No.1地域金融グループ、コンコルディアFGが「横浜FG」に社名変更へ。 利上げを追い風に連続2桁増益、株主還元も強化

記事のポイント
- “地銀No.1”の横浜銀行を中核とした地域金融グループ「コンコルディアFG」
- 10月には「横浜フィナンシャルグループ」へ社名を変更
- 株主優待を、地域の特産品を掲載したカタログギフトに変更するなど株主還元にも力をいれる
- マーケットポテンシャルの高い神奈川・東京でソリューションビジネスを展開し今後の収益増加を目指す
「金利のある世界」が到来して1年以上が経過し、金融政策の正常化は新たな局面を迎えています。日本銀行の次の政策変更に注目が集まるなか、株式市場では「銀行」や「地方銀行」といったテーマが人気ランキング上位に入るなど、投資家の関心は非常に高まっています。
実際に、利上げ後の決算では大手銀行が本業の収益を大きく伸ばしており、金利上昇の恩恵が明確に現れています。地方銀行においても、各行の戦略や強みによって展開の仕方に違いが出てきており、注目が集まる状況です。

コンコルディア・フィナンシャルグループ(7186)は、地方銀行のひとつである「横浜銀行」を中核とする企業で、 神奈川・東京エリアという日本屈指の経済都市で事業を展開しており、地銀トップクラスの企業規模と収益力を誇ります。長い歴史の中で培ったノウハウと地域社会からの信頼、そして戦略的M&Aなどを原動力に成長を続ける同FG。2025年3月末基準から株主優待を地域に特化した内容に変更したことに加えて、2025年10月には地域の名を冠した「横浜フィナンシャルグループ」への社名変更を予定しており、株主への還元、地域への貢献に積極的な姿勢が見てとれます。
目次
横浜銀行を中核としたNo.1地域金融グループ
コンコルディアFGは、100年以上の歴史を誇る「横浜銀行」を中核とする地域金融グループです。2016年4月、同銀行と「東日本銀行」が経営統合して設立され、2023年に「神奈川銀行」が、今年4月には「L&Fアセットファイナンス」が連結子会社として加わりました。
コンコルディアFGという社名は、「調和」や「協調」を意味し、「お客さまのために、グループ各社がこころをあわせて取り組んでいく」という思いが込められています。
コンコルディアFGが発足してから9年以上が経過し、グループ各社の連携が深まったこと、そして、より広く、わかりやすく認知してもらうため、2025年10月に「横浜フィナンシャルグループ」への社名変更を予定しています。
新社名のもと、「地域に密着した金融グループ」としてのさらなる成長を目指していきます。
2025年3月末時点での預金残高は19.7兆円、貸出金残高は16.6兆円と、地方銀行のなかでトップクラスの座に位置しています。

地方銀行トップクラスの企業規模と収益力の根底にあるのは、神奈川・東京という、世界でも有数の巨大経済都市から得ている信頼です。両地域には国内総人口の約20%が集中し、上場企業の約60%が集積、民営事業所や富裕層が集中するなどマーケットとしての潜在力が高いと言えます。

この地域において、同FGは212店舗を展開し、グループの総合力による専門性の高いソリューションを提供。法人約25万社、個人約500万人という強固な顧客基盤を築いてきました。
特に主要マーケットである神奈川県内では、大手行(メガバンク+りそな)を抑えて貸出金、預金ともにシェア1位を維持するとともに、預貸金シェアを着実に伸ばしています。

株主還元にも表れる地域第一の経営理念
No.1地域金融グループとして、同FGが掲げている経営理念は「地域にとってなくてはならない金融グループ」です。また、長期的に目指す姿を「地域に根ざし、ともに歩む存在として選ばれるソリューション・カンパニー」としています。この地域貢献を第一とする企業姿勢は株主還元策にも表れています。
同FGは、株主優待制度を2025年3月末基準から変更しました。これまでは定期預金金利上乗せなどを優待メニューとしていましたが、神奈川・東京の企業が扱う特産品などを中心としたカタログギフトへと切り替えました。

保有株式数1,000株以上5,000株未満で3,000円相当、5,000株以上で6,000円相当のカタログギフトとなり、横浜銘菓などの特産品や特定の地域の商店街などで使える商品券、レストランの利用券などがもらえます。口座の有無に関わらず全国から広く株主を募り、特産品や地域への送客につながる体験型ギフトなどを優待品とすることで、地域の魅力発信に取り組んでいます。
株式を継続して1年以上保有することが条件となっていますが、2026年3月末基準に限り、「継続して6か月以上保有された方」(※2025年9月末日および2026年3月末日の株主名簿に同一株主番号にて1,000株以上の保有が連続して記録された株主)も対象となります*1。

