75%がリピーターの脅威…ラーメン山岡家・絶好調の理由「郊外のユートピア」の全貌を全部バラします

山岡家の “特製味噌” を一度でいいから食べてほしいです

 ウィズ・コロナの時代は今後もしばらく続きますが、3年目を迎え各業界内での企業の明暗が鮮明になってきました。

 コロナの影響が大きいと考えられている業界のひとつに飲食業界があります。

 そんな飲食業界でも逆風に負けずに堅実に成長している企業もあります。

 それが、赤い看板に白い文字でおなじみ「ラーメン山岡家」を展開している株式会社丸千代山岡家(以下、山岡家)です。

 山岡家の売上高を見ると、コロナ前の2019年段階では約130億円でしたが、直近の2022年1月期の売上高は約151億円。コロナの影響が大きかった2020年1月期、2021年1月期においても売り上げを落とすことなく140億円超を達成しました。

 ラーメン店は外食産業の中でもコロナに大きく翻弄された業界でもあります。

 大手チェーンを見ても、日高屋を展開するハイデイ日高は2021年(2月期)、2022年(2月期)と2年連続で営業利益が赤字、一風堂を展開する力の源ホールディングスも2021年3月期はコロナ前から売り上げがほぼ半減と大打撃を受けました。

 また、帝国データバンクによると、ラーメン店は2020年に過去最多の倒産件数も記録。コロナ禍はラーメン業界全体に大きなダメージを与えました。しかし、そんな中でも山岡家は業績を落とすことなく成長を続けていたのです。

 さらに、近年はUber Eatsに代表されるデリバリーサービスが注目される中、山岡家はイートイン(店内飲食)で売り上げを伸ばした点も注目です。

 テイクアウト需要に対応したことで成果をあげた外食企業は少なくありませんが、山岡家は基本的にイートイン一本勝負です。

 山岡家の強さ、他のラーメンチェーンとの違いはどこにあるのでしょうか。

 一度、山岡家の特製味噌ラーメン(870円)を食べて、そのポテンシャルを感じてほしいです。

そもそも山岡家の看板を見たこと、ありますか?

 そもそもの話となりますが、皆さんは山岡家についてどれだけ知っているでしょうか。

 生活の中心が都心部の方は山岡家を知らない、もしくは食べたことがないという方もいるかもしれません。

 実は山岡家の東京都内の出店は瑞穂店(東京都瑞穂町)の1店舗のみ。

  東京都瑞穂町は西多摩郡に属し、都心部エリアからは遠く離れ、23区内でもありません。

 「東京都」とは言っても人の行き来は多くなく、郊外とも呼べるような場所です。

 2022年12月の段階で山岡家は全国に175店舗を出店しており、店舗数自体は決して少なくありません。

 しかし、最も人口の集中している東京への出店には全くといっていいほど力を入れていないのです。

 実は山岡屋のこの出店方針に業績好調の理由が隠れています。そして、その方針が一目瞭然となる情報が意外に近いところで公開されています。

 山岡家の公式サイトには物件募集のページがあり、その中で物件の条件が明記されているのです。

 公式サイトを見ると、山岡家の出店方針がわかる条件として「ロードサイド/主に幹線道路沿い」という明示があります。

 都心で店舗を見かけない理由がここにありました。

 山岡家の出店は郊外特化なのです。この出店方針がコロナ禍において功を奏しました。「駅徒歩○分」というレベルではありません。むしろ「○○インターから車で5分」という立地なのです。

 郊外店はインバウンド需要に左右されません。そのため、都市部を中心とした飲食チェーンのようなダメージをコロナ禍でも負うことはありませんでした。

 もちろん、これだけが好調の理由ではありません。さらに出店方針を深堀りすることで好調の核心がわかります。

 いまこの記事を読んでいる人は、山岡家特製ギョーザ(税込み340円)を追加注文しながら読み進めてください。

”郊外のユートピア”。ラーメン食って、シャワー浴びて、寝る。

 再度物件募集を読んでみましょう。

 物件募集には「敷地面積250坪~(建物床面積30~50坪程度)」という記載があります。

 敷地面積が建物床面積よりも非常に大きい理由は駐車場を設けるためです。しかも、比較的大きな規模の駐車場を山岡家では必要としています。

 郊外でかつ大きな駐車場…。

 勘のよい人であればわかったのではないでしょうか。

 山岡家がメインターゲットのひとつとして据えているのはドライバーです。さらに言うならば大型トラックを運転する長距離ドライバーの皆さんが利用しやすい出店を意識しているのです。

