世界は羽生結弦の味方。その世界こそ、羽生結弦と共にある私たちが歩む幸福であり、希望…「今世紀最高の20人」考察
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不世出のアスリートであり、アスリートの枠を越えた時代の子、歴史の人
重要なのは挑戦であり、勝利はその先にある。
そのさらに先に人々の幸福がある。
羽生結弦は挑戦を続けた人だ。勝利は結果であり、その先の人々の幸せこそ彼の「希望」である。
もちろん羽生結弦は勝ち負けに拘ってきた超一流の勝負師であるが、それだけではない。それにとどまらない。
選出された羽生結弦を含めた偉大な今世紀のアスリート20人はまさにそうした人々である。マーガレット・アボットは女がゴルフなどするわけがない時代にフェアウェイに立った。ナワル・エル・ムータワキルはイスラム女性の全身を覆う衣を脱ぎ、素肌のままにトラックを疾走した。セリーナ・ウィリアムズは白人ばかりのスポーツだったテニスで人種の壁を破り、センターコートに君臨した。その先駆こそモハメド・アリだった。そしてクン夫人は子持ちの30歳がスポーツなんかするなという声に抗い、オリンピック4冠を達成した。
羽生結弦もまた、氷上に降り立った東洋の勇者として舞踏芸術の本場で光り輝いた。言わずもがなの前人未到の記録と数字、そして記憶の強烈なインパクトを放ち、人々のためにいまも尽くし、羽生結弦という革新を歩んでいる。
ここで改めて、モハメド・アリの紹介文ともなっている今回の選出理由を記す。
「世代を超え、人々に数え切れないほどのインスピレーションを与え続け、夢を追い続ける動機を人々に与え続けている」
まさにそうだ。そして、羽生結弦のことでもある。不世出のアスリートであり、アスリートの枠を越えた時代の子、歴史の人だ。
世界は、とくに欧州はその凄さをわかっている
AIPSのみならず世界は、とくに欧州はその凄さをわかっている。日本の多くのメディアだけがわかっていない、文化的なブラッシュアップがなされていない。本当に情けない。恥ずかしくも思う。羽生結弦が『SEIMEI』や『天と地と』で魅せた日本人としての文化的矜持も含めて、羽生結弦の「矜持」は多くのメディアの扱えるレベルにない、と言っても構わないだろう。
そもそもメディアの側に矜持を以て書く者がどれだけあるか、名前も出さず、会社員としてコソコソ悪口を書いて給料だけはいっちょまえ、「金だけ今だけ自分だけ」は大メディアこそ大半はそれであることを私は知っている。そして、付ける薬がないことも。
私も西欧文化は好きだ。舞踏芸術などとくに好きだ。それでも日本の舞踊もまた同じように好きだし、幼いころから親しんできた。私の家は日本舞踊中村流の分家家元だった。母は舞踊家であり女剣劇で知られる浅香光代の直門でもあった。たくさんかわいがってもらった。日本文化の良さもまたよくわかっているつもりだ。しかし多くの日本人がそうであるかは疑わしい。