ハーバード大卒芸人パックンが今、一番おすすめする金融商品…ドルコスト平均法の盲点とは

25年以上の投資経験を持ち、「お金の苦悩から解放された」と話すハーバード大卒芸人パックン。手痛い失敗も経験してきたパックンが、市場の原則と自身の経験を基にオススメする投資方法とS&P500について語る――。全4回中の4回目。
※本稿はパトリック・ハーラン著『無理なく貯めて賢く増やす パックン式お金の育て方』(朝日新聞出版)から抜粋・編集したものです。
誘惑を跳ね返す「積立投資」
「長期投資」と「分散投資」が投資のセオリーですが、さらに、ここに一つ「積立投資」も足しておきます。積立投資というのは「定期的に、指定した日に指定した金額が自動的に投資される」という方法のこと。たとえば「毎月5日に投資信託Aを5万円分買う」というように。
定期的に安定した給料が入って、毎回自分で購入手続きをするのが少し面倒くさい人にとっては、これが最善の方法です。たとえば、「あなたがエマージェンシー資金を貯めて、固定費を削減して、毎月1万円の余剰資金ができている」と考えてください。この余剰資金の1万円を積立投資に使います。
たまに、「まとまった投資資金ができるまで投資はしない」という人がいますが、それは大間違い!僕はエマージェンシー資金を貯めるように勧めたけれど、投資資金そのものは時間をかけて貯めるべきではありません。そんなふうに投資を先延ばしにしていたら、リターンを得る期間が短くなってしまうからね。
それに、「お金が貯まったら投資をする」なんて考えていたら、たぶんいつまでも投資を始めることはできません。結局いろいろなことに無駄遣いをしてしまうから。「残高は誘惑」ですからね。あっ、名言だ!
僕が20年以上投資を続けてこられたのは、「まず投資をする」ということを徹底してきたからです。収入の一部を投資にあて、残ったお金で生活費などをまかなう。すごくシンプル!
「収入の3割を投資して、残った5割を生活費に、2割を娯楽費に」という方法が、お金を増やすための近道です。その3割は給料から天引きで、積立投資されるようにするのがおすすめです。
ドルコスト平均法はクソ
積立投資の効果の一つに、購入時期の分散によって「購入価格を平準化できる」というものがあります。これを「ドルコスト平均法」といいます。なんだか強そうな名前です。
仮に「毎月5万円を投資信託Aに積立投資する」と設定したとしましょう。すると、投資信託Aの価格は日々変動するので、次のようなことが起きます。
- 投資信託Aが安いとき→投資信託Aを多く買う
- 投資信託Aが高いとき→投資信託Aを少なく買う
ドルコスト平均法にはこのような効果があるので、値段が高いときにたくさん買ったり、逆に値段が安いときに買い損ねたりするミスを防げる。それも自動的に!
なんだかとてもいい投資法のように聞こえますよね?そう聞こえるから、ドルコスト平均法に憧れて、まとまった金額も、わざわざ分割にして投資する人がいるのです。
たとえば、大好きなおじいちゃんが亡くなって、遺産として1000万円を遺してくれたとしましょう。悲しみながら喜びますね。その場合「ドルコスト平均法、最高!」と思って、その1000万円を分割して、毎月83万3333円を、1年間かけて投資する人がいるかもしれません。
そんな方に物申そう!まずは……、お悔やみ申し上げます!その次に、待ってください。少し勘違いしているようです!
まとまったお金の投資法としては、はっきり言って……、このドルコスト平均法はクソだと思っています!
株価の長期的な成長を考えても、複利効果を考えても、余剰資金があるなら、早く投資をしたほうがいいですよ。そのために、給料から天引きの積立投資は、本当に最高です!
でも、まとまったお金をちょこちょこ分割して投資をすると、どうなりますか?そう、投資が先延ばしになり、投資期間が短くなってしまうのです。成長できたはずの分が、なんてもったいない!
