節約なんかで電力不足は絶対に解消できない! 「人類の発展を停めるつもりか」(特集:電力ひっ迫「特別コラム」)
「人類の将来の電力需給には悲観的だ」。大量の電力を必要とする暗号資産のマイニングをする「マイナー」たちは、「安い電力」を求めて世界各地に拠点を設置している。仮想通貨は小国並みにエネルギーを消費する存在になったとも言われる。みんかぶプレミアム特集「電力ひっ迫」(全9回)の第8回は脳科学者の茂木健一郎さんが人類に警鐘を鳴らすー-。
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「コンピュータを動かす」ことで地球全体で電力需要が増える
地球環境のことを考えたとき、電力源を確保して、さらに効率よく使うことはもちろん心がけるべきである。その際、再生可能エネルギーを含むさまざまな資源をうまく使っていく知恵が必要なのは言うまでもない。
それでも、私は、人類の将来の電力需給については悲観的である。というのも、これから、地球全体で「計算」需要が実質的、圧倒的に増えると予想されるからだ。それは、多少の「節約」をもってしては解決できない、根本的な問題を提示すると考えられる。
これからの人類の文明の進化、経済成長は、電力資源の重層的、強靭な確保なしでは不可能である。そのことの意味を、私たちは真剣に考えておくべきだろう。
計算を実行する、すなわち、「コンピュータを動かす」ことで電力需要が増えるというと、暗号資産のマイニング*を思い出す人も多いかもしれない。確かに、ビットコインやイーサリアムのような暗号資産(仮想通貨)のマイニングのために、たくさんの計算資源が用いられ、「安い電力」を追って世界各地に採掘者が拠点を設置する動きはすでに各所で報じられている。
人によってさまざまな考え方があるだろうが、私自身は、今のかたちの暗号資産が持続可能な社会的、経済的価値の媒体になるとは予想していない。むしろ、今web3やDAO(分散型自律組織)と言われている変化の方向が「本丸」だと考えている。
*仮想通貨の取引データを承認する作業で、その成功報酬として新規に発行された仮想通貨を得られる。
欲望が爆発し、膨大なリソースがつぎ込まれたビットコイン
2008年にビットコインについてのホワイトペーパーを「サトシナカモト」名義で発表した人物の真意はわからない。しかし、ブロックチェーン上の「トークン」を「ビットコイン」という「通貨」として打ち出したことは慧眼であった。そのことによって、人々の欲望が爆発し、膨大な量の人的、経済的リソースがブロックチェーン経済に流れ込んだからである。