42歳、会社辞めてライターに!記者の大量離職でチャンス到来(連載:40代フリーライター「1000万は稼げます」第1回)

 フリーライターと聞いてどんなイメージをするだろうか。「稼げなさそう」「不安定そう」……。あまりポジティブな印象を持っていない人もいるはずだ。しかし、田中圭太郎氏は40代で安定の会社員生活を捨ててフリーライターになり、今では悠々自適な生活で年収は1000万円を超している。「やりかたさえ、わかっていれば誰でもできます」。連載:40代フリーライター「1000万は稼げます」では田中氏がライターとして独り立ちする方法を伝授していく――。

稼いでいるライターは「結構います」

「フリーのジャーナリストなんて年収200万円くらいでしょ。それで食べていけるの?」

 とある場所で名刺交換した新聞記者からこの言葉を投げかけられたのは2018年、フリーになって3年目の頃でした。私は当時、ジャーナリストとライターの名刺をそれぞれ作っていて、渡したのはジャーナリストの名刺でした。

 その記者の年齢は存じ上げませんが、当時45歳の私よりは年上に見える方です。フリーのジャーナリストなんて食べていけるはずがない、と思い込んでいるのでしょう。

 私は微笑んで「十分食べていけるくらい稼げますよ」と一言答え、別の方への名刺交換に移りました。その記者は、私の言葉を真に受けなかったのではないでしょうか。

 2022年の現在でも新聞やテレビの記者のみなさんは、一部のベストセラー作家などを除いて、フリーランスのジャーナリストやライターの収入は少ないと思っている人が多いでしょう。

 しかし、実際には十分に稼いでいるライターの方はたくさんいます。そして、ジャーナリスト、ライターと2つの肩書きで仕事をしている私も、フリーになってから年間の売り上げは毎年右肩上がりで増えていて、すでに1000万円を超えました。

放送局の元記者から、42歳でフリーランスに

 私がフリーランスになったのは2016年4月。4月生まれですので、42歳からまもなく43歳になる時期でした。その頃から比べると、現在はフリーランスのライターの仕事が注目されるようになってきました。

 さまざまな「ライター講座」にも、定員を超える人数の応募があると聞きます。主にWebサイト上で記事を書く人を指す「Webライター」という言葉も出てきました。

 ライターを目指す人が増えている背景には、場所や時間にとらわれない働き方を望む人が増えたことや、コロナ禍でも在宅で仕事ができることなどが考えられます。

 その一方で、フリーランスのジャーナリストが増えた、という話は聞きません。かつてノンフィクションを発表する場だった月刊誌は2008年ごろから相次いで休刊し、フリーのジャーナリストが紙媒体で書く場所を失った影響も大きいと思います。

 ただ、ここにきて、既存のメディアの経営状況が悪化しています。大手新聞社は頻繁に希望退職者を募っていて、地方紙や地方の放送局では、若い記者が入社後数年で転職するケースも珍しくなくなりました。にもかかわらず、ジャーナリストは増えていないのです。

 会社を辞めることについては、それぞれ事情があると思います。ただ、辞めたあとに元記者のキャリアを生かそうとしても、他の業種に比べると、辞めた後の情報やモデルが少なすぎます。「大学教授になる」人もいますが、そのような転身が出来る人はまれです。まったく別の仕事で再就職する人も多いのではないでしょうか。

 実は、私は地方の放送局の元記者でした。19年勤めたうえで、自らフリーランスの道を選びました。会社を辞める前から、これまでの経験を生かすにはどうすればいいのかを模索した結果、たどり着いたのがフリーランスのジャーナリストとライターとして仕事をすることでした。

無名の元記者でも食べていける

 ここで、私が退職したときの状況についてお話しさせてください。

 大学を卒業後、1997年に新卒で大分県にあるJNN系列(TBS系列)の大分放送に入社し、報道部に配属。記者14年、デスク1年を経験しました。

 地方局は人数も少ないので、警察担当から市政、県政、選挙取材などさまざまな担当を経験し、ドキュメンタリーや特別番組も多数制作しました。

 災害が起きると被災地に応援取材にも行きます。2005年の福岡県西方沖地震では1週間、2011年の東日本大震災では福島県で3月20日から12日間、取材をしました。

 東日本大震災の翌年、2012年に報道部を離れ、東京支社営業部に異動します。それから4年後の2016年3月に会社を辞め、そのまま東京都内を拠点にしてフリーランスとしての活動を始めました。

