急速インフレで「年収700万子供2人世帯」がローン破綻する時代になってしまった

世帯年収700万円の誤算。余裕がある4000万円のマンション購入でなぜ老後破産してしまうのか。
マンション価格の上昇が止まらない。株式会社不動産経済研究所の調査によると、2021年度の首都圏のマンション価格は6360万円で2015年度の5617万円と比べると大幅に値を上げている。低金利政策により変動金利であれば0.5%以内で住宅ローンの借り入れができることや、住宅ローン控除の影響などが要因といえるだろう。
しかし、住宅の購入は人生最大の買い物だ。選択を間違えれば、人生設計が狂ってしまうことすらある。住宅ローンを組んだことにより、老後破綻の危機にさらされているAさん。住宅ローンを組んだ当時の世帯年収は700万円だった。十分返済できると思っていたのに、家計は火の車とのこと。一体Aさんに何が起こったのか。
余裕を持って借り入れしたはずが……年収700万円世帯の大きな誤算
住宅金融支援機構が公表している2020年度「フラット35利用者調査」によると、2020年における首都圏でのマンション購入者の年収倍率は約7.5倍だった。年収700万円世帯ならば、5250万円の水準だ。
Aさんが購入したマンション価格は4000万円。当時の年収はAさんが400万円、妻が300万円だった。共働きを続ければ十分返済できると思い、頭金なしのフルローンで購入を決断。本当は東京に購入したかったが、値段や条件の兼ね合いで勤務地までのアクセスが良い千葉県に購入した。
マンション購入後には男の子が2人生まれた。子供2人を保育園に入れて、何とか妻も正社員のまま収入を落とさず働き続けることができた。しかし、上の子が小学校1年生になるタイミングで、いわゆる「小1の壁」にぶつかることになる。子供が保育園の時は、保育園が夏休みや冬休みなど関係なく最長19時ごろまで預かってくれる。しかし、小学1年生になるとそういうわけにもいかない。学童を利用したりすればフルタイムで働くこともできるが、子供も意思表示がはっきりしてきて「行きたくない」と拒否するのだ。小学1・2年生は学校の帰りも早く、留守番させるわけにもいかない。
それまで必死に働いてきたAさんの妻も、「子供のために仕事をセーブしたい」と考えるようになった。収入が落ちるのは不安だったものの、夫婦で話し合いの末、Aさんの妻は正社員から働き方の自由度が高いフリーランスになった。仕事は今まで働いていた会社から業務委託で安定的に受けられるが、労働時間が大幅に減ることもあり、収入は300万円から150万円と半減してしまった。一方、Aさんの年収もほとんど上がらないままである。