羽生結弦ファンだけが知っていること…「歴史に名を残すアスリート・芸術家になる」愛され過ぎた天才の苦悩
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歴史を作る「時代の子」の宿命…嫉妬と中傷
歴史を作る宿命にある芸術家は、ときに心ない嫉妬と中傷にさらされる。
アスリートもそうだ。新しい歴史の中で、その神に授けられた才能に苦悩する。神に愛され過ぎたがために類い稀(まれ)なる才能を与えられ、それでも大勢の人を導く。歴史を変える。そしてときに人の嫉妬を買う。嫉妬は本当につまらないもので、何も生みださないというのに。
たったひとりでバレエを変えた青年、ヴァーツラフ・ニジンスキーもまたそうだった。歴史を作る「時代の子」の宿命だった。
ファンは知っている「羽生結弦は歴史に名を残すアスリート・芸術家になる」
19世紀まで「見世物」「奇芸」の類いで扱われたバレエを、彼はバレエダンサーというアスリートの芸術に昇華した。私たちが目にする極限まで鍛え上げた肉体による芸術表現としてのバレエとは20世紀、このニジンスキーという青年によって開かれた扉であった。
そして21世紀、アスリートであり芸術家、プロフィギュアスケーターの羽生結弦もまた、新しい扉を開こうとしている。2022年という年は、まさにその『プロローグ』となった。彼自身のプロデュースによる単独公演、その斬新かつ驚異的なアイスショーは、それまでのフィギュアスケートの有り様すら変えてしまうのでは、といったパフォーマンスに満ちていた。それらは筆者が繰り返し語ってきた話なので既稿に委ねるが、羽生結弦という存在は、21世紀のフィギュアスケートを新たなステージに押し上げる。そのような存在がこの日本に生まれ、私たちは同時代を生きている。