地獄の倒産連鎖が始まった…上がり続ける燃料費・人件費に打つ手なく、悲鳴が聞こえる

コロナ禍で「巣ごもり需要」が増えた。オンラインショッピングが当たり前になった人も多いだろう。住宅街で宅配業者が朝から晩まで走り回る姿を見るのも日常となった。「運送業は相当景気が良いのでは?」と感じるかもしれないが、恩恵を受けているのは一部の業者にとどまる。ほとんどの中小運送業者は経営状況が悪化しており、倒産を余儀なくされる業者も多い。なぜ、需要が増えているはずの運送業界で倒産が増えているのだろうか。
倒産件数が3か月連続で前年同月比を上回る
運送業の倒産にはさまざまな理由があるが、一つの理由として慢性的な人手不足が挙げられる。東京商工リサーチによると、2019年(1-12月)の道路貨物運送業の倒産は、196件(前年比7.6%増)で、その内「人手不足」関連の倒産は31件であった。全業種の「人手不足」関連の倒産比率は約5%なのに対し、道路貨物運送業は15.8%と非常に高い割合であることがわかる。
また、2022年に入ってから、運送業の倒産件数は増えている。5月における運送業の倒産件数は34件と前年同月の1.5倍以上になった。
2022年 | 2021年 | 前年同比率 | |
1月 | 25件 | 20件 | +25.00% |
2月 | 16件 | 21件 | ▲23.38% |
3月 | 26件 | 21件 | +23.80% |
4月 | 22件 | 16件 | +37.50% |
5月 | 34件 | 21件 | +61.90% |
※東京商工リサーチの「産業別倒産状況」より筆者作成。
国土交通省によると、令和2年度の宅配便取扱個数は48億3647万個で、前年度と比較して5億1298万個・約11.9%増加している。コロナ禍の巣ごもり需要により、EC市場が大幅に伸びたことによるが、その恩恵は大手運送業者だけが享受しているのだ。中小運送業はというと、取引先(荷主)がコロナの打撃を受けた場合には取り扱いが減っている。
さらに追い打ちをかけるかのように、燃料費の高騰。2022年1月にガソリン価格は170円を付け、足元でも160円台と高値で推移しているが、トラックの燃料である軽油もこの1年で20円程値上がりしている。中小運送業は、人手不足・需要減・燃料価格の向上の三重苦で、非常に厳しい状況にさらされているのだ。