「慶應生なのに就活全滅w」怠惰の街”日吉”に4年を捧げた塾生…新横浜線開通でよぎる「地元地銀に凱旋入行」の逃げ 連載タワマン文学「TOKYO探訪」

3月18日、東急・相鉄新横浜線が開通した。これにより菊名駅での煩わしい乗り換えがなくなり、東横線ユーザーの東海道新幹線・新横浜駅へのアクセスが向上した。また慶應大の日吉キャンパス、三田キャンパス、湘南藤沢キャンパス(湘南台)が “つながった” などと同大関係者を喜ばせている。そんな中で、“地元が近づいた” と感じる人もいるようだ。窓際三等兵氏の連載タワマン文学「TOKYO探訪」の第12話の舞台は日吉。新幹線が近くなった街に住む “お上り慶應生” は本当に東京の人間になれたのか――。
駅前のミスドで勉強し、牛繁でテストの打ち上げ
12時48分、新横浜駅発、のぞみ33号。これから故郷に帰る。荷物を運び出した家賃7万4000円の日吉のアパートは、がらんとしていて4年前と変わらない。「綺麗に使ってくれて助かるわ」と嬉しそうに話す不動産会社のオバチャンに鍵を渡しながら、込み上げてくるものをこらえる。これから、故郷に帰る。
広い世界を見たかった。高3の冬、地元の国立大を勧める高校教師に反抗し、「就職で地元に帰るから」と親に泣きつき、ようやく掴んだ東京行きの切符。新幹線の中で胸の高鳴りが止まらなかった。新入生と保護者で真っ黒に染まった日吉キャンパスの銀杏並木を登りながら、これからの4年間に思いを馳(は)せていた。
一年生。世界のすべてが輝いていた。新歓コンパをはしごして、駅前のミスドで試験勉強して、クラ友と牛繁でテストの打ち上げをして。気がつけば煙草も吸うようになり、夜を徹して雀荘で牌(ぱい)を切った。東京の濁った空気を身体に取り込んで満喫する、怠惰で不摂生な生活。新聞配達のカブの排気音を聞きながら眠った。