毎月分配ファンドは資産形成には使わないで!本来の利用方法とは?【第9回】

以前、N商事社員の福山 春雅(通称ハルちゃん)は父親の退職金の運用について、N商事特別顧問で元証券マンの瀬山(通称セーさん)に相談をしましたが、また聞いてほしいことがあるようです。
目次
毎月分配は積立で貯めている最中には向かない

そうそう、その件で聞いてくださいよ!


何かあったんですか?


父が証券会社の窓口にバランスファンドを買いに行ったのですが、担当者に毎月分配ファンドを薦められたんです。それで父が迷い始めてしまって。


ほうほう。


だから言ってやったんですよ。毎月分配ファンドだけは買うな!って。


うーん、そうですか・・・・。


あれ、何か間違っていますか?毎月分配型ファンドって、ネットなどでは絶対買わない方がいいって言われてますよね?


それに関してですが、良い投資信託は保有する目的によって異なりますから、毎月分配ファンドはだめという決めつけは良くないですね。


でもつみたてNISA対象銘柄に毎月分配ファンドは入ってないですよね。金融庁も否定しているんじゃないですか。


その点ですが、積み立ては貯金箱にお金を入れていくようなものです。貯めている最中なのにお金を出してしまうと貯まっていかないのは当然です。


そういえば小学生の頃よく貯金箱からお金を抜き出してましたが、たしかになかなか貯まらなかったですね・・・。


そのため、資産形成をするための長期投資においては、毎月分配を選ばないのは正しいとは思います。ただ、だからといって、分配金を出すこと自体を否定するのは間違っていると思います。

毎月分配ファンドは分配金を年金代わりにできたことで人気に

じゃあ、毎月分配ファンドがこんなに批判されているのはなぜなんですかね?


それを知る為に、まずは毎月分配ファンドの歴史を少しご説明しましょう。


お願いします!


毎月分配はたしか1997年頃に海外の運用会社が日本で設定したのが最初でした。


その頃まで日本に毎月分配ファンドは無かったんですね。


そうです。海外では決算とは別に分配金の回数は自由に決められるのですが、日本では決算毎にしか分配金が出せないルールがあるので、作られていませんでした。


毎月決算するのが大変だったので、日本では毎月分配ファンドが無かったんですか。


そうですね。当時は決算処理が大変で、日本での導入が遅くなりました。


なるほど。そこから毎月分配が広がっていった理由は何かあるんですか?


銀行で投資信託の販売が可能になったことが転機になりました。


銀行の顧客によく売れたということですかね。


そうですね。投資信託という商品はリターンが保証できないので、納得できる説明をするのが難しいです。でも、毎月分配は入ってくる収益がある程度分かるので、投資経験の浅い顧客にも説明がしやすい点がプラスになりました。


たしかに昨年は毎月これくらい分配金がもらえました、というのは分かりやすいですね。


それに加えて、分配金を年金代わりにすることもできるので、銀行がメインとする中高年以降の年代の顧客にもぴったりでした。


上手くニーズに応えることで毎月分配が広まったんですね。


さらには2000年以降に国債の利率が下がり始めたので、債券を購入していた方々の資金の受け皿にもなっていきました。

分配金を出すことがだめなのでは無く、資産形成には向かないだけ

毎月分配ファンドが広まっていった歴史は分かりましたけど、批判されるようになったのはなぜなんですか?


ニーズに合っている顧客に売っているうちは良かったのですが、毎月分配が売れ過ぎた結果、毎月分配の投資信託ばかりが作られていきました。


人気になったらみんな真似したくなりますよね。


先ほども言いましたように、貯めている途中でお金を出してしまうと貯まりません。そのため、資産形成中の若年層に毎月分配を薦めるのは間違っています。しかし、説明しやすいし、顧客も分かりやすいので、年代や資産状況に関係無く毎月分配ばかり売ってしまいました。


当時はどのくらい毎月分配のファンドは売れていたんですか?


現在のトップの6倍近くも純資産があったんですか!すごいですね。


そのように毎月分配がもてはやされた結果、バランスファンドまで毎月分配になったり、分配金ありきで商品を作ってしまいました。


完全にブームになってしまったんですね。


毎月分配ファンドの本来の目的は運用しながら使うということです。その目的に合致しない層にまで販売していった結果、ボッタくり商品というイメージがすっかり定着してしまいました。


なるほど。毎月分配ファンドが批判の対象になったのは、そういった背景があったんですね。


それと批判の理由として、よく特別分配金の存在も挙げられていますが、私は特別分配金自体を批判する必要は無いと思っています。


特別分配金って何でしたっけ・・・?


