愛他の人、そして私たち。さあ『羽生結弦 notte stellata 2026』約束の地へ、その身を、心を。(2)

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2023年――歴史的なnotteのはじまり
羽生結弦が勇気と矜持によってフィギュアスケートの栄光と共に、それまでにない社会性を発揮したこと、篤志の限りを尽くしたことを揶揄する向きもあったことを思えば――先取者というのはいつの時代も苦しみ、悩み、それでも人々に希望をもたらす。
2023年3月のnotte stellata、あのときはまだ新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置づけはコロナ禍とされる「2類」だった。
同年5月に「5類感染症」となりいまに至るわけだが、それこそ羽生結弦や出演者はもちろんnotteの関係者、私たち羽生結弦と共にある多くの人々が「彼の想いに協力したい」と集った。
現地に行けずとも劇場で、放送で、それすら観ること叶わずとも心で集った。歴史的なnotteのはじまりであった。
震災のあの日の青年が恐怖と不安の中で夢見た希望が、星々が実現した。みんなで実現した。私も現地だけでなく劇場にも足を運んだ。現地も劇場、それぞれの「いま」「ここ」というアウラがあり、それぞれに感動がある。
想いに共感する人々の輪ーーナイチンゲールもまたそうだった。知識ある者、両家の者を専門的な看護教育のもと組織した。『看護覚え書』によって看護の仕事を定義した。
ナイチンゲールは〈人類史上初めて、この本の中で「看護とは何か」という定義を明らかにした〉とされているが(※1)、現代における医療とはナイチンゲールの思想哲学から始まったと言って過言ではない。
彼女の想いを、みんなが受け継いだ。そして、いまも受け継いでいる。
しかし彼女が看護師として現場にいたのは、彼女を一躍有名にしたクリミア戦争への従軍看護を含め2年ほどであった。多くの伝記、とくに子ども向けに書かれたたくさんのナイチンゲールの物語のほとんどは彼女の若き日の一部ということになる。
クリミア戦争ではひとつの発見があった。中世の戦争から近代の戦争へ――刀や弓のいくさから強力な火力による集団殺傷への転換点となったこの戦争において、ナイチンゲールはこれまでのような傷にはとどまらない火力による大量死を目の当たりにした。また兵站(補給)の進化は長期戦を可能とし、それによって戦火による死ではなく不衛生な環境による病死の増大という課題に直面した。
当初、女性を看護団として戦場に送るというナイチンゲールの活動は理解されなかった。何もさせてもらえなかったというのが現実だった。
そこでナイチンゲールは兵舎や野戦病院を清潔にする活動を始めた。掃除なので拒否されることもない。すると兵の病死は減り、傷による感染症も減った。兵のメンタルも多くは回復した。これこそ「公衆衛生」の始まりである。まだそんなものの無かった時代、ナイチンゲールは「愛他」によってその想いを為した。