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宇野常寛「SNSで承認欲求を満たすコスパが良すぎるのが問題」物語よりも現実の比重が高まってきている

 コミケが日本文化、ひいては日本経済に果たしてきた役割は非常に大きいものがある。多くのクリエイターや作品が、コミケから生まれてきた。

『母性のディストピア』(集英社)『2020年代の想像力 文化時評アーカイブス2021-2023』(ハヤカワ新書)などの著者で、日本のアニメや漫画について論じてきた評論家・編集者の宇野常寛氏は「今はコミケもSNSと切り離しては語れない。コミケですらタイムライン消費の傘下にあり、そこに僕は危機を感じる」と語る。いったい、どういうことなのかーー。みんかぶプレミアム特集「コミケの経済学」最終回。

目次

コミケが日本のオタク文化普及において果たしてきた2つの役割

――コミケが日本のサブカル史において果たしてきた役割についてお聞かせください。

宇野常寛

 コミケが日本のオタク文化において果たしてきた役割は、大きくわけて2つあるかなと思っています。

 1つ目はコミュニティというかネットワークの形成ですね。 日本のオタク文化は、初期の頃から一部の熱心なファンダムに支えられてきました。

 インターネットがなかった時代には、同人誌即売会のようなイベントがこうしたオタク文化を支えてきた側面が大きく、その同人誌即売会の中でも最大のものがコミケだった。同人誌士即売会と言っても千差万別で創作中心のものもあれば二次創作中心のものもある。しかし年に2回の「お祭り」としての「コミケ」がシーンを形成してきたことの意味は大きいでしょうね。

 2つ目の役割として、クリエイターの「揺り籠」的な存在だったことが挙げられます。同人誌から商業誌にステップアップするルートを開拓する上で、最大の同人誌即売会であるコミケが果たしてきた役割は大きいです。

 最初は自分の好きなキャラクター同士の絡みが読みたくて、自分で描き始めた同人作家が「大きな同人市場」というある程度閉じて、そしてある程度開かれた場所で活躍するうちに次第に制作そのものの快楽に目覚めていく……という回路が結果的に発生していたと思います。

 同人クリエイターたちが欲望の赴くままにものを作って、それが結果的に商業的なクリエイションをも生み出す。それが日本のオタク文化の強みだと思います。

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この記事の著者
宇野常寛

評論家,〈PLANETS〉編集長。1978年生。著書に『ゼロ年代の想像力』(早川書房)、『リトル・ピープルの時代』(幻冬舎)、『日本文化の論点』(筑摩書房)、『原子爆弾とジョーカーなき世界』(メディアファクトリー)、『静かなる革命へのブループリント:この国の未来をつくる7つの対話』(河出書房新社)、『楽器と武器だけが人を殺すことができる』(KADOKAWA/メディアファクトリー)、『資本主義こそが究極の革命である:市場から社会を変えるイノベーターたち』(KADOKAWA/PLANETS)。 共著に濱野智史との対談『希望論』(NHK出版)、石破茂との対談『こんな日本をつくりたい』(太田出版)。企画・編集参加に「思想地図 vol.4」(NHK出版)、「朝日ジャーナル 日本破壊計画」(朝日新聞出版)など。 京都精華大学非常勤講師、立教大学兼任講師のほか、J-WAVE「THE HANGOUT」月曜ナビゲーター、日本テレビ「スッキリ!!」コメンテーターも務める。

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