 報道部では15年間仕事をしてきました。とはいえ、私は地方で働く無名の記者に過ぎず、ドキュメンタリーでの受賞歴もありません。記者から独立する人の中には会社を辞める前から準備をして、退社直後に書籍を出版する人もいますが、そのような力量も持っていませんでした。

 放送局時代の給料は、額面で約950万円でした。手取りは700万円を超えるくらいでしょうか。それに東京支社時代は家賃補助もありました。そこからフリーランス1年目には収入が大きく下がり、初対面の新聞記者が言った200万円よりは多かったものの、売り上げは350万円ほどでした。

 それでも売り上げは毎年右肩上がりで増えていき、4年目には売り上げが放送局時代の手取りを抜き、5年目には約1000万円に到達しました。この年には初めての自著を出版しています。

 その後も売り上げは増えており、6年目には法人化しました。この原稿を書いている現在は、フリーランス7年目で49歳。雑誌やWebに掲載される3000字から4000字くらいの原稿を、毎月20数本執筆しながら、自著の執筆、Web関係の手伝い、他の作家さんのデータマンなどの仕事もしています。

 当然ながら、会社を辞めるときに今の仕事量を予想できていたわけではありません。ただ、根が楽観的なのか、「食べていけるだろうな」とはなんとなく思っていました。

コロナ禍でも仕事は増えている

 最近の変化としてお伝えしたいのは、2020年からのコロナ禍でも、ありがたいことに原稿の依頼が増えていることです。その理由は、私が複数の専門分野を持ち、手を広げすぎではないかと思われるほど、さまざまなジャンルの原稿を書いているからだと考えられます。

 私が手がけているジャンルと原稿の一部は、note(https://note.com/tanakakeitaro/n/n535e485e7728)にまとめています。読んでいただくとわかりますが、大学、教育、社会問題、労働問題、ビジネス、エネルギー、パラリンピック、大相撲……とまだまだあります。

 特定のスポーツだけを取材していると、コロナ禍では大会や試合自体がなくなったり、取材に制限がかけられたりして、仕事が減ったと聞きます。人数の少ない地方局の報道部にいて、幅広い分野の取材を経験したことが生きているようです。

 自分で選んだジャンルを取材し、原稿を書くことで食べていけているのですから、私はフリーランスの道を選んだことは間違いではなかったと感じています。それに、取材で得られた経験は、自分の糧になります。質、量ともに「もっともっと書けるようになりたい」と思っています。

 この連載では、社員としての記者を辞めようと考えている人や、フリーランスのジャーナリストやライターになろうと考えている人の参考になればと思い、仕事が広がった経緯やポートフォリオなどを公開していきます。

 決して会社を辞めることを勧めるわけではありません。ただ、選択肢のひとつとして「こういう人生もある」ことを知り、シミュレーションすることは、今後の人生を考える上で意義のあることです。その一助となればと思い、筆をとりました。

 メディアで働く人だけではなく、「フリーランスとして働きたい」人にとっても、ひとつの経済モデルになれれば幸いです。

 コロナ禍は3年近くにわたっていて、非正規で働く人やフリーランスだけでなく、正社員であっても先が見えづらい状況です。地方局の無名記者だった私が、フリーランスになるまでの経緯や、経験したこと、大事にしていることなどをお伝えすることで、少しでもこの不安定な時代の参考になればと思っています。これから少しずつお伝えしていきます。

この記事の著者
田中圭太郎

1973年生まれ。大分県出身。早稲田大学第一文学部卒。地方局で19年間勤務後、2016年からフリーランス。雑誌・Webで大学、教育、社会問題、ビジネス、大相撲など幅広いジャンルで執筆。著書『ルポ 大学崩壊』(筑摩書房 2月9日発売)『パラリンピックと日本 知られざる60年史』(集英社)

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