羽生結弦ファンには申し訳ないが…世紀の快挙を完全無視!ガラパゴス化した日本メディア「報道しない自由」
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日本社会全体の病巣とも言える複雑怪奇
8月6日、国連機関のユネスコ本部で開催された国際スポーツプレス協会(以下、AIPS)100周年記念式典において、羽生結弦が今世紀最優秀男性アスリートのトップ10に選ばれた。
この誇りうるAIPSの発表と羽生結弦が選ばれたことに対して不可解な出来事が起きた。こうしたランキングが大好きなはずのマスメディアの多くが沈黙したこと、羽生結弦の栄誉に水を差すことが大好きな一部メディアも触れる気配のないこと、そして「羽生結弦が選ばれるのはおかしい」と異を唱える一部ネット民が跋扈したことである。
私もメディアの側は長いつもりだ。冒頭の通り、これが誇りうることであり、羽生結弦であることは必然であることを前提として、私の知る限りの事情と実際のメディア側の事情とを取材した。そこには拍子抜けするような現実と、ある意味で日本社会全体の病巣とも言える複雑怪奇な事情とがあった。
まず断っておくが、私の知るメディア関係者、スポーツ新聞、週刊誌、ネットニュースの各編集者に聞いた限りなのでメディア各社にもよる、というのは当然である。「うちはそうではない」という編集部もあるだろう。各人の編集部での立ち位置(地位)によっても変わる。それでも、あくまで羽生結弦と共にある方々の参考にはなるように思う。
また出版業界やWEBメディア業界の専門用語や界隈的な言葉は平易に置き換えている。あくまで羽生結弦と共にある人々と考えるべき、伝えるべき記事に主眼を噛み砕いたものであることを重ねてお断りしておく。
羽生結弦のファンには申し訳ないが、扱えなかった
まず懇意のスポーツ新聞社の社内スタッフに聞く。同社では「プロになってからもフィギュアスケート選手として、羽生結弦さんは別格の扱いにしている」ことは前提でこう話す。
「まずパリオリンピック期間中というのはあったと思う。紙面はパリオリンピックで埋まるし、野球もNPB(日本のプロ野球)やMLB(メジャーリーグベースボール)、夏の甲子園(高校野球)だってある。それにオリンピックは特別。今回は好調で連日のようにメダリストが誕生した。編集部の人員もオリンピックに割いている。羽生結弦のファンには申し訳ないが、この件は扱えなかった」
このスタッフはパリオリンピック期間中というのがタイミング的に悪かった、という意見をまず先に話してくれた。実のところ、これは他社スタッフの説明にもあった意見である。
大谷か、そうでないか
「多くの読者に読んでもらうことが前提なのでパリオリンピックに(紙面を)割く。NPBやMLB、夏の甲子園など野球関連はオリンピックと被らない読者も多く外せない。紙面には限りがある。レース(競馬や競輪、競艇、オートレースなどのこと)やレジャー(釣りや駅売りのみの男性向け企画)、芸能と社会面はだいたい固定されているから、どうしてもそれ以外の優先度は下がる」
物理的に紙面は限りがあることはわかる。それではネットニュースはどうだろう。大手出版社のネットニュース編集部員に聞く。