ベイシアで買い物、週末は少年野球…前工卒でバカデカ一軒家の3人家族と同じ家賃で東京1LDKの“前高卒グンマーエリート”の絶望 連載タワマン文学TOKYO探訪「前橋」

グンマーの夜景スポットとして知られる群馬で一番高い建物「群馬県庁」。その存在を脅かしているのがブリリアタワー高崎で、東京建物は現在前橋駅前にも新たなブリリアタワーを建設中だ。「かかあ天下と空っ風」の群馬のタワマンはきっと、東京よりもよく揺れ東京よりも夫が息苦しい生活を強いられるのだろう(知らんけど)。連載タワマン文学「TOKYO探訪」の第22話の舞台は前橋だ。今日も今日とてベイシアで焼きまんじゅうをくらうーー。
前橋で建設が続くタワマン、嘘のような本当の話
「パワーモールのIKEA、ようやく工事始まったんだよ!」。地元を出た10年前に発表され、ずっと凍結されていた計画が再開したということを、さも重大ニュースであるかのように話すかつての同級生たち。群馬県前橋市。東京に比べて時計の針がゆっくり進む故郷の空気に馴染めなくなったのは、いつからだろう。
前橋駅に降り立った瞬間、変わらないなと思った。相変わらずロータリーには人よりも車のほうが多いし、イト―ヨーカドー跡地は10年前と変わらず廃墟のようだった。一体誰が使うんだろう、と話していた駅前の結婚式場は閉店したらしい。着々と建設が進むタワマンだけが冗談のようにポツンと浮いていた。
ファミレス、紳士服店、携帯ショップ――。母親が運転するラパンの助手席から流れる、国道17号線の景色。いくつかのチェーン店が潰れて、いくつかのチェーン店が居抜きで入居したらしいが、記憶に残る10年前のそれと大して変わらない。18歳の頃は退屈な風景だと思っていたが、今となってみれば郷愁の念すら呼び起こされる。
自動車がなくてもどこにでも行ける東京の自由さに憧れ
「父さん、仕事辞めてからずっとYoutubeにかじりついてロシアが正しい、アメリカはナチスだって変なことばっか言ってるんだけど。あんたからも何か言ってやってよ」とハンドルを握りながら話す母親の頭には白髪が増えていた。一人息子の自分がそばにいないことを暗に責められたようで、視線を逸らす。