私はファンタジー・オン・アイスが好きだ。それでも・・・私論「さよならFaOl」(後)

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もはや「私の好きな」FaOIとは言えない
おかしい。本当におかしい。
私の好きなFaOIが、おかしい。
FaOIはロシアのフィギュアスケーターの出演を決めた。
これまでも出演者の小出しはあった。スケジュールの調整もあろうし、ギリギリまで交渉することもあろう。それはわかる。追加出演者は注目を浴びるし、追加の前から「誰が追加されるのか」という話題性もある。
興行だ。商売なのだから大切なことだ。わかる。
しかし今回はウラジミール・プーチンという独裁者ーー「黒い皇帝」と呼ばれる男によるロシアという国家の侵略戦争と組織的なドーピング事件が絡む。
ソ連時代に秘密警察「KGB」にいたプーチンはロシア国内の自分にとって都合の悪い政治家や文化人、ジャーナリストを死に追いやったとされる。
モスクワ川の橋の上で射殺された野党指導者ボリス・ネムツォフ、自宅アパートのエレベーター内で射殺されたジャーナリストのアンナ・ポリトコフスカヤ、そして反体制指導者だったアレクセイ・ナワリヌイの謎の獄死ーーこのような異常な体制にウクライナはもちろんロシア国内の心ある人々も怯え暮らしている。もちろん、フィギュアスケーターたちも。
プーチンは元KGBであり、ソ連復活を夢見ていることは本人の言動にもある。
かつての冷戦、旧東側と呼ばれる共産主義陣営はアスリートを国威発揚とプロパガンダのために利用し、人権を蹂躙し、彼らの自由を奪った。
カタリナ・ヴィットが東ドイツ、独裁者エーリッヒ・ホーネッカーの共産主義時代を赤裸々に告白した自伝『メダルと恋と秘密警察』に知られるが、選手の自由を奪い、人生を奪い、薬漬けにすることも厭わない国家が過去も、そして現在も普通に存在する。