済による支出1,000万円等によるものです。

Performance:セグメント別業績

 同社のセグメントは、「Buddycom事業」と「その他事業」です。2025年8月期2Q時点でのセグメント別業績は、Buddycom事業では、同社の大手・中小企業の新規開拓戦略が順調に進捗しており、マーケティング強化による知名度の向上、営業人員の増強、代理店営業力の強化、SMB*1向けの販売強化等により契約社数が増加し1,346社(前事業年度末1,077社)となりました。また、ARR*2は8億7,614万円(前事業年度末7億3,905万円)でした。

 この結果、Buddycom利用料売上が4億960万円(前年同期比35.8%増)、アクセサリー売上が3億1,815万円(前年同期比24.6%増)となり、セグメント売上高は7億2,775万円(前年同期比30.7%増)、セグメント利益は3,128万円(前年同期セグメント損失1,769万円)となりました。

*1:SMB:Small and Medium-sized Businessの略称。当社では従業員数が500人未満の企業と定義。

*2:ARR:Annual Recurrinng Revenueの略称。各期末月のBuddycom利用料売上を12倍して算出。

 その他事業であるALTIBASE事業については積極的には展開しない方針で、当該2Q決算におけるその他の売上高は140万円(前年同期比49.1%減)となり、セグメント利益は118万円(前年同期比47.3%減)でした。

AI分野強化や国際市場進出で成長率30%継続を目指す攻めの姿勢

 こうした足元の好調な業績を背景に、サイエンスアーツはさらに高い成長目標を掲げています。中期経営計画では、2030年度までに売上高50億円、営業利益率20%を超えることを目指し、年平均成長率(CAGR)30%の継続を目標としています。

 プロダクト戦略では、楽天グループおよびJVCケンウッドとの資本業務提携を通じた協業を軸に、AI分野への注力や北米市場への国際展開により事業基盤をさらに拡大する方針です。

 JVCケンウッドは業務用無線機にて、国内シェアNo.1、グローバルではNo.3シェアを握っておりますが、その無線機(ハード)開発力とサイエンスアーツのIP無線アプリ(ソフト)の開発力を活かすことで、IP無線機の共同開発を行っております。またJVCケンウッドの販売ネットワークを活かすことで、北米をはじめとした海外へ展開を進めるとのことです。

 AI分野においては、Buddycomが日々の日常業務に使用されており、フロントラインワーカーに一番身近にいる存在として、AIをフロントラインワーカー約4,000万人へ1人1台のBuddycom AIエージェントを届けるとしています。既にAIと連携したサービスの提供は開始しているほか、ソフトバンクや楽天グループなどとの協業も進めています。

 国内市場においては、「大手企業」「公共・自治体」「中小企業」の3つのセグメントで販売を強化。「フロントラインワーカーをつなげるライブコミュニケーションプラットフォーム」としてのBuddycomの価値を広く届けながら、新たな市場の創出と成長機会の最大化を図っていくとしています。

 攻めの姿勢と明確な成長戦略を併せ持つサイエンスアーツ。今後のさらなる飛躍に大きな期待が寄せられる企業といえるでしょう。

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