汚いおっさんのケツ穴に脱毛レーザーを照射する女性の確定した人生「焦げた毛穴の臭いと氷結2本」 連載タワマン文学TOKYO探訪「初台」

ショート動画スワイプしていると度々登場するメンズ脱毛の広告。スカート丈の短い制服を着た女性に「お願いします」と来院を懇願される動画を見て、あなたは何を思うか。窓際三等兵の連載タワマン文学「TOKYO探訪」第18話の舞台は初台だ。あの女性たちは普段を何を思っておっさんのケツ穴にレーザー照射しているのか。そしてなぜそもそもおっさんのケツ穴にレーザーを照射しているのかーー。
脱毛クリニックでオッサンの陰部にレーザーを照射
「女の人にやってもらうのか、恥ずかしいなあ」。小汚いオッサンが勿体ぶってパンツを脱ぎながらヘラヘラ笑うのを無視して、「まずは毛を剃りますねー」と無表情のまま陰毛にシェーバーをあてる。脱毛クリニックでオッサンの陰部にレーザーを照射するだけで過ぎる毎日。あの頃の私が見たら、何を思うんだろう。
子供の頃にドクターXを観て知った、医者という職業。凄腕の外科医になって、命を救いたいです――。小学校の卒業アルバムには、そんなことを書いた。親も教師も、立派な目標を掲げる私のことを立派だと褒めてくれた。褒められるのが嬉しくて、淡い夢はいつしか輪郭を帯びて人生の目標になった。
幼い私は知らなかった。私大医学部の学費を払ってくれる太い実家も、国公立の医学部に合格するような頭脳も持っていない私は、医者になるためのスタートラインにすらたどり着けないということを。真実に気がついてからも良い子の仮面を脱ぎ捨てられない私にとって、夢はいつしか呪いになっていた。
やりたいことも夢もないけれど、楽しそうな大学に進んだ友達
「看護師になろうと思うんだけど」。高2の春、私がそう口に出すと、父と母は少し残念そうな、それでも嬉しそうな表情をしていた。看護師も人の命を救う立派な職業だ、と県庁で働く父。由比ちゃんは責任感があるからきっと向いてるよ、と中学教師の母。二人の言葉は、私が本当に欲しかったものではない。