竹中平蔵「低所得者はますます生活が苦しくなる」…インフレ・円安・リストラ・治安悪化で日本大混乱(特集:電力ひっ迫「国民生活編」)
安倍晋三元総理が銃撃された。「なぜこんなことが日本で起きるのか」。この事件は日本の電気料金高騰と無縁のようで、実は大きなつながりがある。みんかぶプレミアム特集「電力ひっ迫」(全9回)の第3回は、国民生活がどうなるかを経済学者の竹中平蔵さんが語る。「ますます生活が苦しくなり、治安悪化も懸念される」。一体日本に何が――。
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電気代が上がり、日用品が値上げし、購買力が落ち、消費が落ち込む
今年の夏は近年で最も厳しい電力需給の逼迫が見込まれ、7月、政府が7年ぶりに全国規模で節電を要請しました。電力逼迫によって、国民の生活にどのような影響が出てくるのでしょうか。
経済産業省によると、今夏は安定供給に最低限必要な予備率3%をかろうじて確保できる見通しですが、冬季はさらに厳しい状況になると予測されています。10年に一度の厳寒を想定した場合、東北・東京の2エリアでは1月の予備率が1.5%、中部・北陸・関西・中国・四国・九州の6エリアでは同1.9%と、いずれも最低限必要なラインである3%を切る見通しです。
電力逼迫の原因は、政府が長期の需給見通しについて、まじめに取り組んでいないことにあります。なぜエネルギーの議論が進まないのか。それは、エネルギーの議論と原発の議論は切っても切れないからです。安倍内閣以降、原発によるエネルギー政策を進めてきた閣僚が、内閣の重要なところを支えてきました。政権の長期化によって、「臭い物に蓋をする」空気が蔓延し、議論を先送りにしてきました。そのツケが今きているということなのです。
昨年9月から、東京電力EPや関西電力など各社の電気料金が値上がりし続けていますが、電力逼迫でこの流れは加速するでしょう。電気料金の値上がりで特に影響を受けるのは、家計における光熱費の割合が高い低所得者です。以前石油ショックで電力代金が上がった時、日本からアルミ精錬産業がなくなりました。電気代に払うお金が増えるのと同時に、日用品の値段も上がる。購買力は低下し、消費が落ち込みます。