「The First Skate」そして〈Pray for peace〉・・・羽生結弦という歴史の只中にある昂揚と「命」の記憶(前)

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感動しかない。それでいい。
この原稿を書いているころには、みなさんといっしょにアイスショウ『The First Skate 仙台市アリーナイベント』(以下、The First Skate)の録画配信を観たことと思う。
羽生結弦とレジェンドたち、そしてこれからの仙台の銀盤を、日本の銀盤を担うことになる若者たち。拙筆「日本フィギュアスケート発祥の地…羽生結弦の原点を、想う。仙台市アリーナ開館記念イベント「The First Skate」エッセイ」にも現地取材を通して書いたが本当にあたたかく、日本のフィギュアスケート発祥の地に相応しいショウだ。
感動しかない。それでいい。こういうものは真っ直ぐに受け取るだけでいい。
それと共に先日、私はもうひとつ、真っ直ぐな言葉を受け取った。みなさんも受け取ったと思う。
〈平和でありますように〉
〈Pray for peace〉
2025年8月6日の言葉だ。
羽生結弦公式YouTubeチャンネルのこの言葉、チャンネル1周年(8月7日)を前にした言葉だが、もちろん80年前の1945年8月6日、広島市への原子爆弾投下の日の言葉だ。
私個人の「好き」と「想い」
広島といえば私は2024年12月7日から同年12月11日の『Yuzuru Hanyu ICE STORY 3rd -Echoes of Life- 広島公演』(以下、Echoes広島)を思う。
Echoes広島は『「GIFT」 at Tokyo Dome』(以下、GIFT)、『Yuzuru Hanyu ICE STORY 2nd “RE_PRAY”佐賀公演』(以下、RE_PRAY佐賀)と共に、私の大好きなアイスストーリー3作品となっている。
どれも素晴らしく好きなのは当然だが、「あえて」私個人の「好き」と「想い」であることを許していただきたい。
あの日あらわれた火の鳥、みんな集まったあの日の佐賀の空、そして広島に浮かぶ真っ白なダニーボーイーーさんざん書いてきたことだが、こうして思い返すと羽生結弦という時代を想う。羽生結弦という歴史の只中にある昂揚を想う。
これは「得る」とか「覚える」では足りない、あえての「想う」だ。また「高揚」ではだめだ。「昂揚」でなければ。
意味は同じでも、ただの常用漢字か否かの問題ではない。「高」の語源は単なる建物に過ぎない。しかし「昂」の語源は日を仰ぐことだ。もともとは「昂」であったものが常用漢字の「高」に「こう」の音であてられたもので、本来は「昂」しかありえない。国語の話はともかく、私が羽生結弦とその時代に抱く想いは常にこの「昂揚」にある。