タワマン文学作家がついに本音「タワマンバブルは崩壊しません。不幸になりません」住宅ローン金利上昇してもタワマン民は繁栄し続ける

2024年3月、日本銀行は17年ぶりにゼロ金利を解除し、利上げを行った。さらに利上げされ、現在の政策金利は0.5%まで上昇している。それにともない、多くのWebメディアで「タワマンバブルは崩壊する」という旨の記事が続出した。
しかし「当のタワマン購入者たちは余裕の表情です」と話すのは、タワマン文学作家の窓際三等兵氏だ。いったい、なぜなのか。住宅ローン金利が上昇して戦々恐々としているはずではないのか。同氏がタワマン市場の実態をレポートするーー。みんかぶプレミアム特集「マンション 勝利の方程式」第1回。
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「住宅ローン金利上昇で生活が破綻……タワマンバブル崩壊でエリート一家を襲うヤバすぎる実態」という記事は書けない
「住宅ローン金利? あれ、どこまで上がるんだろうな。今度、また毎月の支払いが増えるらしいし」
目の前の男性はそう言いながら、さして憂鬱でもなさそうな表情でグラスを傾けた。目の前の炭火ロースターでは特選厚切り牛タンがじゅうじゅうと音をたてて焼かれており、男はうまそうに1杯1000円の白州ハイボールを飲み干した。
日銀がマイナス金利政策を含む大規模緩和の解除を決めてから3月で1年が経った。マイナス0.1%だった政策金利は3度の利上げを経て、既に0.5%となった。メガバンクからネット銀行にいたるまで、あらゆる金融機関がローンの金利を引き上げ始めたことは記憶に新しい。日本人にとって久々の「金利のある世界」は、低金利を前提に多額の借金を抱えたタワマン住民を直撃した――はずだった。
「住宅ローンの返済ね、どんぐらいだっけな。ちょっと調べるから待ってて」
男はスマホを取り出すと、PayPay銀行のサイトを開いた。
「あー、最初は月24万3000円くらいだったけど、今年に入って25万円ぐらいになって、7月から26万円近くになるっぽいな」
タッチパネルで白州のハイボールをおかわりしながら、男は続ける。メニューには500円の角ハイボールもあったが、視界にすら入っていないようだった。テーブルの上にはダイヤモンドカルビが照明の光を浴びてテラテラと光っている。
今回、タワマンバブルの崩壊について取材するため、わざわざ湾岸タワマンに住む知人を頼った。「住宅ローン金利上昇で生活が破綻……タワマンバブル崩壊でエリート一家を襲うヤバすぎる実態」という記事を書くのは難しそうだなというのは、開始5分で理解できた。
住宅ローン金利が上昇し始めていても、大企業勤めのエリート男性が余裕すぎる理由
男性が湾岸のタワーマンションを購入したのは3年前。日本を代表する大企業に勤めて年収は優に1000万円を超えているとはいえ、9500万円という借金は決して軽いものではなく、月々のローン返済が1万7000円近く増えていると聞けば生活は楽ではなさそうだ。なのになぜ、こんなに余裕の表情なのか。
答えは最近のニュースにあった。
「5%の賃上げ 物価上昇対応で」
「賃上げ8%で過去最高 初任給も30万円に」
「ベア3万円、賃上げも7%」
インフレが進む中、企業は人材獲得競争で競合他社に負けないよう、かつてない勢いで給与アップに取り組んでいる。会社によっては、労働組合の要求を上回った賃上げ回答もあったというからデフレ時代からは隔世の感がある。男性の勤める企業は3年連続で5%の賃上げを実施したという。もともと1000万円を超える年収が毎年50万円以上のペースで増える中、住宅ローンの支払いが月に1万増えようが、2万増えようが、言ってみれば誤差の範囲だ。
増えたのは手取りだけではない。3年前に購入した湾岸のタワーマンションの市場価格は、既に数千万円上昇している。男性は過去10年間で2回マンションを買い替えており、そのたびに広く、高いマンションに引っ越している。不動産上昇気流というものがあるとすれば、これほどうまく乗りこなしている例は珍しいだろう。
「アベノミクスによるマンション価格の上昇は異常だ、東京五輪が終われば価格は落ちる、1億円を超えればさすがに需要がついてこない――」
タワマンには一生縁のないフリーライターたちが手を変え品を変え量産してきたコタツ記事をあざわらうかのように、湾岸タワマンの価格が下落する気配は一向に見えない。家庭の収支でみると、タワマンを購入できるようなエリートの賃金は上昇し続けており、暴落どころか、むしろ相場を押し上げる要因になっているというのが実情だ。