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「子どもに遺産は残さなくていい」多くの高齢患者を看た東大卒医師がたどり着いた真理…投資入門書2〜3冊読んで知識をつけよ

 いくつになっても「適切なお金との付き合い方」を見極めるのは難しい。年を取れば取っただけ、若いころとは違った悩みも生まれてくる。そんな中にあって、高齢者専門の精神科医である和田秀樹氏は、「遺産は子どもにあげなくてもいい」「投資は小遣い稼ぎになる」などと訴える。高齢者が認識しておくべき“正しいお金の使い方”とは――。全3回中の2回目。 

※本稿は和田秀樹著『75歳からやめて幸せになること 一気に老ける人、日ごとに若々しくなる人の差』(大和書房)より抜粋、編集したものです。 

第1回:東大医学部卒の医師が世の健康情報に苦言「長生きしたけりゃ肉を食え!」しょっぱいものも食べていいし、散歩もしなくていい

お金を使うと人が集まる 

 ビジネスの世界では、50代〜60代くらいまでは多くの人が社会的地位を求めてあくせくします。 

 そこでは、真っ当にスキルや資質を高めたり、まわりから押し上げられる人ばかりではありません。中には他人を蹴落としたり、裏切ったりする人もいれば、目上の人にぺこぺこして引き上げてもらおうとする人もいます。 

 結果的に、同じように出世をした人でも、仕事をリタイアしてからは大きな差がつくことになります。具体的には、部下や後輩を可愛がって面倒を見ていた人はいつまでも慕われます。一方、他人を蹴落としたり、上に媚びて下に威張っていたりした人のところには誰も寄りつかないのです。 

 私は、病院で見舞客に囲まれている高齢患者と、孤立している患者の圧倒的な差を目の当たりにして、人生について考えました。そして、やはり人に優しくして生きようと決意しました。高齢者専門の精神科医になったことで、人生で大切なことに気づけたのは非常に幸運だったと受け止めています。 

 お金の使い方によっても、人が寄ってくるかどうかは決まります。たくさんお金を持っているから人が寄ってくるわけではなく、お金を使って喜ばせることで人が寄ってくるのです。 

 私は映画を作っているので、お金持ちのスポンサー候補とお会いする機会がたびたびあります。気前のいいお金持ちとは仲良くしますし、その人が困ったときには医者として助けたいとも思います。しかし、ケチなお金持ちとは深く付き合いたいとは思いません。それが普通の人間の考え方でしょう。 

 だから、高齢者はまわりを喜ばせるようなお金の使い方を意識しましょう。バラマキや浪費は推奨しませんが、有意義なお金を使っていただければと思います。 

「子どもに遺産を残さない」という選択  

 子どもの中には、親の財産を当てにしている人だけでなく、当てにしていない人もいます。当てにしている子どもに財産を残した結果、子どもたちの間で財産をめぐっての争いが始まる可能性があります。 

 仮に子どもたちが遺産分割の割合に同意していたとしても、後から子どもたちの配偶者が口出ししてきて「いや、法定相続分はもらいたい」などと主張することもよくあります。そうして親の死後に、きょうだい間がぎくしゃくするわけです。 

 一方、親の財産を当てにしていない子どもの立場からいえば、相続財産を「エサ」に親の介護などのプレッシャーを掛けられるのはいい迷惑かもしれません。「財産を残してやるから、自分に尽くしてほしい」という親の理屈は甘えもいいところです。 

 子どもの一人でも積極的に介護をしてくれるのなら、早めに遺言状を書いて(それでもすべての子どもに一定の金額は行ってしまうのですが)理想の相続を実現すべきでしょうし、そうでなければ、お金を残す必要はありません。 

 私は無理矢理、子どもに介護を期待するくらいなら、自分が築いた財産を使って住み込みのお手伝いさんを雇ったほうが、よほどましだと思います。仮に1億円の財産があれば、月60万円でお手伝いさんを15年雇うことができます。 

 「とても1億円なんてお金は持っていない」という人でも、自宅を持っている人はリバースモーゲージという仕組みを活用する方法があります。 

 リバースモーゲージとは、自宅を担保に老後の資金を借りることができる制度。借り入れ後も自宅に住み続けることができ、自分が亡くなった後に不動産を処分し、借入金を返済する仕組みとなっています。 

 シンプルな話で、つまり「子どもに家を残さない」と決めれば、使えるお金が増えるのです。リバースモーゲージにはメリット・デメリットがあるので、詳しくは銀行が開催しているセミナーなどに参加してみるとよいでしょう。 

高齢者でも投資は「アリ」 

和田秀樹著『75歳からやめて幸せになること 一気に老ける人、日ごとに若々しくなる人の差』(大和書房)

 お金の使い方に関連して、投資にもふれておきましょう。欧米と比較して、日本人の金融資産は銀行預金の割合が高い傾向にあります。特に高齢者は投資のリスクを避けがちです。その状況を受けて、岸田内閣の掲げる「新しい資本主義」の実行計画の中でも、「貯蓄から投資へ」のキャッチフレーズが示されています。 

 私自身はすべての方々に投資を推奨するわけではありません。特に、銀行から資産運用の営業電話を受けて、のこのこ相談に行くような人は投資に手を出さないほうが賢明だと考えています。 

 金融機関は、投資に疎く、しかもある程度の預貯金を持っている高齢者を格好のターゲットにしています。決まって、手数料の高い金融商品を売りつけようとします。不利な勧誘をはねつけるためにも、最低限の知識は身に付けておきましょう。 

 投資に関する入門書を2〜3冊読めば十分です。その上で、投資をするもしないも個人の自由です。 

 資産運用を考えるのであれば、まずはノーリスクでできることに取り組んでみましょう。例えば、メガバンクに預けている定期預金をネット銀行に預け替える。それだけで利率がいくぶんアップします。ネットバンクや金利の情報はインターネットですぐに調べることができます。 

 株や投資信託にチャレンジする場合は、ルールを設定しておくのをおすすめします。私の知人は、目を付けておいた株が大きく下がったときに買い、1割くらい上がったら売る、をコツコツ繰り返しているといいます。 

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この記事の著者
和田秀樹

精神科医。1960年大阪府生まれ。東京大学医学部卒。東京大学医学附属病院精神神経科助手、米国カール・メニンガー精神医学学校国際フェローを経て、現在は精神科医、ルネクリニック東京院院長、一橋大学経済学部・東京医科歯科大学非常勤講師、川崎幸病院精神科顧問、国際医療福祉大学教授、和田秀樹こころとからだのクリニック院長。緑鐵受験指導ゼミナール代表。『80 歳の壁』(幻冬舎)、『70 歳が老化の分かれ道』(詩想社)、『六十代と七十代 心と体の整え方』(バジリコ)など著書多数。高齢者専門の精神科医として、30年以上にわたって高齢者医療の現場に携わっている。

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