たとえば、先ほどのおじいちゃんの遺産である1000万円を一気に投資すれば、7%の年利で70万円の金利が付くところ、12回に分けて投資すると、38万円しか金利が生まれません。32万円も損している!
それを老後計算機で算出すると、50年後に1000万円以上の差額が生まれます。これはさすがに、天国のおじいちゃんも泣きますよ。
念のためにもう一回言いますが、「積立投資」は素晴らしい投資方法です。積立投資とドルコスト平均法の組み合わせはOKです。僕が否定しているのは、まとまった投資資金があるのに、あえてドルコスト平均法を狙うことです。
鉄則はインデックスファンド
投資のコツを一番簡単に実現できるのが、
インデックスファンドに投資をする。
ずっと触らない。
以上!
この投資法です。「分散して長期的に投資する」というコツを一番簡単に実現できるのがインデックスファンドです。これで、かなりの確率で十分な利益は出せると思います。
インデックスファンドは、株式市場の平均的なリターンを目指すもの。みんなも「日経平均株価」「TOPIX」「ダウ」などの言葉を聞いたことがあると思うけど、ああいった株価指数に連動するように設計されている投資信託がインデックスファンドです。
たとえば、「日経平均株価」は、日本経済新聞社が選んだ日本の上場企業225社の株価に基づき算出されています。だから、日経平均株価に連動するインデックスファンドを買えば、その225社に分散投資をしていることになります。
そして、日経平均が上がったり下がったりすると、このインデックスファンドの価格も連動して上下するというわけ。こういうふうに、投資先とその割合が自動的に決まってきて、人間の手が加わらないから、「パッシブファンド」(受動的なファンド)とも呼ばれます。
このような日本国内のインデックスファンドもあれば、もちろんアメリカ、イギリス、EU、香港などの主な株式市場のインデックスファンドもあります。だから、これらも持っておけば、国別の分散も簡単にできます。
ユーロ建て、ドル建て、ポンド建てのファンドもあるから、それを持ってみて、為替リスクに対応した、通貨別の分散をしてもいいでしょう。「とにかく分散投資を徹底的にやりたい!」という人は、全世界の株式に投資できるインデックスファンドもあるよ。
これを買えば、一つの企業、一つの国、一つの通貨が大変なことになったとしても、全世界の株式市場が同時に下がっていなければ大丈夫!「もっともっと分散を徹底したい!」という人には、債券や不動産投資信託(REIT)のインデックスファンド・パッシブファンドもあるからね。これが、僕が勧める「インデックスファンド」の正体です。
結局S&P500が一番
僕が一番お勧めするのは、「S&P500」という株価指数に連動するインデックスファンドです。僕だけではなく、多くの投資家も、S&P500を勧めています。
ちなみに、「S&P500」は、アメリカの企業500社によって構成されています。すごいのがその顔ぶれ。たとえば、次に挙げる企業は、 S&P500の構成銘柄の一部なんだけど、みんなも社名を一度は聞いたことがあるんじゃない?
- アップル
- マイクロソフト
- アマゾン・ドット・コム
- テスラ
- ジョンソン&ジョンソン
「えっ?アメリカ一国に集中投資をするのは危険じゃない?」と思った方もいるかもしれないよね。それは、すごく良い気づきです!そういう人は、全世界株式のインデックスファンドを選んでもいいと思う!
けれど、僕としては、S&P500のインデックスファンドでも問題はない、と思っています。というのも、S&P500に入っている会社の多くは、世界中でビジネスをしており、世界の経済成長の恩恵を受けているからです。
日本で暮らすみんなの生活も考えてみて。毎日iPhoneかAndroidスマホを使って、Twitterを見て、マイクロソフトのWindowsで仕事をして、アマゾンで買い物をして、ディズニーの映画を観て、ナイキの靴を履いて、長距離移動のときはボーイングのジェット機に乗っていますよね?
