「3.11の遺体安置所」罪悪感と葛藤の果てに、それでも…『notte stellata』いまそこに、羽生結弦が待っている。
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ここは仙台都市圏最大の遺体安置所だった
開場まで、セキスイハイムスーパーアリーナ(以下、アリーナ)周辺をしばし歩く。思っていたほどではないが、雪が残っている。
アリーナの横を抜けて斜面を登る。東北、芽立ちにはまだ早いが、冷たい北の風でもそれは春のものになりつつある。春の陽光もまだ冬のそれを残してはいるが、やはりかざしてみれば陽の粒にもまた春がある。
宮城県利府町にあるこのアリーナは13年前、東日本大震災における仙台都市圏最大の遺体安置所だった。多いときには500体はあったという。ホワイトボードには「身元不明遺体」として何十枚もの情報が張り出され、肉親や知人を探す人々が目をこらしていたと聞く。
今は昔、なことは事実だ。しかし、確かにそうしたことがあったこともまた、事実だ。羽生結弦はその事実を忘れないよう、伝えないよう『notte stellata』を始めた。
それにしても、ものを創るのって、いいなと思う。
個人的な印象でしかないが、2023年の『notte stellata』と比べてもスタッフに余裕というか、一大イベントとしての貫禄が第2回にして早くも出来つつあるように感じる。あたたかいおもてなしや丁寧な対応は変わらないが、第一回目ということもあってどこか緊張感の抜けない、気負いのようなものがあったように記憶する。