金でアゲ記事を書く、サゲ記事を書く実態・・・ファンをも傷つける行為に手を染める、その当事者の証言(後)

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「サゲ記事」を書いて報酬を貰っていた当事者
アゲ記事はわかった。これは私も旧知のことだ。しかし金を貰ってサゲ記事を書く者は私もさすがに直接は知らない。政治関係には多いと聞くがどうだろう、豊島区にある別の編集プロダクションの代表に話を聞くことができた。
そして、彼こそがかつてサゲ記事を書いて相手から報酬を貰っていた当事者でもあった。
「金を貰ってライバルというか、依頼者の気に入らない相手をサゲる記事を書く行為はありますよ。もうだいぶ減ったと思いますけどね、広告とか関係強化の面のほうがいまはほとんどじゃないかな」
大ベテランの彼もまた中小出版社の週刊誌出身、いわゆる極道メディアと呼ばれるヤクザ関係の記事などが多かった週刊誌だが、こちらも暴対法の強化や単純な売り上げ不振で随分前の話だが休刊となった。
「スポーツ選手だったら優先的に単独取材させてもらえるとかまあ、そういう面が大きいよね。所属団体(協会)やスポンサーにお上手しておけば五輪取材だって有利に進める。それは2021年の東京オリンピックでたくさん捕まった贈収賄事件とか、いくらでもあるよね」
広陵高校問題も扱えなくなったら困る
2020東京オリンピックでは紳士服販売大手のAOKIや大手代理店の電通など、多くの協賛企業の関係者が贈収賄や便宜供与などの汚職で逮捕、有罪となった。その中には大手出版社のKADOKAWAもあった。
「ゴシップ誌だけじゃなく大手新聞社だって間接的には広告や関係強化のためにアゲ記事は書いてるよ、その対象に不利になることは書かないしね。夏の高校野球の広陵高校問題だって高野連の機嫌を損ねて扱えなくなったら困るし、大谷翔平だってまあ、そうだよね」
それでは、サゲ記事はどうか。経験者として。
「スポーツに限った話じゃないけど、その組織に従わない人気者とか、その組織が推したい選手に都合の悪い人気者がいるとあり得るね。スポーツの場合は選手同士より団体がサゲ記事を依頼するというか、メディアが忖度する場合が多いと思う」
依頼はあるのか。
便宜の見返りに「アゲ」「サゲ」を書くライター
「芸能ならあるかないかで言えばある。私がそうだった。でもスポーツはどうだろう。昔、アマチュアボクシングやクレー射撃は怪文書が出回って非難合戦したことはあったが、言い方が難しいけどメジャースポーツだろうとマイナースポーツだろうと人間同士の話だからね、金銭の授受はともかく「御用ライター」的な人はいると思うし、何らかの便宜は当然あるだろうね」
御用ライターというのはそれこそ便宜の見返りにアゲやサゲを書くライターを指す。これは普通に存在するし、ゲーム業界では当たり前の話だが自分の利益になる、懇意にする相手はアゲ記事を、逆にそのアゲ記事を書く側にとって都合の悪い、どうしても実力や人気でかなわない相手をサゲる記事を書く。
「実力や人気のある側が依頼したり、忖度を望むことは少ない。やはり劣っている側がなんとかサゲてやろうと依頼して書かせる。あるいはライターがそれを書けば懇意にしている側が喜ぶと忖度して書く。後者のほうが多いと思うよ、いま報酬でサゲ記事はプロじゃなくてクラウドワークスあたりのバイトやお小遣い稼ぎの副業が多いんじゃないかな、彼らは匿名の一般人として書き散らすからプロが書くのと違ってリスクが少ないからね」
そういう記事を書くことに葛藤はあるのか。
「ないよ、仕事だからね」