日銀の利上げや国内営業部門の好調を受け、2025年度は15%の増益を計画

2024年度(2024年4月~2025年3月)決算における当期純利益は、日銀の利上げに伴う貸し出しの利ざや改善などを追い風に、前年度比23%増の828億円となりました。
2025年度の当期純利益は、前年度比15%増の955億円を計画しており、2025年8月に発表した第1四半期(2025年4月~2025年6月)決算では、通期業績予想比28.3%と好調に進捗しています。
中期経営計画の最終年度である2027年度には、当期純利益1,229億円を計画しており、ROEは9.0%超をめざしています(2026年度から政策金利が0.75%となり、維持されることが前提条件)。
総合力を活かした地域密着型のソリューションビジネス
総合的な金融グループとして「ソリューション・カンパニー」を目指す同FGの姿勢は、2027年度まで(2025年4月~2027年3月)の中期経営計画にも色濃く反映されています。
企業価値向上に向けた取り組みとして、PBRと相関性の高いROEの改善を中期経営計画の主要な目標に設定。本中期経営計画期間を「未来への飛躍につなげる3年間」と位置づけ、以下の3つを基本テーマに掲げ、重点戦略に取り組んでいます。

特に注目したいのが、ソリューションビジネスの深化・拡大と戦略的投資・提携を掲げる「Growth(成長)」の部分です。
他地域の地方銀行と異なり上場企業の多い神奈川・東京をホームマーケットとする同FGは、資本効率の改善や企業価値向上のための提案など、シンプルな融資にとどまらない高度な金融技術を活かしたソリューションビジネスを展開しています。
こうした事業戦略がストラクチャードファイナンス(仕組み金融)などのより収益性の高い貸出の増加につながり、収益増加を実現しています。

個人の顧客に対しては、ライフステージに応じた幅広いソリューションを提供していることに加えて、特に富裕層向けに、相続・事業承継や不動産活用、金融資産運用に関するコンサルティングなど様々な課題に対応したサービスをオーダーメイド・ワンストップで提供することで貸出やコンサルティングによる収益を拡大しています。

また、戦略的M&Aを通じた新たな成長機会の獲得に向けた取り組みを進めています。
2025年4月には、三井住友信託銀行から株式の85%を取得し、L&Fアセットファイナンスを連結子会社化しました。
L&Fアセットファイナンスはおもに個人顧客を対象とした不動産担保金融領域において、長年培った独自の審査ノウハウのもと、銀行が必ずしも十分に対応できていない顧客への多様な金融ニーズに対応するノンバンク領域に強みを持つ企業です。
空き家・築古物件の増加など社会構造の変容に伴う金融ニーズ多様化への対応力強化を通じて、地域社会の課題解決に貢献するとともに、新たな成長機会の創出をめざしています。今回の子会社化により、ROEは0.4%ポイント程度の改善効果を見込んでいます。
今後もこうした戦略的M&Aに積極的にチャレンジしていくとしています。

株主還元については、累進的な配当を基本とし、配当性向は40%程度とするほか、機動的に自己株式を取得することを還元方針として掲げています。同FG設立以来、減配はなく、1株あたり配当金を着実に向上させています。2024年度の年間配当は、前期比+6円の29円。また、200億円の自己株式取得を実施し、総還元性向は64%と前年度を上回る高い水準となりました。2025年度(2025年4月~2026年3月)の年間配当は、前年度比+5円の34円を予定。第1四半期決算の公表にあわせて、100億円の自己株式取得の実施を発表しています。

地域と株主への還元を充実 「金利のある世界」でさらなる成長に期待
直近の好調な業績に目が行きがちですが、グループ創設の2016年度以降、マイナス金利政策で銀行業界が苦戦する中でも、2020年度以降のソリューションビジネスへの転換を機に、自力で業績を成長させてきました。

横浜銀行を中心とした確固たる基盤を持ち、日本経済の中心地である神奈川・東京の企業や個人に深く向き合ってきた結果と言えるでしょう。
中でも中核を担う神奈川は、国内で2番目に多い生産人口(約580万人)を抱え、県内総生産は35兆円超(2021年度)と、フィンランドの国内総生産に匹敵する規模を誇ります。さらに、国際交流都市として外資系企業の進出も盛んで、新たなビジネスチャンスが日々生まれる地域です。
このような高い潜在力を持つ地域に根差し、成長を続ける同FGは、株主優待制度を地域に特化した内容に刷新し、株主と地域への還元をますます強化。また、L&Fアセットファイナンスを連結子会社化し、新たな成長機会の創出を目指しています。さらに、2025年10月には「横浜フィナンシャルグループ」への社名変更を控え、より地域に密着した金融グループとしての姿勢を明確に打ち出しています。
社名変更やM&Aといった新たな展開を機に、地域との連携を深めながらどのような成長戦略を描いていくのか、「金利のある世界」でますますその動向に注目が集まりそうです。