 コロナ禍においても山岡家が成長し続けた理由はこの点にあります。

 日本列島をコロナが襲ったときでも、トラックドライバーは走り続けていました。その物流の現場で働く人の食を支えていた飲食店のひとつが山岡家だったのです。

 山岡家は全店舗で年中無休24時間営業を基本としています。

 これも深夜でも働き続ける長距離ドライバーには嬉しい点です。

 さらに山岡家は店舗によってはシャワー室も併設。シャワー室は食事をした人であれば無料で使用できるという気前の良さです。このシャワー室のサービスも長距離ドライバーを中心に好評を博しています。

 くたくたになるまで運転した深夜、ラーメンで食欲を満たし、シャワーで一日の汗を流せる――想像しただけで最高です。

 そんな “郊外のユートピア” が山岡家なのです。

 …と、ここまで山岡家の出店方針にフォーカスしてきましたが、言うまでもなく飲食チェーンにおいて重要なのは味です。

 「ガツンと来て、くせになる。」

 このキャッチコピーを裏付ける同店のこだわりを紹介します。

美味い! 美味すぎる! 中毒性の高い手作り豚骨スープ

 山岡家の最大のこだわりは店内仕込みの豚骨スープです。

特製味噌ラーメンにネギトッピング、特製餃子もつけるのがオススメです。

 スープが完成するまでに要する日数は、なんと3日。

 水と豚骨だけで煮込み続け、旨味を限界まで引き出します。

 完成した豚骨スープはコクとスッキリの両方が口の中で調和する絶品です。筆者はいつも半分以上スープを飲んでしまいます。

 まさに「ガツンと来て、くせになる。」のです。

 そもそも山岡家の出店には一定のハードルが設けられています。新規出店においては代表取締役会長の山岡正氏が自らスープの味を確認します。

 つまり、出店には山岡氏のお墨付きが必要なのです。

 さらに出店後も不定期でスープ講習会を開催。出店してもそれで終わりではなく、クオリティの維持・向上が常に求められます。

 店内での手作りはスープだけではありません。

 山岡家はセントラルキッチン方式を用いずに、チャーシューやネギ、そして麺も店内の手作りです。

 多くの外食チェーンは店舗とは別の場所で調理業務の大半を担う「セントラルキッチン」を採用しています。

 出店スピードだけを考えるとセントラルキッチンに軍配が上がるのは言うまでもありません。

 当然ですが、すべて店内手作りとなると、それだけの技量を持つ人材が、それぞれの店舗で必要となります。しかし、人材の育成は一朝一夕には進みません。

 つまり、出店スピードで考えると、山岡家の戦略は非効率なのです。

 しかし、効率よりもこだわりを大事し続ける姿勢にこそ山岡家の強さがあります。

驚異の75%がリピーター

 なお、山岡家はただただ愚直にこだわりを持ち続けているだけではありません。

 柔軟性も間違いなく、山岡家の好調を支える要因のひとつに挙げられます。

山岡家ファンも少なくなく、サービス券をダッシュボードに置いているトラックドライバーも多いのだとか

 現在、山岡家ではキャッシュレス決済できる店舗の拡大にも取り組んでいて、現在約70店舗と着実に数を伸ばしています。

 ラーメン屋といえばラーメン二郎を筆頭に、券売機に現金を投入して食券を買うシステムが多い印象がありますが、山岡家は最新の設備が整っているのです。

 また、おおよそ2カ月に1度の頻度で入れ替わる限定メニューも好評です。

 山岡家の限定メニューは、つけ麺が市民権を得はじめた2007年に「山岡家でもつけ麺をつくれないだろうか」という話題をきっかけにスタートしたそうです。

 その後、ほぼ途切れることなくさまざまな限定メニューが登場し続けています。

 公式サイトによると、年間来客数は1500万人以上、そのうち75%がリピーターと記されています()。

  柔軟性を持ちつつも、絶対に維持し続ける味のこだわり。

 この安心感が、多くのリピーターに愛される理由ではないでしょうか。

 不透明な時代はまだまだ続きますが、これまで築き上げてきた信頼を守り続ける限り、山岡家が大崩れするようなことは恐らくないでしょう。

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