第4回 通勤災害[その1]通勤時に潜む危険、労災補償の当否を決める「逸脱」「中断」に注意せよ!

※写真はイメージです。
本連載は、ニュースで報道される事故・災害などをファイナンシャルプランナーが調査して、その被害額、行政支援、資産を守るための方法などの情報をお知らせしています。
今回は「通勤災害」をテーマにお話ししたいと思います。
目次
いつ起こるかわからない通勤途上に潜む災害
8月に悲しい事件が起こりました。
小田急線刺傷事件です。
小田急小田原線の乗客10人が刺傷された事件で、すでに犯人は殺人未遂などの容疑で逮捕されています。小田急線刺傷事件に見舞われた方々に深くお見舞いを申し上げます。
この事件は会社帰りの時間帯に起きていますが、このように通勤時に不幸にも事件や事故に巻き込まれることがあります。日々の通勤に思わぬ危険が潜んでいるので、気を付けていただければと思います。
そもそも通勤災害とは
そもそも通勤災害とはどのようなものを指して言うのでしょうか。字義どおりに考えれば会社に通勤する際に起こる災害のことを指しますが、労働者災害補償保険(以下、労災保険)ではより細かな定義付けがされています。
すなわち労災保険では、「通勤中に被った病気やケガ、通勤を原因として障害が残った場合や、死亡してしまった場合」を通勤災害と言います。
例えば
- 病気の場合 ex. 通勤途中に飲み物を購入して食中毒になってしまった
- ケガの場合 ex. 通勤途中に駅の階段で転倒してしまった
- 障害の場合 ex. 通勤途中に駅の階段で転倒し、歩けなくなる障害を負ってしまった
- 死亡の場合 ex. 通勤途中で通り魔に遭って死傷してしまった
といった場合です。
また「通勤途中に持病が悪化して倒れてしまった」というような場合は通勤災害には該当しません。
さらに、新型コロナウイルスに感染してしまった場合は扱いが難しく、感染経路が明確で、潜伏期間に矛盾がなく通勤以外の感染源が否定された場合は通勤災害の可能性もありますが、そもそも不特定多数と接している中であるため、感染源をピンポイントに特定するのは難しいともいえます。
以上のように通勤災害には労災保険で補償されるものと補償されないものがあることを知っておくとよいです。
どこまでを「通勤」というのか
それでは通勤災害の「通勤」とはどこまでのことを言うのでしょうか。これも細かく定義付けがされています。
通勤に際しての移動
通勤に際しての移動とは次のとおりです。
- 住居と就業の場所との間の往復
- 就業の場所から他の就業場所への移動
- 住居と就業な場所との間の往復に先行し、または後続する住居間の移動
通勤とは、これらの区間を「合理的な経路や方法」によって移動するものをいいます。
なお業務の性質を有しないものや、「移動の経路を逸脱した場合」や「移動を中断した場合」は「通勤」にはならないので注意が必要です(逸脱および中断については、次章でご説明いたします)。
それでは上記1~3について詳しく説明しましょう。
1. 住居と就業場所との間の往復
これはそのままの意味で、通勤途中に寄り道をして公園に行く場合等は通勤とは認められず「移動の経路を逸脱した場合」になります。
2.就業の場所から他の就業の場所への移動
これは本業としている仕事の会社から副業としてやっているアルバイト先への移動などをいいます。同じ会社の営業所の間の移動は含まれません。
副業としてやっているアルバイト先に行かず、どこかへ遊びに行ったりした場合や寄り道をした場合は通勤とは認められず「移動の経路を逸脱した場合」になります。
3.住居と就業の場所との間の往復に先行し、または後続する住居間の移動
これは一人暮らしをしている住居と就業場所で往復していたところ会社から実家に帰る場合、もしくはその実家から出勤する場合をいいます。
これら以外の住居から就業場所まで合理的な経路や方法によらない場合は、移動の経路の逸脱や中断と見なされてしまいます。
移動経路の逸脱と中断
次に移動の経路の逸脱および中断について分かりやすくご説明しましょう。