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「自公の協力体制が崩壊…」岸田が危惧する創価学会との隙間風

小川寛大

自公連立誕生から22年。異変が…

 いよいよ来月に迫った参議院議員選挙。しかし、その戦いを前にいま、「自民党と公明党の間に、かつてない隙間風が吹いている」との指摘が、関係者たちから相次いでいる。焦点は両党の選挙協力、特に「相互推薦」に関するいざこざだ。自公連立誕生から22年、いま政界に何が起こっているのか――。

 問題の焦点は、今度の参院選における自公間の「相互推薦」である。その名の通り、自民党と公明党がお互いの候補に推薦を出し合う仕組みで、2016年の参院選から行われている(具体的には、公明党は自党候補が立候補しない改選数1人の「一人区」などから立候補する自民党候補に対して推薦を出す。一方、自公双方の党が候補者を立てる「複数区」では、公明党候補が自民党からの推薦を受ける)。ところが今回の選挙に向けて、この調整がこじれにこじれたのだ。

 すでに一部のメディアでは報道もされているが、この問題で特に自公の激しい衝突が起こったのが兵庫県だったとされる。参院・兵庫選挙区は、改選数3の複数区。近年では関西で勢いのある日本維新の会の候補が強く、前回2019年の参院選では維新・清水貴之氏が約57万票を集めてトップ当選している。その次に多くの票を集めて当選したのは、公明党の高橋光男氏(約50万票)。関西は昔から、公明党の母体・創価学会が「常勝関西」と呼ぶ金城湯池であり、その底力がいかんなく発揮された形だ。

「公明党を応援している場合ではない」(自民関係者)

 その次の得票数で当選したのが、自民党・加田裕之氏(約46万票)なのだが、その下で落選となった立憲民主党候補(約43万票)とはわずか3万票差。「滑り込みのようなもの」「とても喜べる勝利ではない」といった懸念の声が、自民党関係者の間から多々上がっていた事実があった。兵庫県に限らず、関西では躍進著しい維新に、従来自民が持っていた保守票が流出しているとの観測が以前からある。この3年前の参院選における、兵庫での自民候補の苦戦は、その象徴のようにも受け止められたのだ。その結果、兵庫の自民党関係者がたどり着いた結論は、ある意味では当然とも思えるものだった。

「もう参院選で(相互推薦に基づき)公明党を応援している場合ではない」

 つまり、兵庫の自民党は自党候補の選挙に全力を集中し、公明党候補への推薦は見送りたいという方針である。

 今年の参院選に向けた自公間の相互推薦調整は、本来ならば昨年末ごろまでに終わっているはずだったという。しかし、特に兵庫などで話がこじれ、春先になっても相互推薦の形は定まらない。業を煮やした創価学会・公明党サイドは、自民を露骨に揺さぶりにかかった。

創価学会・公明党の「露骨な揺さぶり」

 1月27日、創価学会は選挙に向けて「人物本位」の支持をすると発表。これ自体は学会は1994年から定めている方針で、「再確認」に過ぎないのだが、「わざわざこの時期に当てつけのように発表し、『創価学会・公明党は今後、自民党候補だからと言って自動的に応援することはない』と挑発してきた格好」(永田町関係者)との観測が、政界周辺に走った。2月に入ると公明党・山口那津男代表はメディアの取材に対し、「(相互推薦に関する)交渉は時間切れ」「自力で勝つ」などといった発言を連発。つまり今年の参院選に向けて、自公は特に協力しないまま戦うといった態度を示し始めたのだ。

 すでに広く知られているように、現在の自民党で公明票の助力をうけず選挙を戦える候補者はほとんどいない。この公明側の強硬姿勢に自民は慌て、岸田文雄総裁(首相)ら党最高幹部層の奔走などを経て自民党兵庫県連も折れたという。3月中旬までに自公間での調整は片付き、この相互推薦問題は「決着した」との報道が、各マスコミで流れた。

 しかし、「実際のところ、相互推薦問題はいまだ決着とはほど遠い状況でくすぶり続けている」(自民党国会議員)との声もある。どういうことなのか。

 キーワードは、「定数変更」と「野党の弱体化」のようだ。

自民党の「危険な冒険」

 参議院議員選挙は2018年の定数増、また「一票の格差」是正といった観点から近年、都市部の選挙区では選出議員数が増え、地方では減らされているという流れがある。かつ、2012年の第2次安倍晋三政権成立以降の与党優勢の政治状況のなか、特に旧民主党系の野党が振るわないという事実もある。ここで自民党内から上がっている声が、「選出議員数の増えた都市部の参院選選挙区を、与党勢力で一気に席巻、野党をさらに追い込んでいこう」との意見らしいのだ。実際、今回の参院選において自民党は、神奈川県選挙区で三原じゅん子氏と浅尾慶一郎氏の2人の候補を立てる。これまで自民党は同選挙区で、改選ごとに1人の候補しか原則として立てて来ておらず、まさに野党を追い込むための、賭けと言えば賭けである。こうした自民党による都市部での複数候補擁立構想は、埼玉県や愛知県でもあったと言われている。

「しかし、これに公明党があまりいい顔をしていない。公明さんは参院選に限らず、選挙では候補者の『全勝』を志向する傾向がある。自民が候補者を増やして、与党の票が分散することを『危険な冒険』視しているようだ」(自民党地方議員)

 こうした状況を背景に、いくつかの公明党の地方組織が自民党の県連に注文を付けていたようなこともあったらしい。これもまた、今回の参院選に向けた自公の相互推薦がなかなかまとまらなかった理由のひとつのようだ。

「政権とうまくやりたが、調整がうまくいかん」(学会幹部)

 一応、現状では表向き、この自公の相互推薦問題は「決着」したことにはなっている。ただ、前出の自民党国会議員の、次のような指摘は重いだろう。

「そもそも相互推薦は自公双方の党本部が取り交わすもの。それが今回、地方組織の思惑によってここまで乱れたことを思えば、すでに参院選における従来型の『自公協力体制』は崩れていると言ってもいい」

 一方で、ある創価学会幹部は次のように言う。

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小川寛大

『宗教問題』編集長。1979年、熊本県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。宗教業界紙『中外日報』記者を経て独立。2014年、宗教専門誌『宗教問題』編集委員、15年より現職。

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