基準価額の決まり方から分かる投資家保護の仕組みとは?【第6回】

N商事に務める福山春雅(通称ハルちゃん)が何やら落ち込んでいます。N商事顧問で元証券マンの瀬山が理由を聞いてみると、ネットオークションで欲しい商品があって入札していたが、さらに高い入札が入って買えなかったようです。
入札時点ではこんなに高くなると思わなかったので、入札額を低めにしていたことを後悔しています。
目次
投資信託では、いくらで購入できるか申込時に分からない

そういえば投資信託って、買う時にはいくらで買えるか分からないんですか?


そうですよ。申込を締め切った後に値段が決まりますから。


じゃあ株価が大きく上がっている時とかだと、思ったよりも高い値段になっちゃったりするんですか?


まぁその可能性もありますね。


でも、なんで買う時に値段が分からないんですか?オークションみたいに入札しているとか?


入札はしませんね。実は投資家を守るために、買う時には値段を分からなくしています。


投資家を守るため・・・ですか?


ちなみに値段は正式には基準価額といいますが、この基準価額が申し込み後に決まることをブラインド方式と言います。

ブラインド方式がないと売りたい人が有利になってしまう

買う時に値段が分からないと、どうして投資家を守ることになるんですか?


じゃあ簡単な例で説明しましょう。


お願いします!


まず、2口だけ発行している投資信託があるとします。この投資信託の前日の値段が10,000円としましょう。


10,000円で2口ということは・・・資産は全部で20,000円ですね。


次にその2口をAさんとBさんが1口ずつ持っているとして、Aさんが持っている1口を売りたくなったとします。


Bさんは1人ぼっちになってしまいますね。


ここでもし前日に確定している値段で売ることができるとなったら、先ほど言った10,000円で売ることになりますよね。


そうですね、前日の値段は10,000円でしたよね。


でも、その売ろうとした日に株価が暴落して、全資産が18,000円になったとします。


えーと・・・さっきは全資産が20,000円だったので、全部で2,000円下がったと。それだと、AさんとBさんは1,000円ずつマイナスになっちゃいますね


そこから10,000円をAさんに支払うと、残りはなんと8000円になってしまいます。


あれ、1人あたり1,000円しか下がっていないはずなのに、Bさんは2,000円マイナスになってしまうんですね。


そうです。逆に昨日より値段が上がれば得しますが、それだったら誰も売りませんよね。このような売り得な行為を防ぐため、ブラインド方式がルールで決まっているんですね。

基準価額はいつの株価で算出されるのか

ちなみに投資信託の値段って毎日何時くらいに決まるんですか?


運用している会社によりますけど、早いところだと17時くらいには発表されてますかね。


へ~買う時の締切って15時頃でしたっけ?2時間後にはもう値段は決まってるんですね。


15時過ぎから算出し始めて、資産の管理をしている受託会社というところと照合してから発表してます。ちなみに算出に使う各資産の値段は市場が終わった時点の値段にすることも、投資信託協会のルールできちんと決められてるんですよ。


全部きっちりルール化されているんですね。あれ、でも海外の資産の場合はいつの値段にするんですか?


米国なんかは当日の朝に市場が終わりますから、その値段を使って算出してますね。


なるほど、当日の朝・・・あれ、そうなると買う前に値段が決まってませんか?


それを防ぐため、海外に投資している投資信託は、購入の申込をした後、実際に買えるのは翌営業日になっています。


あ~当日の朝の値段を使うけど、その日に買えるのは前営業日に申し込んでいた人たちだから、やっぱり買おうとする時には値段は分からないんですね。


そういうことです。別の投資信託に投資する投資信託のことをファンズオブファンズと言うんですが、ヨーロッパの投資信託に投資するファンズオブファンズですと、買えるのは翌々営業日だったりもしますね。


