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高橋洋一「植田新総裁が利上げに踏み切るタイミング」…後輩で元仕事仲間が語る”完璧人間”唯一の欠点

 わが国にとって、戦後初の経済学者出身、植田和男・日銀新総裁誕生が間近となった。世界の名だたる中銀総裁経験者に比肩されるキャリアや、所信聴取などで垣間見られた明晰さで、各方面からの期待が集まるばかりだ。みんかぶプレミアム特集「植田和男研究」第1回は、植田氏に近いキャリアを歩み、同様にマクロ経済理論に精通した経済学者・高橋洋一さんに、日銀と植田新総裁の役割について語ってもらった。

目次

エリート中のエリート、植田新総裁に欠けていること

 植田和男さんが日銀の次期総裁に選ばれました。私から見れば、ようやく日本にも国際水準の中央銀行総裁が誕生した、という感じです。植田さんは私にとって、東大理学部数学科・経済学部の先輩でもあり、旧大蔵省時代はよく大蔵省の仕事をご説明させていただいたので、こうした取材を受ける機会が多いのですが、もちろん経済学者としての経歴は申し分ない。報道されている通り、東大大学院卒業後、MIT(マサチューセッツ工科大学)大学院で、FRB(米連邦準備理事会)副議長やイスラエル中銀総裁を歴任した世界的な経済学者スタンレー・フィッシャーに学んでいます。FRBのベン・バーナンキ元議長やECB(欧州中央銀行)のマリオ・ドラギ前総裁と同じ、フィッシャー門下生なのだから、他の先進国の中銀総裁と比べても遜色はなく、これまでの日銀総裁とはキャリアが「異次元の違い」と言えるでしょう。

 私は以前から、日銀の総裁は学者から選出すべし、と言ってきましたが、これでやっと、世界の先進国並みの中銀運営を行う体制ができたのではないでしょうか。今回の人事には紆余曲折(うよきょくせつ)があったようですが、もし、巷(ちまた)の噂(うわさ)通りの人事が行われていたらどうだったでしょうか。そもそも、世界各国の中央銀行総裁に求められる資質は3つあります。まず、経済学者としての実力を示す「博士号」。そして、世界の金融当局関係者と密接なコミュニケーションを取るための「英語力」。最後はトップとして、組織を円滑に動かすための「統率力」です。

 有力視されていた候補者に圧倒的に欠けているのは、経済学者としての実績、そして英語力です。この点、植田さんは、非の打ち所がない。ただし、3番目の資質であるリーダーシップについては、いくら日銀の審議委員を経験していると言っても、日銀や財務省プロパーから比べると未知数かもしれません。ですが、この点は、副総裁候補の内田真一、氷見野良三両氏がカバーするというのが、今回の人事の意図でしょう。

日銀の本来の目標は、株価上昇ではなく、インフレ率だけでもない

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この記事の著者
髙橋洋一

1955年東京都生まれ。1978年東京大学理学部数学科・経済学部経済学科卒業。博士(政策研究)。1980年に大蔵省(現・財務省)入省。大蔵省理財局資金企画室長、プリンストン大学客員研究員、内閣府参事官(経済財政諮問会議特命室)、総務大臣補佐官、内閣参事官(総理補佐官補)等を歴任。小泉内閣・第一次安倍内閣ではブレーンとして活躍し、「霞が関埋蔵金」の公表や「ふるさと納税」「ねんきん定期便」など数々の政策提案・実現。著書は「岸田政権の新しい資本主義で無理心中させられる日本経済」(宝島社)、「財務省、偽りの代償 国家財政は破綻しない」(扶桑社BOOKS新書)、「理系志向入門」(PHP研究所)など多数。近著は『世界の「今」を読み解く! 【図解】新・地政学入門~地理の政治学』(あさ出版)がある。

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