「真犯人は別にいる」岩手17歳女性殺害事件の闇にどこまで迫れるか…街録ch三谷三四郎が語る「上出遼平がつくり出す“一線を越える”映像術」
地上波からNetflix、さらにはAbema、U-NEXTまで――。コンテンツが乱立する今、人を真に熱狂させるのは「面白い」の先にある「ヤバい」番組だ。1000人以上の剥き出しの人生を記録し続けてきた『街録ch』ディレクター・三谷三四郎が、エッジの効いた一作を独自のバイアスで読み解く。
連載「今、ヤバい番組」第6回は、上出遼平氏が突如開設したあのチャンネルについて。
目次
岩手17歳女性殺害事件を独自に捜査
今回は、元テレビ東京のディレクター・上出遼平氏が制作するYouTubeチャンネル「健康チャンネル」を取り上げたい。扱っているテーマは、生活習慣やダイエットなどといったいわゆる健康情報ではなく、なんと「未解決事件の調査報告」だ。
ないジャンルを探す方が難しいほど、あらゆるジャンルのチャンネルが立ち上がっている2026年のYouTube界において、これほどまでに斬新で他に類を見ないチャンネルはないだろう。
未解決事件について解説したり、被害者遺族へインタビューしたりする動画はこれまでにもたくさんある。しかし、上出氏の「健康チャンネル」は、独自にその真相を調査し、それを発表しているのだ。何度も事件現場や関連する施設等に足を運び、事件当時の加害者とされる人物や、被害者の知人などに徹底的に聞き込みを行う。そして、その中で感じた違和感や「調査に協力している人間の発言の裏にどんな意図があるのか」を考察しながら、一緒に調査を行ってきたスタッフとホワイトボードを使って説明していく。
現在、扱っているのは「岩手17歳女性殺害事件」。
2008年7月、岩手県川井村(現・宮古市)の山中で、17歳の女性・佐藤梢さんが他殺体で発見された事件だ。警察は交友関係から小原勝幸容疑者を全国指名手配し、現在も逃亡中とされている。しかし、事件直前に容疑者が別件で恐喝されていたという証言や、逃走時の不自然な遺留品など不可解な点が多く、「真犯人は別にいる」「黒幕がいる」といった噂が絶えず、現在も捜査特別報奨金がかけられている重大事件である。
YouTube上でも、「真犯人は別にいる説」を解説している動画は存在する。このあらゆる動画の大元になった情報を調査したジャーナリストがいるのだが、その方はすでに自殺し、現在はこの世にいない。
上出氏は、このジャーナリストの調査に協力した元反社の「X」という人物にも接触し、ジャーナリスト同様、色々と調査に協力してもらうことになる。
他のチャンネルとは一線を画す上出氏の映像
上出氏の動画が最高なのは、ここからである。
「この調査に協力してくれるXは、なぜ調査に協力的なのか?」
「ジャーナリストはなぜ志半ばで自殺したのか?」
「ジャーナリストは、何かを隠したいXに利用されていたのではないか?」
動画では、そんな核心にも踏み込んでいく。自殺する直前にジャーナリストとXが仲違いし、Xがメールでジャーナリストに「伝えたことは全部嘘だから」という旨を伝えていたことなども発表した。
すると、その動画を見たXから「謝れ、これじゃ俺が犯人みたいじゃないか」と、電話で呼び出しを食らうのだ。
上出氏は、その呼び出しを食らったことも含めて動画を投稿し、実際にX氏と接触した場面まで撮影している。残念ながら、Xの見た目や発言などは先方の希望により映像としては流せていない。しかし、モザイクがかかったX氏と音声なしで会釈する様子や、ホテルの一室のソファで向かい合って座っているその映像だけでも、とてつもない緊張感と臨場感があるのだ。
こんなYouTube動画見たことない。
自分も『街録ch』において、未解決事件の被害者のインタビュー動画を投稿したことがある。「名古屋主婦殺人事件」。1999年、名古屋市西区で32歳の主婦が自宅アパートで刺殺された事件だ。室内にいた2歳の長男は無事だった。長年にわたり情報提供を呼びかけ続けていた遺族である夫の高羽悟さんにインタビューさせていただいた。

動画投稿から約1年後、事件から26年経った昨年2025年に犯人が逮捕された。高羽さんは、これまで26年間、事件現場である当時の自宅アパートの家賃を払い続けてきた。その額は2200万円を超えるという。「何か手掛かりになれば」「事件を風化させないために」という思いで借り続け、事件以降も定期的にメディアに出てインタビューに応え続けた。
その執念が26年越しに実を結び、赴任してきた刑事が事件に興味をもち、当時の怪しい人物を洗い直した結果、犯人逮捕に至ったのだ。