普通分配金は運用した結果の利益から払われるものですが、特別分配金は投資信託が保有する資産自体を売って支払われます。タコ足分配なんて言われたりもしていますね。


あ、タコ足分配という名前はインターネットで見たことあった気がします。


そのタコ足分配も投資した資産がどこかに消えてしまっているのでは無く、投資家に戻ってきているだけです。お金を使う必要がある方に取っては問題が無いはずです。


自分が持っている投資信託を売るのと同じようなことなのですね。


運用に見合わない高い信託報酬や、過剰に高い分配金を出す毎月分配ファンドが批判されるのは当たり前ですが、特別分配金を出すこと自体を批判するのは違うと思うのです。

毎月分配金を出す仕組み自体に問題は無い

毎月分配ファンドって毎月投資家にお金を支払わないといけないわけじゃないですか?支払うための労力で運用に支障が出たり、余計にコストが掛かって、結果としてリターンが下がってしまうことは無いんですか?


投資信託というものは、毎月分配ファンドでなくても、毎日買ったり売ったりでお金が出たり入ったりしますよね。そのため、現金の量は毎日調整しています。


たしかにそうですね。


分配金の額は事前に決まっていますから、それに合わせて現金の量を増やせば良いだけです。もし分配金を理由に運用が悪化したのであれば、運用会社に相当問題があると思います。


資産を現金にするのは毎日やっていることなので、そんな問題にはならないんですね。


支払いに合わせて用意しておくのはそこまで影響は大きくないでしょうね。逆に年1回の決算時に高額の分配金を出す銘柄もありますが、そちらの方が一度にたくさんの資産を現金化しないといけませんから、手間だと思います。

毎月分配は資産を運用しながら使う人におすすめ

毎月分配ファンドは資産形成をしている時には買ってはいけないということは分かりましたが、逆に利用しても良いのは、ある程度資産が貯まった方になりますか?


そうですね。これまでに貯めた資産や、退職金などのまとまった資産を運用しながら毎月使っていきたい方におすすめですね。


バランスファンドを持つ場合との違いとかってあるんですか?


メリットとしては、毎月分配であれば自分で取り崩していく必要が無いので、投資信託を売ったり、売るタイミングを図ったりという手間が無くなる点ですね。


うちの父みたいに投資経験が無いと、売るタイミングを図る必要がなくなるのはありがたいかもしれませんね。


対面店で取引している場合、定期的に売ると手数料もそれになり掛かってしまいますしね。


たしかに手数料はばかになりませんね。そうなると、毎月分配ファンドもありなのかなぁ。


ただ、先ほども言いましたように、ブームの時に分配金ありきで作られたような商品もありますので、商品内容はしっかり見ないといけないですね。


毎月分配ファンドであれば、どういった商品が良いとかってありますか?


安定的な収入であるインカムゲインを受け取れる資産に投資している方が、分配金を出すための資金が安定して投資信託に入ってきますから、運用も安定すると思います。


インカムゲインが受け取れる資産ですか。インカムゲインって株式の配当金や債券の利金など安定的に受け取れる収入のことでしたよね。


そうですね。なので、高配当株や格付の高い債券に投資していると良いですね。


父が薦められた商品の内容も良く聞いてみます。他には気を付けた方が良いことはありますか?


先ほど特別分配金も問題は無いと言いましたが、過剰に高い分配金を出している銘柄は避けた方が良いですね。分配金の出し過ぎで運用するための資産が減りすぎると、運用の効率も落ちていってしまいますからね。


たしかにインカムゲインが受け取れる資産に投資していても、資産が減ったら受け取れるインカムゲインも減っていってしまいますもんね。


そうですね。分配金のバランスはしっかりチェックした方が良いですね。最近は予想分配金提示型といって、事前に決めてあるルールに基づいて、収益や投資信託の基準価額に応じて分配金を出す銘柄も作られています。例えばルールはこのようになっています。



収益状況が悪い場合には、その代わりに分配金も減らすんですね。


そういうことです。収益の状況に見合わない過剰な分配金を防ぐことができますね。

まとめ

今日教えて頂いたことをまとめますと・・・

- 分配金を出すことがだめなのでは無く、資産形成には向かないだけ
- 毎月分配ファンドは投資対象がインカムゲインを生み出す商品を選ぶべき
- 毎月分配によるファンド運用上の問題は無い
- 毎月分配ファンドはまとまった資産を運用しながら使うために利用する

毎月分配ファンドも目的次第では保有しても良いんですね。


先ほども言いましたように、毎月分配ありきで作られたような商品や、過剰な分配金を出している商品には気を付けないといけませんが、毎月分配ファンド自体は保有する意味がある商品だと思います。


分かりました。父が薦められた商品も偏見を持たずに一緒にどんな商品か調べてみます。


それがいいですね。


それに毎月分配金が入ってくるようになると、そのお金でおいしいものを奢ってもらったりできそうですし。


偏見だけではなく、下心も持たずに商品は調べてくださいね。

今回登場したファンド
ファンド名 | レーティング(1年) |
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大 和
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三菱UFJ国際
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