第11回 高齢ドライバー[その1] 多発する死亡事故、後期高齢者による交通事故を防止せよ!

今回から3回に分けて、高齢ドライバーによる交通事故とその対策について考えます。
目次
東池袋自動車暴走死傷事故
2019年4月19日、東京都豊島区東池袋の交差点にて、高齢者の運転する乗用車が暴走し、歩行者や自転車などをはねて死傷させる事故が起きました。
この事故を契機に高齢者ドライバーの運転は危険だとされ免許返納運動が起こり、令和4年には改正道路交通法が施行されることになりますが、本当に高齢ドライバーによる運転は危険で、自粛や規制をする必要があるのでしょうか。
高齢ドライバーの交通事故率の検証
高齢ドライバーは「ゆっくり安全運転」というイメージがありますが、もしそのとおりなら高齢ドライバーが交通事故を起こす確率は、一般ドライバーよりも低いはずです。
そこで高齢ドライバーの事故状況について調べることにしました。
まず死亡事故を起こす確率(免許保有者10万人あたりの死亡事故件数、令和元年、警察庁資料による)についてですが、75歳未満のドライバーが10万人あたり3.1件なのに対し、75歳以上のドライバーは6.9件、80歳以上のドライバーは9.8件でした。
死亡事故発生率は、後期高齢者は約2倍、80歳以上に限定すると約3倍も高くなっています。
次に交通事故による死者数を見てみます。
警察庁の交通事故統計によると、2021年の交通事故死者数は、1948年から現行の統計を取り始めて以降で最少の2636人でした。
一方、75歳以上の高齢ドライバーによる死亡事故件数は増減を繰り返しており、2009年から2019年までの交通事故死者数、高齢ドライバーによる事故死者数の推移を表にすると次のようになります。

表を見ると、交通事故による死者数は10年後に約35%も減っているのに、高齢ドライバーによる死亡事故件数は増減を繰り返していることが分かります。
全体の交通事故死亡者数は、(2021年に)さらに12%も減少していることから、高齢ドライバーの交通事故対策はやはり必要と言えるでしょう。