翌々営業日ですか!それだと、買おうと思ってからけっこう値段が動いてそうですね。


そうですね、そういった投資信託を購入する時には注意が必要かもしれませんね。

過去の教訓から投資信託は投資家保護のルールが整備されていった

しかし、以前はブラインド方式のようなルールもしっかり決まっていなくて、外国株でも当日に買えてしまう銘柄もあったんですよね。


それはさっき言ってたみたいに暴落したら怖いですね。


実際過去に香港株を投資対象にしたブラインド方式を採用していない投資信託があったんですけど、当日大きく暴落した際に売り注文が殺到して、値段がものすごく下がったなんてこともありましたね。


それは売らなかった方々は相当痛いですね・・・。


そうですね。そういったことを繰り返さないよう、これまで話した投資家を守るためのルールが整備されていったんですね。


過去の苦労があって、今があるんですねぇ。

その他の投資家保護のためのルールとは?

それと、信託財産留保額という仕組みがあるんですけど、これも投資家を守るための仕組みなんですよ。


信託財産留保額・・・なんか本で読んだような。売る時に手数料とは別にお金を取られるんでしたっけ?


お、よく勉強してますね。そうです。


えー、でも売る時に余計なお金を払うのが、なんで投資家を守ることになるんです?


自分が保有している投資信託を他の人が売ろうとすると、その支払いのために投資信託が保有している株式などの資産も売る必要があります。その時に必要となる手数料は、残った人たちが負担しますよね。


出ていく人のためにお金を負担するのは嫌ですね。


その不公平感を無くすために、売って出ていく人に手数料を負担してもらうのが信託財産留保額という仕組みなんですね。


なるほど。手数料を負担してもらうために取るんですね。余計なお金を取られる投資信託なんて絶対買わないと思ってましたけど、そうなるとずっと持ち続ける人にとっては得になったりもしますか?


そうですね。当然、信託財産留保額で集めたお金も投資信託の資産に組み入れられますから、長期間持っていれば、自分が売る時に取られる金額よりも大きな利益になるかもしれませんね。


そうなんですね。お金を取られるイコール悪とばかり考えてちゃいけませんね。


そうですね。それから、ルールつながりでついでに説明しますと、投資信託が保有している株の配当金の処理なんかもルールが決まっているんですよ。


へ~どんなルールですか?


株の配当金って、配当金の権利をもらってから、実際に支払われるまでだいぶ時間が掛かるんですよ。もし権利はもらったのに、支払われる前に売ってしまった場合、配当金分がもらえないと損じゃないですか。


もらえたはずのものがもらえないのは嫌ですね。


なので、権利をもらった時点で未収配当金として資産に織り込むことが決まっているんです。


権利をもらった時に投資信託を持っていれば、その配当金分のお金はもらえるんですか。それなら公平ですね。そういえば、株主優待ってあるじゃないですか。投資信託で保有している株の株主優待ってどうしてるんですかね?


それもルールが決まっていますよ。換金可能な優待は全て換金をして、資産に組み込みなさい、ということが投資信託協会の規則にあります。


ほんと色々なことがルール化されているんですね。


そうですね。過去には問題もたくさんありましたけど、問題が起こる度に改善がされてきて、今はしっかりしたルールのある商品になってきていますね。しっかりとした投資信託さえ選べば、制度上は安心して保有することができる仕組みになっていると思います。

まとめ

今日教えて頂いたことをまとめますと・・・

- ブラインド方式とは申込を締め切った後に基準価額が決まることで、継続的に保有している投資家保護のためのルール
- 海外に投資する投資信託が買えるのは申込日の翌営業日。中には翌々営業日の投資信託もある
- 信託財産留保額も投資家保護のためのルールとなり、長期保有するのであればメリットになる。
- 投資信託協会では様々ルールを定めており、投資信託は安心して長期保有できる商品となっている

これだけしっかりルールが決まっている投資信託なら、安心ですね~。ますます投資信託への投資欲が高まってきたので、早く良い投資信託の銘柄を探さないとですね。


はい、いつでも相談に乗りますので、豊かな生活を送る為に頑張りましょう!


・・・と、その前に、落札できなかったフィギュアがまたオークションに出てないか探さないと・・・。


・・・高値で掴まないよう気を付けてくださいね。
